本との縁、10年越しの出会い。
先日、ふと思い出したのですが、「読みたいなぁ」と思ってから、実際に読むことができるまで、10年間の歳月がかかった本がありました。
高校2年生のとき、現代文の問題集に、竹西寛子さんの「贈答のうた」の一節が問題文として掲載されていました。
勅撰和歌集や王朝の物語に記されている贈答歌について綴られたエッセイで、端正な文章に心を惹かれ、読んでみたいと思ったのです。
ところが、学校や市立の図書館、いくつかの本屋さんで探しても見つからず…。
当時は、本は本屋さんで買うものだと思っていたので、ネット書店を利用するという発想も無く、やがて探すことをあきらめてしまいました。
それから約10年後。
20代後半にさしかかりつつあったわたしは、塚本邦雄の著作をきっかけにして、講談社文芸文庫の存在を知りました。
あるとき、本の末尾の作家別作品目録に目を通していたところ、「贈答のうた」が講談社文芸文庫に入っていることに気がついたのです。
自宅近くの本屋さんや、街中の比較的規模の大きい本屋さんでも探してみましたがやっぱり見つかりません。
取り寄せをしたほうが良いかなぁ。
そう考えていたとき、家族で東京旅行に行くことになったのです。
わたしの希望で、神田神保町も目的地のひとつにしてもらいました。
神保町ならば、探している本に出会えるかもしれない、と考えたからです。
取り寄せる前に、偶然の出会いに期待しよう。
そう思いながら、東京へ向かいました。
東京駅に着いてすぐ、まずは丸善丸の内本店を訪れました。(もちろん、これもわたしの希望で。)
どきどきしながら文庫本のコーナーに向かい、講談社文芸文庫が並べられた一角へ。
た行の作家を順番に目で追っていると…。
思わず、「あった!」と声に出してしまいました。
高校生の頃から読みたいと思っていた本に、やっと出会えたのです。
10年も前の出来事ですが、そのときに感じた喜びは今もあざやかに覚えています。
東京に着いてすぐに旅の目的を達成してしまいましたが、神保町での古本屋さんめぐりも楽しいひとときでした。
旅行中から少しずつ「贈答のうた」を読み進めていったのですが、この本は高校生のときではなく、今がちょうど読むべきタイミングだったのかな、と思ったのです。
というのも、その頃、古典文学や和歌・短歌の魅力に引き込まれて、関連書籍をたくさん読んでいるところだったからです。
"高校生のときのわたしが読んでいたら、この本の内容の豊かさを充分に理解できたかな?
より深く内容が理解できるようになるまで、本がわたしを待ってくれていたのかもしれない。"
そんなふうに感じました。
どんな本にも言えることですが、本との間にも"縁"というものがあるように思います。
迷っているときや悩んでいるときに、何気なく手にした本に"今まさに欲しかった言葉"が書かれていたり。
寡作の作家さんのめったにない新刊の発売日に、偶然本屋さんに行き合わせたり。
"本に呼ばれる"という感覚をもつこともあるのです。
実は、この出来事を思い出したのは、noteがきっかけ。
noteを書くようになってから、"言葉で気持ちを届けること"について深く考えるようになり、「贈答のうた」を再読したいな、という気持ちが芽生えたのです。
事情があり手放してしまったので、改めて購入しようと思っています。
好きな本との縁が結びなおせるのも嬉しいですし、今のわたしが読むことで新たな気づきが得られると良いなぁと思い、再読を楽しみにしている今日この頃です。
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