第27回 EBPMとGIS:何を“見える化”して政策に繋げるか?

2019.03.08
丹羽英之
京都学園大学/篠山市農都環境アドバイザー


概要
EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)とは,証拠(エビデンス)に基づいて政策立案をしていくこと。IT技術の発展により,地域に関する様々な情報が手に入るようになった今,場当たり的なく,明確な目標を立てて政策を立案するための手法として注目されています。
また,一方で,GIS(地理情報システム)の発展もめざましいものがあり,自然情報から社会情報まで多くの地域情報が,地図上で「見える化」されつつあります。
このように有効な手法や手順として注目されてはいるのですが,EBPM,GIS,,と横文字が並ぶように,何か難しいイメージがあるかもしれませんし,実際どのように使えるか,よく分からないところもあると思います。
そこで,今回は,実際にGISでの分析をどのように政策立案に活かせるのかについて,お二人のゲストの方にお話をいただき,基礎的な理解を深めようと思います。
また,その上で,地域の課題解決や活動計画づくり,政策立案などを進めるにあたって,どのようなことが分かれば助かるのか/予測できれば助かるのか,について意見を出し合い,今後の地域情報分析のテーマ(目標)としてまとめたいと思います。


IT技術の進展は,都市圏のみに情報が集中する構造から,どこにいても様々な情報が入手できる構造へと,社会を変化させました.
このことは,都市圏のみならず,地域でも情報を駆使し,自ら社会を構築していく必要性を高めていると言えそうです.

このような状況の変化から,政策立案の場面では,”EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)”という言葉が注目されるようになっています.
経験と勘に頼るのではなく,きちんとした証拠を集め,論理的に明確かつ実行可能な目標を立案していくことが求められています.
その証拠を集め,解析する手法として注目されているのが”GIS(地理情報システム)”です.

大事だとは分かりつつも,”EBPM”も”GIS”も,どちらも聞きなれない,耳になじみにくい言葉であることも確かです.

そこで今回は,まずそれぞれの言葉の意味を理解した上で,どのように活用できるかを考えていくことにしました.

まずは,神戸大学・篠山市農村イノベーションラボで事務局長を務める谷川智穂さんより,GISがどのような技術なのか,どこで活用されているのかの説明をしてもらいました.

多くの情報は土地に依存しています.
例えば,空き家の情報などが思い浮かびます.それらの情報を土地に紐づけ,年代ごとに見ることで,人々の暮らしの変化,ひいては経済循環の変化が読み取れるようになったりします.
このような土地が持つ情報の活用の仕方や,分析した結果の例を見ることで,GISという言葉がとても身近に感じられるようになりました.

続いて,京都学園大学で研究されながら,篠山市の農都環境アドバイザーも歴任されている丹羽英之さんから,篠山市がどのようにGISを活用してきたのか,また,そのGISの活用結果がどのように政策や市の事業に影響を与えてきたのかを説明していただきました.

GISを使って細かにデータを積み上げることで,特定の土地で起こっているであろう変化を読み解くことができるようになること,またそのような結果を基に,通常であれば事業運営上では気にされないような事柄も,実は重要な意味を持つことが分かるようになることに気付きました.

このような実践に基づき,より深くGISとEBPMへの理解を深めた上で,グループに分かれ,どのようなデータを集めればより良い事業運営につながるかや,事業として推進するために必要なデータは何か,といったことを話し合いました.


移住や定住している人がどこからやってくるのかや,農家の幸せ度合いがどれくらい変化しているのかを調べてみよう,といった意見が出るなど,みなさまそれぞれが今,担われている事業をベースに考えられ,データの大切さ・データを基に政策を立案する難しさを感じられたようでした.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?