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遺伝子組み換えとゲノム編集って何なの?大丈夫なの?

遺伝子組み換えの作物が作られるようになってもう30年。
しかし、いまだに反発の声は大きい。

そして、新しく登場した「ゲノム編集」の食べ物。

この界隈では常に怪しい情報が飛び交い、大きな沼が作られています。
そして、ミスターXによって沼に引き込まれてしまうキウイくん。
「遺伝子組み換えの食べ物で病気になっちゃうっ!」

そもそも、遺伝子組み換えとは、ゲノム編集とは何なのか。
何のためにそうした技術が使われているのか。
食の安全はどう担保されているのか。

お野菜系フクロウのルルさんが解説します。

登場人(?)物

・キウイくん
まだ若いキウイ。純粋であるがゆえにどんな話でも信じてしまう。
助けて、ルルさんさん!

・ルルさん
野菜づくりの専門家。

・ミスターX
いつも怪しい情報をつぶやいている。
青い鳥さんに下剋上をぶちかまして看板を奪った。



1. 遺伝子組み換えってなんだ?


キウイくん:たいへんだ! ルルさん、たいへんだよぉ! 遺伝子組み換えの食べ物でボクたちの体はおかしくなっちゃんうんだよ。こわいよ~

ルルさん:キウイくん、どうしたの。とりあえず、ちょっと落ち着いてよ。

キウイくん:そんなこと言ってらんないよ! ほら、食べちゃいけない食べ物のリストだよ!
ドサぁ!
(A4用紙100枚)

ルルさん:うわぁ、これは?

キウイくん:ミスターXがみんなから情報を集めて、食べちゃいけない遺伝子組み換えの食べ物をまとめてるんだよ。こんなにいっぱい!

ルルさん:う~ん。ついにキウイくんもそこへ。

キウイくん:えっ、どういうこと?

ルルさん:いいかい、キウイくん。その界隈は恐ろしい場所なんだ。不確実な怖い情報であふれていて、キウイくんのような純粋な鳥はかんたんに飲み込まれてしまう。
まさに、沼なんだよ。ちゃんとした知識を持たないで入ると抜け出せなくなってしまうんだ。いまのキウイくんみたいに。

キウイくん:そんなこといっても、もう、怖くて怖くて~

ルルさん:泣かないで。ちゃんと勉強すれば大丈夫だからね。

キウイくん:うん。

ルルさん:それじゃあ、まずは遺伝子組み換えって、何のことだかキウイくんはわかるかな。

キウイくん:ええと、なんやかんやで生き物が変になっちゃうこと?

ルルさん:う~ん。そのなんやかんやの部分だけど、ミスターXは教えてくれなかったみたいだね。

キウイくん:聞いたことないよ。遺伝子組み換えはダメだっていう話ばっかり。

ルルさん:そしたら、まずは遺伝子だ。遺伝子は知ってる?

キウイくん:DNAだよ。ドコサヘキサエン酸!

ルルさん:それはDHA。
DNAは「デオキシリボ核酸」だね。Aは どちらもAcid だからあってるけど。
遺伝子とDNAはちょっと違うんだよ。

キウイくん:何が?

ルルさん:ここをちゃんとわかっていないと進まないからね。
まず、DNAは「デオキシリボ核酸」で、デオキシリボースという「糖」と「リン酸(P)」が鎖のように長~くつながっている物資だよ。
そして、「リン酸(P)」には「塩基」という物質がくっついていて、「塩基」を介してもう一本の鎖とくっついているよ。
私たちの体を作る細胞の中にあるよ。

で、「塩基」という物質は4種類あって、その並ぶ順番がアミノ酸の種類を決めているんだ。

そして、アミノ酸がたくさんつながってたんぱく質になる。私たちの体を作る部品の多くはたんぱく質だし、体を維持するために使われる酵素もたんぱく質だよ。

したがってDNAはどんなたんぱく質を作るか、つまり体の設計図ということだね。
ここまではOK?

キウイくん:そういえば、そんなことを習った気がするよ。
それで、そのDNAと遺伝子は何が違うの?

ルルさん:実はDNAには「使われない部分」が多いんだ。
生物が誕生してから数十億年。DNAはずっと生物の体の設計図として使われてきたんだけど、その間に進化の過程で使われない部分がたくさんできたんだよ。

そして、たんぱく質という体の部品がつくられるときに参照されるDNAという設計図の一部分を「遺伝子」と呼ぶよ。

キウイくん:ということは、ボクたちの体の設計図がDNAで、その設計図のうち体の部品や体の働きを維持するものを作る部分が遺伝子だね。

ルルさん:その通り。キウイくんはやればできる子だね。ミルワームあげる。

キウイくん:やったあ!

ルルさん:さて、「遺伝子組み換え」というのは、この遺伝子の部分を別の生物のものと「組み替える」ことだ。「入れ替える」と言う方がわかりやすいかもね。

キウイくん:遺伝子を入れ替えるということは、体の部品が違うものになるということ?

ルルさん:そういうこと。

キウイくん:えっ、てことはボクも鷹になれるの!?

