ばばあもどきの日常と非日常 その17「仕事のこと②」

こんにちは。
“ばばあもどき”のルル山ルル子(ルル)です。
女の容れ物(身体)に男の魂が宿っています。
「トランスジェンダー」とか「FTM」とかの呼称がどうもしっくり来ず、
普段は「見た目は女 中身はおっさん」と自己紹介をしています。

憧れだった印刷関係の仕事(正しくは製版業)

さて、前回の続きです。
アパレル関係の仕事をしていたものの、ファッションには全く興味がなく、
また、金額的に普通の庶民が絶対に買わないような商品を扱っていることに疑問を持ちながら働くことは、
当時の私にとって苦痛でしかなく、なんの面白味も感じられませんでした。
ある日、会社がリストラをおこない(しかしその甲斐なく間もなく潰れた)、それを機に私は印刷関係の会社で働くことにしました。

色々な年代の男性ばかりが6人いる職場で、20代だった私は初めは「女の子扱い」をされていましたが、
打ち解けるにつれて例によってちょいちょい“正体”がバレ、
「野郎7人の和気藹々とした職場」みたいな雰囲気の中で楽しく働いていました。

新人の私が任されていた作業は、主に2つありました。
ひとつは入稿されて来た画像データを、スキャナオペレータさんたちがスキャンする前に大きさを測って指示を書き込んでスキャナドラムに貼り込んでいく作業、
そしてもうひとつは「画像修正」です。
当時はアナログからフルデジタルへの過渡期でした。
アナログの仕事はとても高度な職人技が要求される仕事で「この道◯年」みたいな人たちがやっていた一方、
Macを使っての画像修正は、入った当初から私も教えられました。
これがとてつもなく面白いのです。
今はスマホのカメラにも当たり前のように色調補正の機能が付いているし、背景の人物を消したりするのも簡単にできるようになりましたが、
携帯電話がテレビのリモコンくらいの大きさだった当時、コンピュータによる画像修正はまさに「魔法」で、私は魔法使いにでもなったかのような気分を味わいました。

魔法使いルル

指示書に従って、「灰色の空を青く」「濁った黄色のお茶を綺麗なグリーンに」「空に掛かる電線を消し」「グラビアアイドルの鼻毛を消し」「曲がったネクタイを真っ直ぐにし」「黄色く濁った白目や歯は不自然でない程度に白くし」「二重顎を取り」「和◯ア◯子さんのシワを消し」「反◯隆◯さんの眉毛を整え」「AV女優さんの肌をいい感じの肌色に調整し」「局部にはモザイクをかけ」る毎日でした。
そうなんです、得意先にアダルトビデオのジャケットを手掛けている会社があったせいで、定期的にそうした仕事が回されて来るのです。先輩たちは「初めは興奮したけど、慣れると何とも思わなくなったねー」と言っていましたが、本当にそんなもんでした。
ただ、中には午前中に請け負うと本当に食欲が無くなるようなジャンルもありました(トイレの盗撮物や犯罪系の物など)。
時々社長が来ては「ルル山さんは女の子なのにこんな仕事させてごめんね。うちの会社はもうすぐ一流になって仕事を選べるようになるから、それまでは悪いけど我慢して割り切ってやってね」と言っていました。

私は、中身は男だとはいえ身体は女なので、AV(のジャケット)を見ると何だか複雑な気持ちになります。
綺麗な女の人が出ていて「お姉さんが教えて あ・げ・る♡」みたいな作品や、綺麗な女の人同士の絡みがテーマの作品には興味があるけれど、女の人が屈強な男(たまに複数人)に蹂躙されているような作品は怖いし嫌いでした。
それはさておき、私の「モザイクのかけ方」が絶妙に芸術的でイイ! と好評を博し、私自身もそこは拘っていたところだったので、AV関係でもモザイクかけの仕事だけは好きでした。
他の人がやると「局部にモザイクがかかっています!」という感じなのに対し、私のは「ん?……モザイク……かかってる? あれ? かかってないかな?」と思わず薄目をしてみたくなるような(けれどしっかり隠れてはいる)モザイクなのです。
因みに全くどうでもいい話ですが、
子供の頃の私は、「モザイク」が外来語だとは知らず、「毛細工」なのだと思っていました。

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