第29回 ため池の新たなエネルギー活用の可能性 -エネルギーの作り方と使い方とは?-

2019.08.19
井筒耕平
(株)sonnraku 代表


概要
東播磨には,多くのため池が存在します。ため池はそもそも農業用水を確保するために人の手によって作られてきたものですが,今日においては,農業の衰退とともに活用されなくなる傾向にあります。
 そこで東播磨フィールドステーションでは,ため池の新たな活用の方向性を探っています。今回のるーらんでは,エネルギーをテーマに,ため池の活用のあり方について考えました。
 講師の井筒耕平さんは,樹木などの有機物を原料にしたバイオマスによるエネルギーの供給やコンサルティング,ゲストハウスの経営など多方面で活動されております。また2019年4月からは,東播磨フィールドステーションのスタッフとして活動されています。
 そんな井筒さんに,ため池のエネルギー活用に関する実態の報告をしてもらったうえで,今後の新たなエネルギーの生み出し方と使い方について,参加者のみなさんと話し合いました。


0. ため池カレー
今回のRLNではため池カレーが参加者のみなさんに振る舞われました。
丸いお皿の周りに池の堤体をイメージしてご飯を盛り付け、その中に水に見立てたカレーを流し込みます。そして最後は太陽光パネルとなる海苔をのせて出来上がり!
見た目の完成度はともかく味には満足していただけたようで良かったです。

1.井筒さんのお話
・日本のエネルギー問題の現状(固定価格買取制度)
・東播磨におけるため池のエネルギー活用の可能性
ため池ソーラー事業,バイオマス発電,水力発電の現状と可能性
・岡山県西粟倉村での活動内容

についてお話していただきました。

ため池ソーラー(フロート式)は,稲美町で多く設置されており,業者やため池所有者,行政などにおこなったヒアリング調査の結果を報告して頂きました。その結果,各アクターにとってメリットが大きく,ため池と太陽光パネルの親和性が高いということがわかりました。

ため池所有者にとっては,賃貸料が入る,設置事業者にとっては,
初期費用が低く抑えられる(山などに設置する場合と比べて),
発電事業者にとっては,節税,ESG投資やRE100対応になる,
行政にとっては,税収アップになる,など。

また,ため池ソーラーの特性として,発電効率が高い(影がない,温度上昇抑制),管理コストが低い(草刈りなどしなくて良い),アオコの発生の抑制や水質向上(影ができることで水の循環がおきる)などがあるという話もあるそうです。

ただし,作られたエネルギーを地域のために使うことができていないなど,近隣の住民にとってのメリットはないどころか,景観の問題,光害を受けるといった側面もあること,また野鳥を含め生態系への影響は検証されていないなどの話もあるとのこと。

そこで,住民から出資してもらう,作られたエネルギーを地域で使うなど,住民を巻き込んだ形でのエネルギー活用のありかたや,生態系への影響を検証する必要性についての話がなされました。

また、西粟倉村のお話も興味深いものでした。西粟倉村は,100年の森構想ローカルベンチャー創造といったビジョンを掲げており,実際,2016〜2018年の3年間で18社が起業しているそうです。

このように次々と起業家が生まれている背景には,「地域資源を活用する」,「合意形成をとる」,「地域に定住しなければなならない」といった,一種の「あたりまえ」に「こだわらない」,
そして「結果を出す(儲ける)」ことを重視する気運があるとのことです。

このような気運は,「おもしろい人がおもしろい人を呼んでくる」といった連鎖にも繋がっているように思います。

2.グループ対話
参加者で3・4人のグループを作り、井筒さんの話を受けての感想や意見などを1人1分間話しました。
今回のルーランでは地域の方、水利関係者、行政の方、エネルギー事業をされている方、大学関係者といった様々な方が参加していただいたのですが、それぞれが自分の思いを伝えあいました。熱気に満ちたとても熱い時間でした。

その後井筒さんにグループからの質問タイム。
「実際本当にため池ソーラーは儲かってるの?」
「住民を巻き込むにはどうしたらいいの?」
「光害を受ける人達に対してどのように対応していけばいいのか?」

などグループ対話での熱量をそのまま井筒さんにぶつけ、答えてもらいました。


3.まとめ
「じゃあ今度一緒に,○○してみましょう」といった様に,次のステップにつながる話が出てきたことがよかったです。

皆さんがエネルギー問題に当事者意識を持って参加されていたのがとても印象的でした。これから参加者の方が少しずつ前に進んでいくきっかけになるルーランになったのかなと思います。

 また「エネルギーはあくまでも手段」という井筒さんの言葉が印象的でした。

地域経営をどうしていくか,その一つの手段が,ため池を活用したエネルギーであるということを念頭においた活動を実践していければと思います。

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