ルルさん:鷹になりたかったのか。
まあ、ぜんぶの遺伝子を入れ替えたら鷹になるかもしれないけど、技術的に無理だろうね。もしかしたら、ちょっと色が変わるとか。

キウイくん:そっかあ、残念。空を飛べると思ったのに。

ルルさん:つまり、遺伝子組み換えでは他の生物の特徴を部分的に導入できるということだし、それ以上のことはできない。
キウイくんが急に魔法を使えるようになるわけじゃないよ。元になるそんな生物はいないからね。

キウイくん:なるほどねぇ。

ルルさん:そう考えると、ちょっと怖さもなくなるかな。

キウイくん:う~ん。でも、別の生物の遺伝子と入れ替えるなんて、やっぱりちょっと変だよ。そもそもどうやるの?

2. 遺伝子の組み換え方


キウイくん:遺伝子組み換えで別の生物の遺伝子と入れ替えるなんて、やっぱりちょっと変だよ。そもそもなんでそんなことできるの?

ルルさん:それじゃあ遺伝子組み換えのやりかたをみてみようか。
ただ、ここからは植物に限定するよ。私はお野菜系フクロウだし、動物や微生物にまで広げるとたいへんだからね。
お野菜系だけど、せっかくだから青いバラの話をしよう。

キウイくん:なんでバラ?

ルルさん:バラというのはとくにヨーロッパで長く品種改良が繰り返されて、いろいろな色の花が作られるようになったんだけど、青い色のバラだけはできなかったんだ。
つまり、バラは青い色を作る遺伝子をそもそも持っていない、ということだね。

ところが、青い色の花はほかにいくらでもあるよね。
ということは?

キウイくん:あっ、遺伝子組み換えだ! 青い花の遺伝子をバラに入れればいいんだよ。

ルルさん:正解! 
青いバラを作るために使ったのは、青いパンジーの遺伝子だよ。
ちなみに、植物の色は「色素」という物質によるんだ。カロテノイドとかポリフェノールとか聞いたことあるよね。それが色素だよ。

色素はたんぱく質じゃないけど、色素を作り出すために使われる酵素の種類がDNAによって決められてるよ。

キウイくん:なんか健康的な響き。

ルルさん:それで、まずはパンジーの青い色素を作り出す遺伝子をアグロバクテリウムという細菌の中に入れる。

キウイくん:アグロバクテリウム? あんまり美味しそうな名前じゃないね。

ルルさん:鳥の餌にはならないと思うけど。
アグロバクテリウムは土の中にいる細菌で、植物の病気の原因になるんだ。
こいつは植物の細胞にくっつくと、自身のDNAの一部を植物のDNAの中に送り込むっていう能力があるよ。

キウイくん:なんかすごい!

ルルさん:ということは、アグロバクテリウムが植物に送り込むDNAに、パンジーから取り出した青い色を作るDNAを入れておいて、バラに感染させると?

キウイくん:パンジーのDNAがバラの中に! これで青いバラになるんだね。

ルルさん:そういうこと、実際はすごく複雑だけど、植物の遺伝子組み換えでよく使われる方法だよ。

キウイくん:はえ~。すごい。でも、感染された植物は病気にならないの?

ルルさん:もちろん、アグロバクテリウムの中の病気の原因になる機能を作り出すDNAは取り除くよ。

キウイくん:よくできてるね。でも、なんでそんなことするの? 青いバラはきれいだけど。
変なものが遺伝子の中に入ってるわけじゃないことはわかったけど、食べるものはちょっと怖いなあ。

3. なんで遺伝子組み換えにするの?

キウイくん:遺伝子組み換えは生物の能力を使っているのはわかったけど、そもそも必要あるの?

ルルさん:じゃあその話をするね。
なんで農業という産業があるかわかる?

キウイくん:かんたんだよ。食べ物を作るためだよ。ボクたち食べ物がないと死んじゃうから。

ルルさん:そうだね。そしたら、同じ広さの畑からたくさんの収穫があった方が良いというのもわかるね。
農家は収入が増えるし、消費者は安く買える。食べ物がなくて困ってしまうことも減るよ。
キウイくんも同じ値段でたくさんの餌が食べられたほうが嬉しいだろう。

キウイくん:うれしい!

ルルさん:ところが、農業には病気と害虫と雑草、そして暑さや寒さのような環境という厄介な問題がある。
どれも収穫する量が減ってしまうよ。

キウイくん:むむむ。虫ならボクが食べちゃうもんね。

ルルさん:実際にそういう農法もあるね。だけど、キウイが食べない虫も多い。
だから、人は「交配による品種改良」を繰り返してきた。
できた作物の中から病気につよい株を選んで種をつくって、新しく育てて、その中からまた病気に強い株を選ぶ。という具合にね。

キウイくん:そうそう。それ。品種改良。
遺伝子組み換えなんて使わなくてもできるんだよ。ミスターXがそう言ってた。

ルルさん:そう。ただし、青いバラのようにそもそもその作物が持っていない特徴を持たせることは交配による品種改良ではできない。
それを可能にしたのが遺伝子組み換えだよ。
遺伝子組み換えを使えば、違う植物からだけじゃなく、動物や菌やウイルスからだってその特徴を取り込める。

キウイくん:ええっ! やっぱり怖いよ。おかしいよ。

ルルさん:これだけ聞くと不安かもしれないね。
ちょっと具体例を見てみよう。

キウイくん:変なのはやめてよぉ。

ルルさん:トウモロコシの害虫にアワノメイガという芋虫がいる。
虫が苦手だったら検索しないようにね。

キウイくん:虫は大好き。検索っと。おいしそう!

