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古民家にて

あなたは机の埃をなぞりながら
少しお話をはじめました。

わたしはその内容にあまり
興味がございませんでした。
そんなことよりも
冬の水面のようなあなたの瞳を
マリアのようにアルカイックなスマイルで
眺めることに精を尽くしました。

主人を失ったこの古い家には
人間が動いた記憶だけが渦をまいて
とどまっているようにも思えます。
その中心であなたは
銀河のようにその渦を吸収して立っている。
そんな風に思ってらっしゃるのでしょう。

わたしは適当に相槌をうつと
どこか暖かい場所へ行きたいと言いました。
電気の通らないこの家には
冬が無神経な侵入を続けています。

あなたも適当に相槌をうって
ポケットから車のキーを取り出し
くるりと一回、人差し指で回しました。

/ルリニコクみみみ



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