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The Making of Rurouni Kenshin―るろうに剣心のすべて 第六章:撮影監督 石坂拓郎さん

“前作を超える”という強い信念の元、映画『るろうに剣心』シリーズを進化させ続けた日本を代表するプロフェッショナルたち。映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の撮影舞台裏に迫る、限界知らずのチーム「るろうに剣心」スタッフの皆さんのインタビュー連載企画!

第六章は、『るろうに剣心』シリーズ全作品で、撮影監督を務めた石坂拓郎さんにお話を伺いました。

■ウエスタン調の時代劇をめざしてきた

漫画原作で、アニメ化もされている。では、実写映画でどれくらいのエンタテインメント性を持ったルックが作れるのか。それが1作目の『るろうに剣心』でのポイントでした。
ちなみに、1作目でもでも回想シーンで、人斬りとしての剣心は登場します。そのときの撮影コンセプトは今回の『The Beginning』でも応用していますね。
これまでの時代劇は、モノクロっぽいものが多くて、ちょっと色味をおさえて黒が際立つような作品が多かったと思います。しかし『るろうに剣心』はキャラクターがカラフル。そこで、色味を一切落とさないというルールで、現代っぽさはなくしつつエンタテイメント性は残す、鮮やかな映像を目指しました。その方向性で『The Final』まで積み上げてきました。

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黒澤明監督は、ウエスタンの巨匠ジョン・フォード監督作品から多くの影響を受けたと言われています。その後、『七人の侍』は、『荒野の七人』を生み、『用心棒』は、イタリアのマカロニウエスタンで、
『荒野の用心棒』になりました、日本映画がウエスタンにまた影響をあたえたわけですね。 ウエスタン(西部劇)が時代劇に影響を与え、そして、時代劇が逆に西部劇に影響を与えることにもなった。その西部劇を見て育った自分が今度は、1作目の時、これはウエスタンのように撮りたいなと。たとえば斎藤一が登場するところでは砂埃が巻き上がり、乾いた荒野なイメージで、ウエスタン調を意識しました。1作目で出来なかったことを2作目で、さらに3作目で、と実践し続けてきました。そして4作目の『The Final』では、色の濃度をグッと深めよう、と考えました。

■初めての試み、そして「紫」

『The Final』と『The Beginning』でコントラストを打ち出すことを意識していました。
『The Beginning』は過去が舞台で、僕がやってみたかったスタイルの時代劇をやれる、と思いました。
『The Final』まではカメラを動かすことが多く、ガンガン動かして、ガンガン撮っていました。
一方『The Beginning』ではあまりフレームを動かさずに、色味を落としました。これは初めてのことでした。思い悩む剣心、そこに巴との恋愛要素も入ってくる。「紫」がキーカラーだと思いました。どうやって紫色を混ぜ込んでいくか。それがテーマです。紫はコントロールがむずかしく、まちがえると映像に違和感を与えることもあります。そこで、ライトや映像での色付けでなく、巴の衣装にある紫を印象的に捉えたり、雪の白との対比から紫を感じとれるようにしました。
雪の映画はたくさんありますからね。雪をどう撮るかについてオリジナリティを出すのも大変でした。
『The Beginning』は剣心と巴のしっとりとした内面の物語。でも、映像的には、そこにもほんのちょっとした派手さはほしくて。撮影しながらも悩みながら模索していましたね。

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これまで『るろうに剣心』は、明治の新時代を描いてきました。なので、4作目の冒頭で、江戸時代から完全に脱却した横浜駅のプラットホームがシーンの舞台になるのは必然でした。お客さんを、あの世界にどうやって連れていくか。新時代の勢い、賑わい、ミステリー、緊張感そして縁(えにし)の登場とオレンジ色が映えるように調整しています。

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『The Final』のラストの剣心と縁の闘いは、二人の感情がぶつかり合う、長い時間をかけた”死闘”で二人の刀を交えることになります。そこで、夜から夜へ、ではなく、夜から朝へ、のほうが画としてもバリエーションが生まれると思いました。
ただ当初は、もっと派手に陽が昇ってくることをキーポイントにしていました。
しかし大友監督の発案で、気がついたら朝になっていた、というほうが時間経過を示す意味では面白いのではないかと。つまり、バーン!と陽の光を浴びるのではなく、時間が経つのを忘れるくらいの濃密なバトルがそこで行われていたことを示す方向になりました。
こういう考え方もあるのか!と改めて発見させられました。

『るろうに剣心』の現場は、スタッフ、キャスト、全員「セーブ」しない現場です。監督がよくおっしゃいますが、「みんな、勝手にやりすぎてしまう」んです。
そんなみんなの仕事ぶりを知っているので、僕ら撮影部も、映像の仕上げの段階で一切手は抜けなくなる。これは、素晴らしい相乗効果だと思いますね。

                          聞き手:相田冬二

いよいよ明日、6月4日(金)、映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が全国公開!
『るろうに剣心』にとって最も大事なエピソードである最終章。

最後にして最高の傑作が、ここに誕生!
最大の謎が明らかに。伝説、遂にグランドフィナーレへ!
『るろうに剣心』シリーズの完結を、『The Final』と合わせて是非劇場でご覧ください!