ルルさん:鳥にとってはごちそうだね。けれど、トウモロコシの生産にとっては大問題だ。
で、「バチルス チューリンゲンシス(《Bacillus thuringiensis》」という菌がいる。
この菌の持っているたんぱく質が、特定の虫の体内で毒素として働いて、その虫は死んでしまう。

キウイくん:えっぐい!

ルルさん:で、このたんぱく質をつくるDNAを遺伝子組み換えでトウモロコシの中に入れたんだ。
すると、このトウモロコシを食べたアワノメイガなんかの害虫の体内にそのたんぱく質が入って、毒素として作用して、そうした虫は死んでしまうというわけだ。

キウイくん:ヤバいよ、ヤバいよ! そんなトウモロコシなんて危ないよ。毒だよ!
ミスターXも遺伝子組み換えは毒だって言ってたよ。これのことでしょ!

ルルさん:ちょっと落ち着いて。アワノメイガあげるから。

キウイくん:これ食べても大丈夫? 毒じゃない?

ルルさん:アワノメイガは毒じゃないよ。
さて、虫と鳥や人間などの動物では消化に関してのメカニズムがぜんぜん違う。なので、私たちがそのトウモロコシや菌を食べても大丈夫だよ。そのたんぱく質は分解されて吸収されるかウンコになるだけだから。
実際に私たちは「バチルス チューリンゲンシス」菌をよく口にしているんだよ。

キウイくん:えっ、そうなの?

ルルさん:「バチルス チューリンゲンシス」菌は、土の中とか植物の葉っぱなんかにいるありふれた菌なんだ。
地面に落ちている桜の花びらを拾った手で桜餅を食べたら、その菌を口に入れることになるかもね。

キウイくん:それなら大丈夫な気がする。
でも、ミスターXが言ってた、遺伝子組み換えの作物は毒だから食べたら危ないっていうのは?

ルルさん:ミスターXは深くまでは話さないからね。それか知らないのか。
こうしてその正体を知れば少しは安心できるかな。

キウイくん:うーん、まあ。

ルルさん:この例では害虫の被害を減らして収穫量を増やせるし、農薬を使う機会も減らせるよ。

キウイくん:そう言われれば、良い点なのかもしれないけど。
でも、もとになる生き物が大丈夫だからって、遺伝子組み換えの作物になったらどうなるかわからないでしょ。

4. 安全性の評価

キウイくん:もとになる生き物が大丈夫だからって、遺伝子組み換えの作物になったらどうなるかわからないでしょ。
急に毒になるかもしれないじゃない。

ルルさん:キウイくんは鋭いね。こうして疑問を持って追求することは大切だよ。

キウイくん:どやぁ!

ルルさん:そう。そういうわけで、各国は安全性を確認するように決まりを作ったんだ。
食べても大丈夫なものか、ってね。
日本では「食品衛生法」、「食品安全基本法」、「飼料衛生法」でしっかりと管理されているよ。
こうした法律にしたがって審査を受けてパスした作物じゃないかぎり、輸入することも売ることも栽培もできないんだよ。
詳しくはリンクを参考にしてね。

安全性の審査の流れ(リンク)
評価基準(リンク)

キウイくん:すぴ~ はっ、寝てた!
でもでも、ミスターXはそんなこと言ってなかったよ。危ないから食べたらダメだって。

ルルさん:だから沼なんだよ。
ところで、「交配による品種改良」にはこうした安全性の審査が義務付けられていないんだよ。

キウイくん:えと、どういうこと?

ルルさん:「交配による品種改良」は遺伝子の変異を利用しているから、例えば発がん性のあるたんぱく質や毒性のあるたんぱく質ができてしまってもおかしくはない。
けれど、国による安全性の審査は義務付けられていないから、新しい品種としてそのまま流通してしまうこともある。
もちろん、種メーカーは独自で検証してるよ。

キウイくん:でも、それって種屋さんが自分で「大丈夫です」って言ってるだけだよね。

ルルさん:そう。もちろん種メーカーも信頼が崩れちゃうから危ないものを流通させたりはしないよ。
というわけだから、健康とかへの安全性という意味では、法律でしっかりと縛られている遺伝子組み換えの作物の方が高いともいえるね。
すくなくとも、「危険」ということにはならないよ。

キウイくん:でも、いくら審査をしたからって絶対に大丈夫ってことにはならないんじゃ?

ルルさん:そのとおり!

