家族をひらく「実家2.0」 #myhome
2023年、建築家の友人(Aki Hamada Architects)と、東京に小さな家を建てました。私にとってとても豊かな経験だったので、家づくりの記録を記しておこうと、久しぶりにnoteを開きました。
中古マンションを探していたところから建築家と家をつくるに至った過程から辿っていきたいのだけど、フォトグラファー・長谷川健太さんの写真とともに、ルームツアー的にまずは我が家をご案内します。
我が家のコンセプトは「実家2.0」。私は愛知、夫は愛媛の実家になんだかんだ今も支えられているのですが、東京に暮らす核家族として、自分たちが生まれ育った実家観をアップデートしながら「娘がいつでも安心して帰ってこられる実家をつくりたい」という想いがベースにあります。その辺りのことはこちらのコラムに綴っています。
「実家2.0」ということで、日本の民家のエレメントが散りばめられている我が家。新築なのにどこか古民家のような懐かしさが漂っています。
三角屋根、大きな窓がある外観
“家族をひらく、街にひらく”という意思を持って、前面に大きな窓をつけました。実際にこの窓から外で隣のおじいさんが自転車で転んでいるのに気づいて飛び出したことも。娘は近所のお兄ちゃんが前の私道で遊んでいるのを見つけると外へ駆け出していきます。地域とつながる窓。友人が来てくれたときは、玄関で見送ったあとに娘が「うえみてね」と声をかけ、この窓から家族で姿が見えなくなるまで手を振っています。
小さな家、屋根は三角に。家づくりにはいろんな法律が絡んできますが、傾斜制限に合わせることなく、三角屋根の家にしたかったんです。
外壁はジョリパットという素材の水墨色に。ショウルームで珍しく?夫婦共に一目惚れ。濃淡のある豊かな色彩を職人さん表現してくれました。光の加減でも表情が変わって美しいです。
土間にある、わたしの仕事場
玄関を開けると、そこは土間。わたしの仕事場です。本棚は、軒先で商売をしてた時代の“見世(見せ棚)”をイメージ。編集執筆業なのでお客さんは来ないのだけれど。基本家で仕事をしているので、土間に降りることで出社のような気分の切り替えにも。周囲も静かなので、仕事も捗ります。
寒さを心配していたけれど、しっかり断熱しているので石油ストーブ一つで寒くないどころかぽかぽか。娘なんて2月に半袖で過ごしていたくらい。土間で石油ストーブを囲んで、干し芋やお餅を焼くのも寒い季節のお楽しみです。
大黒柱を真ん中に、つながるLDK
「家族と友人と、季節の食卓を囲みたい」という願いが上位にあったので、1階は人が集まる開放的な空間に。我が家を貫く大黒柱を真ん中に田の字型の平面で、仕事場(土間玄関)、キッチン、ダイニング、リビングがゆるやかに仕切られつつも、一つの空間として存在しています。ぐるっと一周!
天井は3500 mを超える高さに。太い梁、おおらかな木目に漂う実家感。格子天井は吹き抜けのように光を通し風を循環させてくれます。キッチンとリビングはウッドデッキに面していて、やわらかな光が差し込みます。
キッチンは愛用してきた古道具の食器棚に高さと幅を合わせたステンレスのアイランドに。食器や調理道具に合わせて高さを調整した引き出し収納とグリーンオリーブ色のタイルがお気に入り。
ダイニングにある床の間のようなスペースは、収納もできて人が集まるときにはベンチに、調光して子どものたちのステージにも。誕生日やクリスマスなどイベントごとの飾り付けにもちょうどいい。
リビングにある押し入れを想起させる奥が深い棚は収納力抜群。娘の絵を目隠しにしています。
奈良吉野桧・錆丸太の大黒柱
我が家の中心を貫く大黒柱は、奈良で偶然見つかった吉野桧の錆丸太。皮を剥ぎ山の中で寝かせて天然の錆(カビ)でつくるその柄は、娘が0歳から共にする贈り物の人形オオサンショウオ(京都水族館出身)と重なって(笑)、家に馴染む想像ができてなかったけど、今ではこの錆丸太以外考えられないほど。文字通り大黒柱として我が家を支え、物言わぬ他者として見守ってくれているような安心感があるのです。
背割れは、東京のこの家と私の愛知の実家と夫の愛媛の実家を三角で結んだ方位を向いている……!こういうディテールに宿る物語性も建築家と家をつくる醍醐味だなあと思います。自分たちでは絶対に思いつかない。
娘はしょっちゅうこの木に登って天井まで!子どもたちの遊び場となり体感も鍛えられるという副産物も?
