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ソマティック・エクスペリエンシング/インテーク面接

身体感覚に働きかけるトラウマ治療を受けてみる

ソマティック・エクスペリエンシング(以下SE)は、ポリヴェーガル理論についての書籍やSEの提唱者であるピーター・A・ラヴィーン博士の著書を読んだ時から「いつか受けてみたい」と思っていた。

現在私はEMDRを受けている。EMDRでは認知も扱うが、身体志向のセラピーだと言われている。カウンセリングを卒業し、スキーマ療法も一通りやって、もう認知の面からのアプローチは今のところいいのかなという感じがしている。頭の中のいわゆる「思考」は整理がついてきている感覚がある。

とりあえず身体だというのは、最近ずっと思っていた。整体や鍼に行くことも考えた(ちなみに東洋医学の考え方はトラウマ治療に取り入れられていることが多く、身体に対する考え方も勉強になるものが多い)。
でもここでSEをいっちょ受けてみるというのはどうだろう?という気持ちが出てきた。

SEJapan の公式サイトを見てみると、治療を受けられるプラクティショナーのリストがある。これはEMDRなども同じだ。
そうしたら、近くにカウンセリングルームを開いている方が見つかった。そのカウンセリングルームのホームページを見てみると、料金も高くない。プラクティショナーになるためにはかなりの金額を投資して勉強されたはずなのに、価格設定が沁みる。

という訳で、予約をとって初回のインテーク面接に行ってきた。初回はもちろんSEは行わず、話をするだけだ。そこで次回以降本格的に続けるかどうかを決める。
今回のカウンセリングルームは、女性による女性のためのところで、セラピストももちろん女性だ。


暖かくホッとする空間

EMDRのカウンセリングルームと同様、こちらも古いマンションの一室にあった。こういうところは治療はしっかりやってくれるけれど、設備投資にまでお金はかけられないのかもしれない。でも料金設定は安い。良心的で本当にありがたい。

室内に入ると、やわらかい空気の綺麗に片付いた部屋に通された。靴を脱いで上がり、床暖房が効いていて座り心地のいい椅子があり、ぬいぐるみや膝掛けが並べてある。椅子には小さな湯たんぽまで用意してあった。照明や空調、カーテンの具合も確認してくれる。そして、よかったら安心できそうな好きなぬいぐるみや膝掛けを自由に選んでくださいと言われた。泣いてしまうだろ。

セラピストもやわらかい雰囲気の方で、新たに出会うタイプだった。卒業したカウンセラーは「頼りになる冷静な義母」で、EMDRセラピストは「何でも話せる親戚のおじさん」という感じ。こんなにほんわかした感じは初だ。


生育歴よりも「現在の私」

予約の際に、すでに生育歴を振り返るカウンセリングを受けていたことや、現在EMDRを受けていることは話していた。そのため、過去の出来事を話すというよりも、現在の私の困り事や体の症状、どういう経緯でここまで辿り着いたのかなどを話した。生育歴も次回以降で振り返るのだろうけど、初回で話す必要性は感じなかった。

体の症状はこんな感じである。
・喉の詰まり
・首と肩のこりや腰痛(体の緊張がひどい)
・偏頭痛
・軽くなってはきたが、逃げられない場所で起きる予期不安(美容院のシャンプーやMRIなど)

あとは、強迫的なこだわりもある。トラウマ治療の本を読み漁ることも、本当は早く寝たいのになぜか夜更かしになることも根っこは同じような感じがしている。

これらはEMDR治療を受けることで軽くなってきたり、気づくことができるようになっているものも多い。治療が進めば、EMDRだけでも大丈夫なのかなと思ったりする(EMDRのセラピストにも軽くなるはずだと言われている)。

まあでも、せっかく思い立ったのだしやってみてもいいのかなと思う。EMDRとSEを同時に受けることでの弊害は無いようだ。


体験として、ほんの触りだけSEを受ける

SEでは愛着についても取り組むし、幼少期のことやトラウマはじっくりやっていきましょうねと言われ、SEの触りの部分だけ受けてみることになった。

まずは、室内や自分の周りの安全を確認する。とても大事なことらしい。目と首をゆっくり回しながらいろんなものに目をやる。ここでは怖いことは起きない、安全だと確認できたら、次はリラックスできる姿勢を整える。クッションを調整し、深く座り、力を抜く。私はリラックスがよくわからないのだけど、まあいい感じになった。

目を瞑りセラピストの誘導に従って、足の裏が床に付いている感覚をしっかり味わう。これはお馴染み「グラウンディング」だ。とにかくしっかりじっくり感じる。この感覚が「今ここ」にいるという安心に繋がる。

足元から頭のてっぺんまで、ゆっくりと身体の感覚をスキャンするように感じていく。これが難しかった。ラヴィーン博士の本のワークでもうまくできなかった。身体の感覚を感じるって、普段ほとんどしていないことに気づく。いつもいつも思考に邪魔され、強烈な感情が時々圧倒しようとしてきて、身体感覚はそれらにかき消されてしまっている。

