【ルッキズム短編】彼氏カスタマイズ

 彼の鼻は、彼女にとってどうにも納得がいかないものだった。毎日彼女の目の前に広がる、まるで自慢げなその曲線は彼女の違和感を刺激した。それは、並外れた大きさでも、非対称でもない。ただ、彼女の理想とは程遠い存在だった。それが彼の魅力なのかもしれないと言う人もいたが、彼女にはどうしても受け入れられなかった。

 ある日、「彼氏カスタマイズ」というアプリを見つけた。彼女は彼のプロフィールを入力し、鼻の形状を選んだ。修正が始まると、不思議と彼の顔が彼女の理想通りに変わり始めた。彼女の心は興奮で満ちた。ついに彼女は彼の欠点を直せるのだ。

 ああ、こんなにも美しい彼がいたなんて。彼女の心は幸せで満たされ、欲望はそこで止まらなかった。気に入らない性格も修正した。彼の短気さは彼女を疲れさせ、怠惰さは常に彼女をイライラさせた。それが彼だから我慢する、と彼女自身に言い聞かせてきたが、心のどこかではいつも不満が渦巻いていた。

 彼女が求めていた理想の彼が出来上がり、彼女は満足感に包まれた。
 しかし、何日も経たないうちに、彼から突然の別れの言葉が飛び込んできた。彼女は驚きと戸惑いで彼を見つめた。彼は静かに言った。

「俺、"彼女カスタマイズ"を使って、お前を少し変えてみたんだ。」

 彼女は言葉を失った。

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