キウイくん:あれ、認めた? てっきり大丈夫って言うと思ったのに。

ルルさん:この世にはね、「絶対に安全なもの」は存在しないんだよ。
そもそも、天然の生き物が作る毒だって危ないものもあるし、それを言ったら「交配による品種改良」だって同じことだよ。
だいぶ遠い例えだけど、車だって人を殺してしまう可能性があるのに、みんな運転しているよね。

キウイくん:あっ、確かに。

ルルさん:だからこそ、しっかりと確認をしてリスクをできるだけ小さくするように多くの人が努力しているわけだ。
その結果として、食べ物だけじゃなくて薬にしても車にしてもスマホにしても、安全基準というものがあるわけだね。

そうしたリスクとそのリスクを小さくする取り組みをちゃんと理解して、どうすべきかを自分で考えることが大切だね。
ミスターXの言うことをただ単に信じるだけじゃなくて。

キウイくん:そっかあ。
あ、でも、遺伝子組み換えって新しい技術なんでしょ。時間が経ったら変な影響が出るかも。

ルルさん:それもあり得ないとは言えないね。
ただ、さっきも言ったように「未来永劫に渡って絶対に安全なもの」なんて世の中にないんだよ

例えば、キウイくんがXを見るために使ってるスマホだって、時間がたったら悪い影響があるかもしれないよね。ないと言い切れる?

キウイくん:うん。まあ、確かに言いきれないけど。

ルルさん:だから、さっきも言ったように安全基準があるわけだね。
そうして世の中のあらゆるものは今の時点とこれから予想されるリスクに対して安全基準が設定されているわけだけど、未来のことはわからない。

これは、遺伝子組み換えの食品であっても、「交配による品種改良」で作られた作物であっても、スマホでも同じなんだよ。

なので、そうしたものに頼りながら「遺伝子組み換えは将来の影響がわからないから危険」なんて言うのがおかしいのはわかるね。
それを言うなら、「世の中の者すべてが危険」ということになってしまう。

キウイくん:でも、スマホはもう長いこと使ってるから大丈夫だって気がするけど、遺伝子組み換えはまだ始まったばかりの新しい技術でしょ。
やっぱり怖いよ。

ルルさん:それは実際との認識がずれているんだよ。遺伝子組み換えはもう「新しい技術」じゃないんだよ。

キウイくん:へっ?

ルルさん:世界初の遺伝子組み換え食品であるトマトの「フレーバーセイバー(Flavr Savr)」が承認されたのが1994年。もう30年も前だ。
遺伝子組み換えの研究が始まったのはもっと前。ということは昭和の時代の技術なんだよ。

キウイくん:えっ!そんなに前から?
それならもう大丈夫なのかな。

ルルさん:それにね。「何年たったら」というのは安全性の指標にはならないんだよ。
50年たったら? 100年たったら? それとも1000年後にのちの世代に? きりがないからね。

キウイくん:そう言われると、確かに。

ルルさん:新しい技術というものは一般に普及するころには研究の現場では「今さら感」のある当たり前の技術になっているし、危ないものだったらそもそも一般には出てこないからね。

キウイくん:ふーむ。
あっ、でも、ミスターXは「ヨーロッパでは遺伝子組み換え作熱は禁止してる」って言ってたよ。やっぱり危ないからじゃない?

ルルさん:それは間違いだね。
ヨーロッパでも国によって対応は違うよ。スペインやポルトガルは遺伝子組み換え作物の栽培も認められているし、EUが輸入を認めている遺伝子組み換え作物もあるよ。

キウイくん:そうなんだ。ミスターXさんの言ってることはぜんぜん違うね。

ルルさん:そうだね。さっきも言ったように、しっかりと勉強して自分の納得する選択ができたら良いね。
もちろん、それでも不安だから食べないというのも選択の一つだ。

キウイくん:そっかあ。ボクももっと勉強しないと。
でも、なんでそんな複雑な決まりまで作って遺伝子組み換えの作物をつくろうとするの?
前にも少し説明があったけど、そこまでしなくても。よく効く農薬とかを作るんじゃだめなの?

5. 遺伝子組み換えのメリット

キウイくん:でも、なんでそんな複雑な決まりまで作って遺伝子組み換えの作物をつくろうとするの?

ルルさん:世界は問題であふれている。守ろう世界。次世代につなぐ豊かな生活。みんなが一丸となって取り組む SDGs!

キウイくん:うわっ、胡散臭さが全開にっ!

ルルさん:冗談はこのくらいにして、人口の増加にともなって食料の確保は大きい問題になるわけだ。

キウイくん:きわどい冗談だったなぁ。
食べ物が足りなくなるのはよく言われてるね。

ルルさん:というわけで、作物の品種改良とか、機械の開発とか、新しい農法の開発とか、収穫量の増加を目指していろいろな研究がされているわけだね。
遺伝子組み換え作物もその一つで、前にも言ったように採れる量を増やしたり病気や害虫に強くして収穫量を増やす品種が多い。

キウイくん:うん。それはわかった。

ルルさん:でも、それだけじゃないんだ。
世界中には畑にできない土地がたくさんあるんだよ。どんなところかわかる?

キウイくん:えと、町は無理だし、あとは砂漠とか?

ルルさん:正解。
他にも、土の酸やアルカリが強すぎたり、塩分を含んでいたり、特定の養分が多すぎたり少なすぎたり、なんていう場所のことで、世界中にこういう場所がたくさんある。
そうした場所で育つ植物はほとんどないので、「交配による品種改良」で作り出すのは難しいんだ。
青いバラと同じだね。もともと持っていない性質は交配による品種改良だと対応できない。

キウイくん:それで遺伝子組み換え?