それでも「ふくらはぎがパンパンだ」とか「心臓が動いている感覚を久しぶりに感じた」とか、それなりに感じるものはあった。

そして足の裏に再び意識を向ける。両足に軽く痺れているのかと思うような、ピリピリした感覚があった。そのピリピリと一緒にいてください、と言われ、しばらく感じ続ける。足の裏がさっきより暖かく感じるけど、床暖房のせいだろうか。やがて足首もピリピリし始めた。それもしばらく感じ続けて、そこで完了し目を開けた。

足の裏の感覚がはっきりしているのと、ふくらはぎのパンパンに張った感覚が軽くなった。気のせいかもしれない。でもリラックスの感覚を味わえたし、気持ちのいい時間だった。

SEの本を読んでいるのでわかっているけど、こういった感じで治療は進んでいき、トラウマ体験のせいで「未完了」になっている体の動きや感覚を「完了」させていくことになる。
ちなみに、ピリピリした感覚はトラウマのエネルギーが放出されているのだそうだ。ほんとに?

理論で読んだし、論文も多く出ており効果もちゃんと上がっている。身体志向のトラウマ治療で名前が上がるのは、まずSEとEMDRだ。なのでガッツリ治療なのだけど、何となくヤバいスピリチュアルサロンで受けている施術のようにも見える。こんなんだったら素人にもできるんじゃ?と思うけれど、それは違う。プラクティショナーの方たちは、医学の勉強を修めたり、臨床心理士の資格などを持っている上でSEの資格を取り、この治療を行っている。心理療法舐めんなよ。


共同調整できる相手を見つける

最後に、ポリヴェーガル理論をとてもわかりやすく説明してくれた。
周辺の細かいことは書かないが、つまりは自律神経の「調整」をスムーズに行うには「腹側迷走神経系」という一番新しい神経系が発達し機能していなくてはならない。この腹側迷走神経系が優位だと、安心・安全を感じることができていて、人との繋がりを求め社会交流できている状態になっているということになる。

子どもは自分で「調整」する能力が発達していないが、その調整を助けることができるのは腹側迷走神経系が機能している大人だ。これを「共同調整」と言う。そして、トラウマを持った大人はこの神経系が発達していないので、自分の子どもと「共同調整」ができない。ということは、自分の子どもにも調整能力は発達しない。連鎖していく。

つまり、腹側迷走神経系が機能するようになるには、周りに「腹側迷走神経系がちゃんと機能している人間」がいることが鍵になるとのこと。お互いに共同調整していける関係になる。

思うのだけど、一方的に「私の辛い気持ちを聞いて、わかって、寄り添ってぇ」となるのは相手に自分を調整してもらおうとしているわけで、これは大人同士の社会的交流とは程遠いのだろう。もちろん共同調整などにも程遠い。子どものやることだ。
つまり、こうやっている(やらざるを得ない)人達(これまでの私もそうだった)は調整機能が発達していないし、機能していないのだろうと思う。

私は子どものためにも、腹側迷走神経系を発達させていきたい。いかなくては。
最近子どもとの関係性がかなり良くなり、子どもも生き生きしてきているように見えるのは、おそらくこういった関わりがだんだんできてきているからなのだろう。

セラピストに「ルルさんの周りに、この人といると何だかホッとする人はいませんか?そういう人は、おそらく共同調整ができる人です」と言われた。

うーん。いない。子どもは別としたら、いないのだ。セラピストも言っていたが、夫はいい人ではあるのだが特性が強く、共同調整ができる人ではないだろう。周りの人間関係を見回しても、そういう人が見当たらない。みんな「調整」がうまくいってなさそうな人ばかりに見える。

私がこれまでは「認めてほしい、わかってほしい」という気持ちで人間関係を作ってきたせいもあるだろう。カウンセリングでも言われたけれど、自分の内側が変わると人間関係も変わる。セラピストにも「これからですね」と言われた。
SEは、共同調整できる人を探していく旅なのだそうだ。そして私のリソースを増やしていく。


じっくりやっていきたい

次回以降も続けることにした。あの場所は居心地がいい。

私の今の状態について話しても「それでいい」と言われた。強迫的なこだわりも、本を読み漁ることも、全て自分を守っている行動だからだそうだ。それでいいし、変えないとと思う必要はないとのこと。そうか…。
確かに自分を守っているのだろうと思う。どの行動も全ては「安心したいから、嫌な感情を感じたくないから」ということに繋がるのだろうと思う。

腹側迷走神経系が機能する体のケアについても教えてもらった。やってみたら気持ちがいい。家でも毎日やりたい。私に必要なのは、リラックスと自分への労りなんだろう。

SEは月1回のペースで続けるのが通常だそうだ。焦らずじっくり続けていけたら嬉しい。

ここのカウンセリングルームは、SEだけだと少し価格が上がるのだが(そしてそれは私は全然構わないのだが)、セッション中に認知についてのお話などもして、少しだけカウンセリングの要素も入れましょう、と言われた。そうすると価格がカウンセリングの料金にできるらしい。

優しい。トラウマ治療関連で出会う人たちはみんな優しい。

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