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美術館巡りとエッセイ

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美術館と展覧会に関する、エッセイ。
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【お役立ち記事】マガジン「美術館巡りとエッセイ」の索引

東京都アーティゾン美術館 永青文庫 太田記念美術館 岡本太郎記念館 菊池寛実記念 智美術館 サントリー美術館 静嘉堂文庫美術館 世田谷美術館 泉屋博古館東京 東京国立近代美術館 東京都現代美術館 東京都美術館 豊島区立 熊谷守一美術館 パナソニック汐留美術館 松岡美術館 三鷹の森ジブリ美術館 三菱一号館美術館 山種美術館 ワタリウム美術館 神奈川県coming soon... 千葉県coming soon... 埼玉県coming soon... 山梨県山梨県立美術館

庭園の緑とモダンの午後。東京都庭園美術館

モダンの庭園を歩きにゆく。 JR目黒駅の東口を出て、目黒通りをまっすぐ歩く。道路沿いに展覧会の旗がはためく。賑わう駅回りを通り過ぎれば、東京都・白金台の瀟洒な街並み。横断歩道を渡ればすぐ、柵越しに自慢の庭園が見えてくる。 東京都庭園美術館の緑豊かな正門をくぐり抜けて、ミュージアムへの道を辿る。夏場は入り口に「毛虫注意」なんて書かれていてヒヤヒヤしたっけ。 1933(昭和8)年に宮家の一つ、朝香宮の自邸として建てられたアール・デコの美しい建物は、50年後に美術館となった。

風流な歴史散歩でそぞろ歩き。永青文庫

目白通りから脇道に逸れれば、そこは閑静そのもの。 細川家ゆかりの地、東京都・目白台。 永青文庫を含む敷地一帯は、幕末期に肥後熊本の藩主だった細川家の下屋敷だったそう。 昭和初期に建てられた家政所(事務所)が今では美術館となり、細川家ゆかりの歴史資料や美術品を保管している。 細川忠興の佩刀「歌仙兼定」もここにある。 設立者の細川護立は美術に親しみ、書画や東洋美術などを積極的に蒐集してコレクションを築き上げた。 静かな門をくぐれば、頭上には枝を伸ばす桜と楓の樹。秋には柿が

伝統的な景観に西洋のエッセンス。大原美術館

岡山県・倉敷の美観地区にある、日本で初めての西洋美術館に行ってみたい。できたら、女子旅で。 色々な嬉しい偶然から、私はその憧れを叶える。友達と2人で東京駅から新幹線に乗り、名古屋も大阪も通り過ぎて、遥々と岡山駅へ。在来線で少し先へ、JR倉敷駅から歩けばすぐ。倉敷川の両岸の古き良き街並み、かつての景観を守っている。 レトロモダンな風景に心躍る。いいな。袴とブーツを履いて、はいからさんの格好で並んで歩いてみたい。 創設者は倉敷の実業家・大原孫三郎。彼はアーティスト支援に精力

和の心がよみがえる。山種美術館

銀杏並木の坂を登る。 東京都・広尾。恵比寿駅の西口を出て、山種美術館に向かう道すがら。街路樹に晩秋を見た。秋風、いやすでに木枯らしだろうか。凛とした寒さが心地よい。 初めてこの美術館に来た日はよく覚えている。 いつかの8月、それもとんでもない猛暑日。「駅から10分? たいして遠くないし、バスに乗らなくてもいいかな」と気軽に出かけた私は、坂道を歩きながらダラダラと汗を流した。エントランスに着いた頃には顔面も赤く、展示室へ入る前にロビーのソファで涼んだっけ。 けれども、そん

装い新たに「静嘉堂@丸の内」となって。静嘉堂文庫美術館

かかとの低い靴で丸の内の界隈をてくてく歩く。 *** その昔、丸の内OLだった。 ——といっても大企業勤めではない。皇居近くにある、小企業が沢山出入りするシェアオフィスの一角で働いていた。 スタートアップのような華々しさもない。「IT事業をやるなら」と田舎者のノリで雰囲気から丸の内を選んでしまった、残念な零細企業に勤めていた。 ほやほやの新卒だった私がそうした裏事情に気づくはずもなく、面接で通されたラウンジからの眺めに心奪われるのは一瞬だった。エレガントな街、丸の内。そ

砧公園をお散歩しつつ丸ごと1日アート巡り。世田谷美術館

小田急線の千歳船橋駅から、あるいは世田谷線の田園調布駅から東急バス。用賀駅からは20分くらいお散歩しながら行ける。 見えてくるのは緑豊かな東京都立砧公園。 世田谷美術館は、ここにある。 1万7千点のコレクションを誇るこの館は、開館以来長く、世田谷にゆかりのある作家を紹介しているところにもこだわりが感じられる。 また、著名作家に限らず、正式な美術教育を受けていない人びとが手がけた「フォーク・アート」「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」といったジャンルも国内では先駆

