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#VR
母に伝えたかったこと
わたしの母は2年前に他界している。認知症になり、体が弱って、岩手の厳しい冬を越せずに死んだ。父が病の進行を隠し通し、施設に入所させた後はプロの手厚いサポートのもとで暮らすようになったため、わたしは母の壊れていった様子をよく知らない。ただ、父は文字と映像ですべての記録を残していたから、あとからどのようであったのかを知ることはできた。パンツを腕に通して着ようとしている画像があった。
「お前には夫婦2
VRで、わたしはふたたび空を飛ぶ
幼いころ、雪の日に空を見上げるのが好きだった。しんしんと降る雪から少しだけ目をそらし、空の中ごろに焦点を飛ばして固定する。すると雪が立ち止まり、わたしが流れ出す。何かに引き上げられるように、ぐんぐんと空に舞い上がっていく感覚が得られた。雪さえ降っていればいつでもできた。風邪をひくから家に入りなさいと叱られながらも、雪の日は外に飛び出して何度も空を飛んだ。
大きくなるとわたしは空を飛べなくなった。