第28回 “田園回帰”の経済性:農村での生活が生み出す価値とは?

2019.07.19
立見淳哉
大阪市立大学経営学研究科准教授


概要
都市住民が農村に関心を持ち、農村に移住・定住する動きは“田園回帰”と呼ばれ、大きなトレンドとなりました。
これまでの生活基盤に加え、農村だからこそ感じられる豊かな自然、人々のコミュニティが、農村部の魅力を引き上げる資源となっています。
しかしその一方で、そういった自然を維持するための「むら」の現実が問題視されることもあります。
そこで今回は、“田園回帰”を担う農村がどのような経済理論で成り立つのかをお話いただき、
その上で、農村で暮らす魅力や課題について意見を出し合い、今後の“田園回帰”に求められるものにアプローチしていきたいと思います。
講師を務めて頂く立見先生は、実際に丹波篠山市に住まわれ、農村と都市との連携がどのような経済性を持つのかを実証しようとされています。
そこで今回は、「田園回帰」の視点から、今後の農村のあり方を考えることとしました。


「田園回帰」は,「田舎暮らし」や「自然に囲まれた落ち着きある生活」といったイメージかもしれません.

都市部での生活は確かに便利ですが,農村部にはまた別の魅力があり,その魅力に吸い寄せられるように移住・定住される方が一定数,見られるようになっている昨今ですが,そこには農村部にある現実が突きつけられることもあるようです.

そもそも,田園回帰はどのような理論で成り立っているのか…
「便利」が追求されてきた都市部での生活は経済的にもうまく循環しているようですが,農村部は農村部で,「便利」とは違う経済循環があり,それが「田園回帰」を生む魅力になっているのかもしれません.

そこでまず,「田園回帰」の経済を,立見さんに理論的に説明していただきました.

農村部の中にも人が集まっているところがあり,そこを中心に人が集まってくることで,経済循環が生まれるようになります.
つまり,中心地は人が集まってくることで,より中心地として「便利」になり,都市的な発展を遂げながら,人が移住・定住するようになります.
この一方で,そのような中心地の周辺にある農村部にも,一定の移住・定住者が見られます.

これら2つの移住・定住パターンを同じ「田園回帰」とまとめることができるのかどうかについてもお話いただきました.

このような理論的な背景をベースに,丹波篠山市の各地域で移住・定住される方々にとっての魅力は何なのか,また,どのようにしたら移住・定住者が増えるのか,なぜ移住・定住者が増えないのか,といったことを参加されたみなさんで話し合いました.


このような話し合いの中で,「移住」「定住」と「引っ越し」の違いは何か,といった話題にも触れられ,「田園回帰」にどうかかわってくかについても話が進んでいました.

立見さんは,今後も丹波篠山市をフィールドの一つとして,研究活動をされるとのこと.
継続的に,いろいろと関わり合いながら,「田園回帰」の神髄を明らかにしていきたいと思います.

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