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トラウマ治療について⑯「ポリヴェーガル理論・実践編」

理論と実践を学ぶ

先日こちらの本を読んだ時に載っていたワークがとてもよかった。毎日やっているのだが、そのワークを考案したのはスタンレー・ローゼンバーグさんという有名な臨床家であることが書いてあった。

興味が出てきて調べたら、スタンレー・ローゼンバーグ氏の著書を見つけたので読んでみることにした。


神経系の仕組みをガッツリ解説してある

著者のローゼンバーグ氏はもともと身体をケアするセラピストだったのだが、ポリヴェーガル理論を知ることにより迷走神経にアプローチして回復へと導く技法を開発した。その集大成がこの本である。

前半は解剖学なども交えて、脳神経、自律神経とそれに関係する骨や筋肉の仕組みを解説している。カラーの図も掲載されておりわかりやすい。
事例や具体的な症状、感情との関係、自律神経系の機能を簡単にテストする方法なども書いてある。

ASDやADHDの子ども(大人も)が社会的交流ができるようになることについても書かれている。ポリヴェーガル理論のポージェス博士は、ASDの子どもたちの聴覚過敏を治療する「リスニング・プロジェクト・プロトコル」を開発し、論文にまとめて発表している。特定の加工を行なっている韻律のある音楽を聴くことにより、耳の中の小さな骨筋を調整する脳神経の機能を回復させるという仕組みだが、全部書くと長くなるので割愛する。

結局、いろいろなところに(心にも)出ている症状や感覚の問題の根になっているところは一カ所で、そこにアプローチするのだと繰り返し書かれている。


自律神経系の調整でまずは土台を整える

後半にはいくつかの自分でもできるエクササイズが載っている。写真付き(筋肉モリモリの男性がモデルで迫力がある)で、すぐにでもできる。ただ、セラピスト向けにも書かれているので、自分では繊細な手指の感覚が無いので難しいかなというものもあるにはある。このエクササイズを全部やっても20分ぐらいだろうか。

クライアントの腹側迷走神経系の機能がある程度回復している状態でないと、どんな手法も効果を上げることが難しいそうだ。心理セラピーでも同じらしく「心理的問題は、どのようなものでも、自律神経系の柔軟性とレジリエンスの欠如が関係しています」と書かれている。

自律神経がガタガタの状態で受けるトークセラピーや身体的な技法は、効きが悪いということか。確かにそうだと思う。なので、まずは自律神経系を整える。そうすると回復も少し早まるのかもしれない。

トップダウンとボトムアップのどちらからもアプローチするというのは、こういうことなのかもしれない。


眼球すごい

とりあえず、騙されたと思ってやってみる(騙していないけれど)。ちなみに眼球の動きは神経に繋がっているので、左右に動かしたりもする。眼球すごい。EMDRも眼球運動をするし、フェルデンクライスでも眼球を使う。

続けているワークも眼球の動きがメインなのだけど、終わると首の動きの感覚がスムーズになっていて毎回驚く。首を回さないで目を動かすだけで十分だという整体師さんの話を聞いたことがあるが、こういうことなのかと思った。


手の差し伸べ加減がすごいと感じる

ローゼンバーグ氏は訳者あとがきにもあるように、お金儲けには興味がない人らしい。これはいろいろなトラウマ関連の本を読んでいていつも思うのだが、とにかくどれも惜しげもなく書かれている。セラピストの助けになるように、当事者の知識になるように。「続きはWebで」とか「私のこの手法を受けたらもっといいですよ」とか「実はこの講座がありまして」とか、一切ない。当たり前なのだけど。そして、飛び道具はない。これさえやればOKというものは無いところもとてもいい。

ちなみにローゼンバーグ氏はポージェス博士やSE創設者のラヴィーン博士とも交流があり、繋がっているのだなとしみじみした。

いい本を読んだ。これからも何度も読み返すと思う。

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