風格とさわやかな緑を感じて。泉屋博古館東京

地下鉄の六本木一丁目駅で降りたら、外のエスカレーターを上がってすぐ。 東京都・港区の瀟洒な空気に身を委ねる。 すぐそこに泉屋博古館東京が見えた。 ここ一帯は住友が運用する泉ガーデンが広がっている。 サントリー美術館や森美術館がある六本木駅の周りは、商業施設で賑わう界隈だ。けれども、1駅離れたこちらは閑静なビジネス街で落ち着いている。どちらかと言えば赤坂界隈に近い立地だ。 神谷町駅・赤坂駅・虎ノ門駅も使えるから利便性が高い。 近くにはホテルオークラやサントリーホールがあり、

温かなコーヒーとともに。豊島区立 熊谷守一美術館

行きつけのバーに行くように、行きつけの美術館があったらなぁ。 そんな憧れのある人に、ぜひ一度訪れてみてほしい場所があります。 東京都・豊島区。池袋のシティな喧騒から離れた、閑静な住宅街の中にその館はあります。 豊島区立 熊谷守一美術館——かつては私設美術館だったものが、現在は区立として運営されています。それでいて、私設美術館らしいコンパクトで温かみのある空間は変わりません。 最寄駅は有楽町線・副都心線の要町駅、または仙川駅。 道中には住宅地のほかに粟嶋神社もあり、落ち着い

自然とともにあり、次世代にも種をまき続ける。山梨県立美術館

豊かな山々の緑がまばゆい、山梨。 自然が溢れ、空気の澄みわたるこの街——山梨県・甲府市を車で走れば、山梨県立美術館の大きな敷地が見えてくる。 1978年の開館以来、「ミレーの美術館」として親しまれてきた場所。 現在では約1万点の絵画や彫刻を所蔵し、ジャンルはバルビゾン派の西洋画から、山梨にゆかりのある日本近現代美術の作品までさまざま。 コレクションは19世紀フランスの画家であるジャン=フランソワ・ミレーの作品が中心で、知る人も多い《落ち穂拾い》シリーズをはじめ、美術館のロ

現代陶芸を発信するミュージアム。菊池寛実記念 智美術館

陶芸、と聞いて思い浮かぶイメージは? 日々の暮らしで使う食器や、職人がろくろを回している様子を想像するでしょうか。 では、“陶芸”が普遍的なイメージを超越して現代アートとして可能性を広げた先には、どのような世界が広がっているのでしょう。 現代陶芸をはじめ多様な工芸の魅力を発信し、素敵な作品やアーティストを紹介するミュージアムが菊池寛実記念 智美術館(きくちかんじつきねん ともびじゅつかん)です。 地下鉄の六本木一丁目駅のほか、神谷町駅・虎ノ門ヒルズ駅・溜池山王駅など複数

美術を愛した創立者、思いは未来へ繋がって。松岡美術館

港区の中でもひときわ閑静で、通りにもエレガントな気品が溢れる街。白金台、その落ち着いた界隈に建つのが松岡美術館です。 地下鉄「白金台」駅から広がる瀟洒な街並み。外苑西通りと交錯する目黒通り沿いには東京都庭園美術館もあります。 松岡美術館は、松岡清次郎による私立の美術館。「松岡商店」を経営していた実業家の清次郎は若い頃から美術に親しんでいましたが、晩年になって本格的な蒐集に励むようになり、80歳のときに一念発起して美術館の創立を目指します。手元に集めたコレクション数は1,8

日本で最大級のアートコレクションはまさに圧倒的。東京国立近代美術館

国立、というだけあってその規模感は圧巻。 東京都・千代田区の竹橋駅を出たらすぐそこ。オフィスビルの立ち並ぶ都心にありながら、皇居周辺の豊かな水と緑を感じられる。お天気の良い日にはランニングをしたくなるような、のどかな開放感に溢れている。 東京国立近代美術館は昭和27年に誕生した日本で最初の国立美術館で、重要文化財を含む13,000点超のコレクションは国内最大級。所蔵作品展の「MOMATコレクション」では日本画、洋画、彫刻、写真、映像などさまざまで多彩な作品に触れながら、日

レトロな味わいに親しもう。東京都美術館

——公園の自然景の中に、レンガ色の建物を見つけて。 都立美術館の一つである東京都美術館は、東京都・台東区の上野恩賜公園内にある。 上野公園はパンダが有名な「上野動物園」や桜の名所でも知られ、市民から広く愛される憩いの場と言えよう。設立は大正15年と古く、日本で最初の公立美術館でもある。比較的規模の大きな美術館だ。 広々としたロビーは老舗美術館ならではのどっしりとした構え。ラックには同じ上野公園内の美術館を中心に、たくさんのフライヤーが並んでいる。チケットを用意したら、入場