待ち侘びる セカンド・カー

この家の二台目の車としてやって来た私

古株の紺の乗用車は
旦那様が通勤で乗って行くので

奥様が日中 近場で乗るために一家の一員となった
若葉マーク付き 水色の軽です

一家が引っ越してくること数年
ここは車社会なので
当初免許のなかった奥様は苦労されたようです

この家に来る前
中古車店の正面に展示されていた私は
夕方 奥様と坊っちゃまがバス停に佇む姿を見ていました

ある時は雨の中
前には抱っこ紐で坊っちゃまを抱え
後ろにはリュックを背負い
右肩には保育園のお昼寝布団が入った袋を下げ
左手には傘を差しながら
バスを待ち侘びていました

他の家では車で送り迎えしているのに、何だか哀しくなった
こんな時、車があったらな

後日そんな風に旦那様にこぼしていたそうです

そんなこんなで この家にやってきた私ですが
休日は出番がありません

なぜなら 休日に一家を乗せるのは
ファースト・カーの役目なのですから

走行距離の差は開く一方
私はぽつんとお留守番

それがセカンド・カーの運命と知りつつも
本当は 土日祝にも貴女に必要とされる私でありたい

 どうか私に乗って下さい
 どうか私に乗って下さい

 貴女に私を走らせて欲しいのです
 貴女がたとえ急ブレーキを踏んだり急ハンドルを切ったり
 電柱や塀にかすったりするようなことがあったとしても……

物憂い休日が明けた月曜日

坊っちゃまと共に私に乗り込んだ奥様
待っていましたよ

私はこの家のセカンド・カー
どうかこれからもお側に置いて下さい

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