ルルさん:そういうこと。そうした環境に強い植物とか微生物の遺伝子を利用すれば、そうした環境で育つ作物が作れるかもしれない。
実際にそんな研究がたくさんおこなわれているよ。

キウイくん:なるほど。今まで作物が作れなかったところで作れるようになるのは良いね。

ルルさん:そうそう。
それから、食べ物の増産だけじゃなくて、医療や健康に利用できる遺伝子組み換え作物の研究もたくさんされている。
血圧を下げる物質を含んでいる作物とか、糖尿病に大切なインスリンの分泌を促進するとか、花粉症を抑えるとかね。
薬のもとになる成分を作りだす生物というのもあるよ。

キウイくん:いろいろあるんだねぇ。花粉症が軽くな食べ物は良いなぁ。

ルルさん:とくに治療が困難な難病を抱えている人にとっては、遺伝子組み換えの技術が大きな希望になるかもしれない。
こうしたメリットも知っておくことは大切だね。

キウイくん:ミスターXは、とにかく危険しか言わなかったなぁ。
遺伝子組み換えはちゃんと良いこともあるんだね。

ルルさん:そうした大きなメリットがあるからこそ、盛んに研究がおこなわれているわけだね。
もちろん、安全性の確保は最優先だよ。花粉症は治ったけど他の病気になりました、なんて元も子もないからね。

キウイくん:遺伝子組み換えって怖いものだと思ってたけど、役に立つこともあるんだね。

ルルさん:そうだね。
ただ、ここからはデメリットというか懸念される点の話だよ。

6. 環境への影響

ルルさん:もうひとつ、注意しなくてはいけないことがあるから話しておくね。

キウイくん:どんとこい。もう怖くないから。

ルルさん:環境のことだよ。

キウイくん:環境? SDGsだぁっ! 伏線回収っ!

ルルさん:SDGsはどうでもいいよ。もう終わってるし。

キウイくん:さっきと言ってることが違う…

ルルさん:さてさて、植物は花粉がめしべにくっついて種ができるんだけど、ということは遺伝子組み換えで作られた作物の花粉が、畑の近くの植物にくっついてしまうことがある。

キウイくん:うん。ありそう。

ルルさん:とくに、イネとかトウモロコシとか、風にのせて花粉を飛ばす作物は遠くまで花粉が飛ばされるから注意が必要だよ。
風で飛ぶスギ花粉とか見たことあるよね。

キウイくん:ああぁぁ~、鼻が、目がぁ! はっクションっ!

ルルさん: 花粉症が抑えられるお米、食べる? 遺伝子組み換えだけど。

キウイくん:食べりゅ~ぅ!

ルルさん:実はヒトへの影響よりこの環境への影響の方が懸念が大きいんだ。
そうして、遺伝子組み換えの作物から出た花粉と近くの植物が交雑した場合に、遺伝子組み換えで得た特徴が次の世代の種に引き継がれてしまうかもしれない。

キウイくん:えっと、ミスターXさんはそういうこと言ってないけど。

ルルさん:発がん性が~とかで煽った方がバズるからじゃない?
それはともかく、例えば、除草剤は効かない、病気にもならない、虫にも食べられない、わんさか増える、なんていうスーパー雑草が生み出されてしまうかもしれない。

キウイくん:なにそれ、強そう!

ルルさん:ホントにそんなことが起きるかもしれない。なので、遺伝子組み換え作物の審査にはこうした環境への影響も含まれているよ。
環境に悪影響を与えないかどうか、という観点だね。
雑草だけじゃなくて、在来の生物に影響を与えないことが大切だね。

キウイくん:はえ~。考えなくっちゃいけないことが多いからたいへんだ。

ルルさん:便利なものや有用なものはそれだけいろいろな方面への影響が大きいからね。
これに関しては「カルタヘナ法」という法律があるので、気になったら見てみてね。

カルタヘナ法(リンク)

とくに新しい遺伝子組み換え作物をつくる研究なんかは「隔離圃場」といって、その作物や花粉が外に出ないようにした特別な畑じゃないとできないよ。

キウイくん:なるほど。ちゃんとしてるんだね。

ルルさん:もちろん。ただし、人間がやることだから、これも完全とは言えない。
だから、遺伝子組み換え作物やその種が流失していないか、在来の生物にその遺伝子が受け継がれていないか、継続して監視することは大切だね。

キウイくん:そうだね。ボクたちがしっかりしないと。ありがとうルルさん。

7. ゲノム編集とは?

キウイくん:遺伝子組み換えは考えなければならないこともあるけど、ボクたちの生活に役立つこともあるんだ。
農業のこともちゃんと考えないと。
そうだ、このことをミスターXにも教えてあげないと。

ミスターX:キウイくん。遺伝子組み換えよりもっと怖いことがあるんだよ。
ゲノム編集っていうんだ。キウイくんちゃんの体は改造されちゃうんだよ。

キウイくん:えっ、ええ~~~!