曲線がうつくしい、光が漏れる階段
大きな窓に面する光が漏れる箱階段。職人さんの技が光る手すりも美しい。小さな子どもは大人と手をつないで登り降り、大きな子どもは隙間から足を垂らして、溜まり場のようになることも。
途中の窓枠は、花と緑を愛でる場所にしたいなあと少しずつ育てています。設計段階で、家の広さを確保するために外階段案(!)もあったことを思い出す。延べ床76平米ほどの小さな家だけど家族3人にはちょうどいい広さだし、この階段のおかげで1階と2階の距離が近く暮らしやすいです。
オープンスペース、ときどき客間
階段を上がって2階へ。普段はオープンスペース、扉を閉めれば客間になる小さな部屋。友人が泊まりにくるときは、ここを使ってもらいます。窓側の奥深い飾り棚はこれから育てていきたいです。
屋根裏のような娘の小さな部屋
対面には屋根裏のような娘の部屋。秘密基地感があるのか、大人が1階で乾杯おしゃべりしている間、子どもたちはこの部屋にこもって(いや、2階全体で)遊んでいます。扉を閉めても声が聞こえるので安心です。
こだわりの三角屋根は中から見るとこんな感じ。大黒柱を芯に伸びる太めの梁と天井。格子の廊下の先の窓から吹き抜ける風と光。階段を上がるときに見えるこの景色がたまらなく好きです。
抜ける空が見える、ミニマルな寝室
クローゼットとベットが入るだけのミニマルな寝室。土地を買うときに惚れた、抜ける空と生い茂る緑が眺められる窓際にあります。春には桜が咲き秋には枇杷がなり、犬が駆け回り鳥が囀る人様の庭の景色をお裾分けしてもらています。
堤有希さんのテキスタイルでつくってもらったカーテン。風に揺らめく姿、ひらひらと床に映る光と影にうっとりしています。
導線つながる、コンパクトな水回り
お風呂、トイレ、洗面、洗濯場の水回りは2階にコンパクトにまとまっています。窓側に面するお風呂は、寝室直結。
寝室直結のガラス戸だけど、扉を閉めて鍵をかければ密室になります。実家感のあるすりガラスの扉がお気に入り。心身の疲れをほどく好きな場所。
夜はお風呂に入って髪を乾かして、歯を磨いてトイレにいって寝室へ。朝は目覚めてからトイレと洗面へ。洗濯物もバルコニーに干せるので、暮らしの導線はスムーズです。
家族をひらいて育む「実家2.0」
設計にかかった期間は1年ほど(土地探しと施工を含めると2年以上)。家づくりのはじまりは、この家でどんな1日を重ねたいか、「暮らしの情景」を綴った文章を建築家に託したことでした。
勢いで書いたわたしはすっかり忘れていたけれど、建築家の友人は設計中に何度もその暮らしが叶うか、立ち返って考えてくれたそう。家が完成して、暮らし始めてからも、読み返してみると、あのとき思い描いた暮らしがかたちになっていて、見たい景色が見えていて、驚きます。たとえば、文章の最後にメモのように書いていた言葉。まさにそんな家になっているなあと思います。
この家は、数年前のnoteに散々綴ってきたように、東京で暮らす核家族、ワンオペ育児に音を上げていたわたしの働き方・暮らし方・家族のかたちの模索の延長線上にあります。家族をひらき、娘の実家を育む「実家2.0」プロジェクトの実験の場。暮らし始めて1年以上が経ち、願いと意志を込めた家が「もの」として在ることで、中にいる自分たちの暮らしや心持ちがゆるやかに変化し、関係性が育まれていくことを実感しています。そのことはまた、じっくり書いていきます。
*愛読している媒体でも取り上げてもらいました!
●雑誌『暮らしのまんなか』/天然生活web
●Dolive
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