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秘密の愛の依存症

あなたが私に注ぐもの
それは古傷に染み入る優しい塗り薬でもあり
禁忌の香りが漂う精油のようでもある

それには即効性があり、ほとばしるような歓喜をもたらすけれど
ひと度注がれるものが途切れると激しく渇きを覚えてしまう

会瀬と会瀬の間の日々
日ごとに薄れる
前回交わした愛の記憶

 そろそろ上書きされたい

肌身離さず握りしめる端末にあなたの気配を感じない夜

欠乏欲求の仲間
あなたは肌呼吸のような存在だから
奪われると

 あっぷあっぷ

泳げない

この身が感知する情報という情報は疑いの種に変換される

裏腹に
一家の太陽という役割を演じる母は
父と子に曇り顔は見せられない

一家のかかりつけ医には症状を訴えられない

あなたが全てではない風を装うために疲れが眠りへと誘うことを期待しながら家の中を行ったり来たり

付け焼き刃で流し込む胃薬と睡眠改善薬

そんな努力も虚しく
布団の中で代わり映えのないスマホの通知画面を再び目にしてうなだれる
入眠儀式は最終段階を前にして頓挫を来す

消灯後も
寝返りと待ち受け画面の点灯を繰り返すだけ

 これは天罰だ!

微睡みから目覚めた深夜二時
翌日のパフォーマンスを諦める決意を固め体を起こしリビングへ

副交感神経が麻痺した今夜は活動の時間だ

代わり映えのないスマホはバッグにしまい
自己実現へとつながる梯子に手を伸ばし
資格取得のためのテキストをテーブルに広げる

この梯子を登りつめたなら
この手に光るだろうか
虹色の玉

窓にうっすら光が入り出す

不意に流れるあなた専用の着信音
通知画面に表示されるごめんのメッセージ

戻ってくる肌呼吸
漲る歓喜のエナジー

テキストをよそ目に
間髪入れずにいいのと送信

そして始まる
この家で私しか起きていない
沈黙の朝のダイアログ

秘密裏に交わす愛
それが私の生きる証

欠乏と充足を交互に与えられながら
今日も逃れたくない沼へ

ずぶずぶと…

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