ちゃんと知れば遺伝子組み換え作物もそんなに怖いものじゃないと知ることができたキウイくん。
食べたからって病気になるわけじゃないし、変な生き物というわけでもないので、一安心。

けれど、ミスターXはまたしてもキウイくんちゃんを沼へと誘います。

・ ・ ・ ・ ・ ・

キウイくん:たいへんだ。たいへんだよぅ!
ボクは改造キウイにされちゃうんだ。怖いよ~

ルルさん: こんどはどうしたの?

キウイくん:ゲノム編集っていうんだよ。
怖い組織にさらわれて、遺伝子を改造されて、変な生き物になっちゃうんだっ!

ルルさん:(いろいろおかしいけど、流しておこう)そっちの沼にも入っちゃったんだね。

キウイくん:ほら、いつの間にかこんなにゲノム編集食品が! (紙束バっサぁ)

ルルさん:ちょっとみせてね。あ、これは遺伝子組み換えだね。こっちは交配による品種改良。こっちも。
日本で作られているゲノム編集の食品(リンク)はこの四つだけだね。

キウイくん:えっ、えっ、これだけ?
ミスターXは知らない間にたくさんの食べ物がゲノム編集になってるから怖いって。

ルルさん:ほとんど間違いだね。
あと、知らない間にというのはただの無知をさらけ出すだけだからやめた方が良いよ。

政府は遺伝子組み換えの作物もゲノム編集の作物も公表しているからね。もちろん、政府は隠してるなんていうのも間違いだよ。
知ろうと思えばいくらでもその機会はあったけど、調べもしないで「知らない間に」なんておかしな話だよね。

キウイくん:辛辣ぅ。

ルルさん:まあ、ここまで間違いや陰謀論が出てくると言いたくもなるよ。

キウイくん:でも、ゲノム編集っていうのは実際にあるんでしょ。改造生物が作れるんだよ。

ルルさん:う~ん。これはなかなか。
それじゃあ、いつものように基本からね。
「ゲノム編集」というくらいだから、キーワードは「ゲノム」だ。「ゲノム」って何のことだかわかる?

キウイくん:えっと、改造生物ということは生物の設計図をいじくることだから、DNAのこと?

ルルさん:まあまあ正解。
実は「ゲノム」という言葉は分野によって意味が微妙に違うんだけど、一般的には「生物の持つ遺伝情報のすべて」とされているね。

キウイくん:うーん。よくわからないけど、DNAとは何が違うの?

ルルさん:DNAは物質の名前だね。デオキシリボ核酸。
DNAはA|(アデニン)・T|(チミン)・C|(シトシン)・G|(グアニン)という四つの「塩基」が長くつながっている物質というのは、前に出てきたからわかってるね。

キウイくん:うん。何十億もつながってるんだよ。

ルルさん: 例えばアデニンもグアニンもそれ自体は何も意味は持たない。特定の順番で並ぶことで意味ができるわけだ。
つまり、その特定の順番で並んだ塩基で作られているDNAという物質は、何らかの意味を持つわけだね。
その意味が情報のことで、塩基が並ぶ順番そのものが「ゲノム」と考えたらいいよ。

キウイくん:えっと、「き」とか「う」とかの文字には意味はないけど、それが「きうい」になると意味があるみたいな?

ルルさん:そうそう。そして、「き」の次に「う」がきて、次に「い」くる。みたいなのを情報ととらえるわけだね。

キウイくん:それがゲノム?

ルルさん:そんな感じ。そして、「ゲノム編集」というのはこの塩基の並び順を変えることだよ。

キウイくん:うーんと、遺伝子組み換えとは違うの?

ルルさん:遺伝子組み換えは、他の生物の遺伝子を持ってきて入れ替えることだったね。
たとえば、キウイくんが小説を書いていて、「ここの部分の表現がイマイチだなと思って、だれかの文章と入れ替える」ことが遺伝子組み換えだよ。

キウイくん:それって盗作じゃないの!

ルルさん:そうだね。
それはともかく、「ここの表現がイマイチだと思って、文字を変えたり消したり付け加える」ことがゲノム編集だね。
つまり、他の生物から遺伝子を持ってくるわけじゃなくて、その生物のDNAの塩基配列そのものを変えることだ。

キウイくん:じゃあ、ボクのDNAの塩基配列を鷹と同じように書きかえたら、ボクも鷹になる?

ルルさん:可能性としてはあるかもね。

キウイくん:やった、空を飛べる!

ルルさん: まあ、すべての塩基配列を書き換えるなんて今の技術では無理だから、キウイくんが飛べるようになるのはずっと先だろうけど。

キウイくん:しょぼん…

ルルさん:そういうわけで、他の生物の遺伝子を入れ替えるというのが遺伝子組み換えなのに対して、その生物自身のDNAの塩基配列を変えることがゲノム編集ということだね。

キウイくん:でも、書き換えるなんてどうやるの? 鉛筆と消しゴムってわけじゃないし。

8. ゲノム編集のやり方

キウイくん:でも、DNAの書き換えるなんてどうやるの? 鉛筆と消しゴムってわけじゃないし。

ルルさん:そうそう。ゲノム編集は鉛筆や消しゴムの代わりに酵素を使うんだよ。
いちばん有名なのがCRISPR/Cas9 っていう方法だけど、聞いたことあるかな。「クリスパー キャスナイン」って読むよ。

キウイくん:あるようなないような。

ルルさん:2020年のノーベル化学賞だね。

キウイくん:あぁ、聞いたことあるような、ないような…

ルルさん:それで、まずは、CRISPR(クリスパー)というのは、細菌とかが持っているDNAの一部分のことだよ。

キウイくん:ふ~ん。そのDNAがどうなるの?

ルルさん:細菌とかの細胞内にウイルスなんかのDNAやRNAが入ってくると細胞がおかしくなっちゃうわけだね。
例の感染症で学んだね。
とくに単細胞の細菌なんかは、細胞がおかしくなる=死だから、こうしたウイルスなんかから身を守るのは大切だ。

キウイくん:怖いねぇ。

ルルさん:で、ウイルスとかのDNAやRNAが入ってくると、このCRISPR(クリスパー)の部分の塩基配列の情報をもとに作られた酵素が、侵入してきたウイルスとかのDNAやRNAを切断して働かなくしてしまう。

キウイくん: 細菌、すごい!

ルルさん:で、その酵素の名前が、Cas9(キャスナイン)だよ。
CRISPR(クリスパー)の部分の塩基配列からつくられるCas9(キャスナイン)という酵素を利用するから、CRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)と呼ばれるわけだね。
ここまではOK?

キウイくん:なんとなく、OK。

ルルさん:それで十分だよ。生物学の試験じゃないからね。
それで、Cas9は適当な場所でDNAを切断するわけじゃないんだ。ガイドRNAというのがくっついていて、特定の塩基配列のDNAやRNAを切断することができる。
まちがって自分のDNAを壊してしまったら大変だからね。

キウイくん:そうすると?

ルルさん:ゲノム編集を施したい塩基配列で確実に作用するということだね。
遺伝子組み換えではこれがなかなか難しくて、狙った結果を得るために何万回も繰り返すということがよくあったんだ。

キウイくん:気が遠くなる~

ルルさん:CRISPR/Cas9 でDNAの狙った部分を切断できる。
これがゲノム編集の基本だね。

キウイくん:でも、DNAを切ってどうするの? それじゃあボクは鷹になれないどころか死んじゃうよ。

ルルさん:そうだね。
ちょっと具体的な例を見てみよう。

9. ゲノム編集の利用

ルルさん:それで、具体的にこのゲノム編集を何に使うかというと、今の段階では生物のリミッターの解除だ。

キウイくん:リミッターの解除? なんかすごみがあね。

ルルさん:生物は体内で、ある物質が過剰に作られないようにリミッターが働いている場合があるんだよ。
そのリミッターの機能を持っている酵素やたんぱく質の設計図は遺伝子としてDNAの中にあるわけだけど、これをゲノム編集で壊す。

つまり、Cas9 でその部分のDNAを切断するんだ。
そうすると、リミッターが働かなくなるわけだね。

キウイくん:えっと、DNAが壊れちゃうから、その部分を設計図にしてるたんぱく質が作れなくなっちゃうってこと?

ルルさん:そうそう。ちゃくと勉強できてるね。
それじゃあ、ゲノム編集の話題になると必ず出てくるマダイを例にしてみようか。
お野菜系だから本当はトマトを紹介したいところだけど、マダイの方が仕組みがわかりやすいからね。

キウイくん:わかりやすさは大事だね。

ルルさん:それで、このマダイは「ミオスタチン」というたんぱく質をつくる遺伝子が壊されている。
ミオスタチンは筋肉が増えすぎないように制御するたんぱく質なんだけど、その設計図となる遺伝子が壊されているので、このマダイはミオスタチンを合成できない。

キウイくん:ふむふむ。それで?

ルルさん:筋肉の増加を抑制するミオスタチンを持っていないので、他のマダイより筋肉が増えて、体が大きくなって、食べられる量が増えるんだ。

キウイくん:ムキムキマダイ?

ルルさん:そういうことだね。
ちなみに、さっきでてきたトマトは、ストレス緩和や血圧上昇抑制の効果が期待されているGABAギャバという物質を多く含むようになっているよ。

キウイくん:やっぱり、ゲノム編集も食べ物が多く作れるようにしたり、健康とか医療とかに使うの?

ルルさん:そういうこと。
今は日本ではゲノム編集では遺伝子を壊すものしか実用化されていないけど、切断した場所に好きな配列の塩基を入れることもできる。

キウイくん:そうそう、それそれ。ボクが鷹になる方法だよ。教えて。

ルルさん:多くの生物はDNAが壊れた時に修復する機能を持っているんだ。
で、切れたDNAをくっつける際に、近くにあるDNAのかけらを間に入れてしまうことがある。
これで、新しい塩基配列を挿入することができるよ。

キウイくん:これでボクのくちばしが鋭くなる!
でも、そうなると、けっこうなんでもあり?

ルルさん:まあ、ちゃんと遺伝子として発現するDNA配列を入れるのは難しいけどね。

10. ゲノム編集の技術の規制

キウイくん:ゲノム編集は遺伝子組み換えより怖い気がするよ。
遺伝子組み換えは他の生物の遺伝子を使っているから、もともと生き物だったわけだし、知っていればそんなに怖くないけど、ゲノム編集は何でもアリでしょ。

ルルさん:まあ、将来的にはそんなこともあるかもしれないけど、今の段階ではゲノム編集は「進化を加速させる」くらいのものだね。

キウイくん:進化を加速?
どういうこと?

ルルさん:生物は細胞が分裂するときや子ができるときに、DNAが壊れたり配列が変わったりすることはよくあるんだよ。
そうするとその生物の形質が変わって、それが積み重なって新しい形質が表れることが生物の進化だね。
そして、形質が違うものの中から目的の形質をもつものを選抜し続けると「交配による品種改良」になる。

キウイくん:ふむふむ。

ルルさん:その形質の変化を人為的に起こすのがゲノム編集だよ。
「交配による品種改良」だと目的の作物を得るのに何代にもわたって交配を繰り返さないとならないけど、ゲノム編集を使えばその時間が短縮される。
けれど、本質的には「交配による品種改良」と変わらないわけだね。

キウイくん:確かに。その生物のDNAが変化するというのは同じだね。

ルルさん:なので、こうした遺伝子を壊すだけのゲノム編集の規制は遺伝子組み換えと比べて緩い。
遺伝子を壊すだけのゲノム編集は「交配や変異による品種改良」の延長と扱う国もあるよ。

キウイくん:まあ、わかる気がする。

ルルさん:で、外来の塩基を組み込むタイプのゲノム編集は遺伝子組み換えと同様の扱いにするという国もあるし、ゲノム編集はすべて遺伝子組み換えと同じ扱いにするという国もある。
技術が進歩するのに合わせて、規制をどうするかという段階だね。

キウイくん:日本はどうなってるの?

ルルさん:一部の遺伝子を働かせなくしたものは「交配や変異による品種改良」と同じということで、届け出をするだけだよ。
外来の塩基を取り込んだものは遺伝子組み換えと同じ扱いということで、安全性や環境への影響に関する検証が必要になるよ。
これは遺伝子組み換えの場合と同じだね。

キウイくん:大丈夫かなあ。ちょっと不安。

ルルさん:まだ実用化は始まったばかりだからね。だから、届け出制にして国もその動向を注視してるよ。
あと、もうひとつ注意しなくてはならないのは「オフターゲット変異」だよ。

キウイくん:うーん、これも美味しくなさそう。

ルルさん:CRISPR/Cas9では、目的の塩基配列と似た配列がある場所でDNAを切断してしまうことがあるんだ。
そうすると、意図しない変異が起きて、アレルギーを引き起こす物質とか毒素なんかができてしまうかもしれない。

キウイくん:危ないよっ!

ルルさん:そう。
だから、ゲノム編集の生き物を作ったときの届けにはこの「オフターゲット変異」が起きていないかちゃんと確認しましたよ、っていう項目があよ。

キウイくん:なるほど。ちゃんと考えられてるんだね。
イメージだけで危ないと言ったり、逆に大丈夫だって言いすぎるのもよくないね。
ボクたちも、その仕組みとか良い所とか考えないといけないところをちゃんと知っておくことが大事だね。

ルルさん:そうだね。キウイくんも成長したねぇ。ムキムキマダイあげるよ。

キウイくん:まだより虫が良いなぁ。

ルルさん:さて、今はそこまで大きなゲノム編集はできないけど、技術が進歩すればもっと大きなことができるようになるかもしれない。

キウイくん:例えば?

ルルさん:不老不死とかね。
実際に植物は不老不死に近い体を持っているから、鳥や人間にも応用できる可能性もあるよ。

キウイくん:不老不死!
でも、そんなことしていいの?

ルルさん:そう。なので、こうした研究は常に「倫理」という言葉を忘れないようにしないとならない。

キウイくん:倫理? なんだか難しそう。

ルルさん:そうだね。
だからこそ、知ることが大切になるわけだね。
今回は触れないけど、研究や技術開発と倫理はとても関係が深いから、興味があったら調べてみてね。

11. まとめ

キウイくん:ふう。
ミスターXは間違っていることばかりだし、「知らない間に」なんて恥ずかしくなってきたよ。

ルルさん:何をするにしても知ることは大切だね。
その時にミスターXとか、某チューバーとかに聞いたらダメだよ。あれはお金稼ぎが目的で過激な事を言ってるだけだから。

ちゃんと知識を持っている人に聞こうね。

キウイくん:そうだね。
でも、ちゃんと知識を持ってる人を見分けるのも難しいね。

ルルさん:確かに。
その情報を信じる前に、「どうして?」って聞いてみると良いよ。

キウイくん:それはどうして?

ルルさん:ちゃんとした知識のある人ならちゃんと答えてくれるからね。
例えば「遺伝子組み換え作物は危険」と言っている人に「どうして?」と聞いても、ちゃんとした知識がない人は「動画投稿サイトを観て」とか「○○さんが言ってた」とか「自分で調べろ」と言うからね。

キウイくん:あっ、ミスターXさんの口癖!

ルルさん:でしょ。
ちゃんとした知識のある人なら明確な根拠をあげてくれるからね。

キウイくん:なるほどね。
いろいろ勉強になったよ。ありがとう。ルルさん。

ルルさん:いえいえ。
また何かあったら聞きに来てね。ミスターXに聞く前にね。


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