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名作映画を見直す【6】私を野球につれてって

いまだ今年は始まらないメジャーリーグ。その試合中に流れる「Take Me Out to the Ball Game」をテーマにした野球ミュージカル。1949年 バスビー・バークレイ監督 主演 フランクシナトラ、ジーンケリー

この映画、日本では劇場未公開である。野球ものなら客も入れられると思うのだが、何故に興業に引っ掛からなかったかは、少し不思議である。この映画の題名から、後の日本映画「私をスキーに連れてって」ができたのは、言うまでもない。

主演の二人が、野球チーム「ウルブズ」のレギュラー選手であり、ショーもこなす人気者という、無理な作り。まあ、ミュージカルに仕立てる技ではある。そして、チームのオーナーが変わり、若い女性(エスター・ウィリアムス)になる。チームのファンの女(ベティ・ギャレット)も巻き込み、恋物語も含めたエンターテインメント。ラストは、4人で踊って終わる、MGMミュージカルらしい1編である。

見所は、シナトラとケリーのダンスだろう。野球シーンは、お遊びシーンであり、描き方も面白味はあまりない。二人で踊るシーンは安心して見ていられる。そして、元競泳選手であるエスター・ウィリアムスの水着で泳ぐシーンも、見せ場になっている。この人、1940年の東京オリンピックの代表になりそうな人だったそうな。古い話である。

そして、この役が最初にジュディ・ガーランドのはずだったのが、彼女の薬物乱用でおろされたらしい。この間、書いた「イースター・パレード」が1948年公開だから、もう彼女的にはかなり荒れた時代だったのでしょうね。

映画の見所は、途中のチームが優勝の前に行われるパーティーシーンだろう。スタジオに多くのダンサーを集め、長いダンスシーンが続く。ミュージカルを見ているという実感がわく感じがいいし、様々な役者が次々に踊る姿をうまくカメラが追っている。スタンダードサイズで行われるカメラワークは、今でも映画を撮る際のお手本になる。とにかく、舞台撮影などを行う方はMGMのミュージカルは必見である。いろいろヒントがあります。とはいえ、メリハリが今ひとつの感じはする。

野球シーンで面白いのは、外野席がないので、外野のフェンス前でファンが立ち見しているということだ。メジャーもそれくらい、ファンと選手は近かったのでしょうな。これ、メジャーの話とは言っていないですけどもね。

最初にエスター・ウィリアムスがオーナーとしてやってきて、練習を見にくるときに、打撃のアドバイスをしたり、ボールを投げ返す姿があるが、彼女は流石に運動神経がよかったことがよくわかる。身長も大きかったことから、ジーン・ケリーが共演を嫌がったというのもわかる気がする。そのくらい、目立つ人だ。

話の結末は、野球賭博で儲けようとした金持ちが、ジーンケリーを出場させないようにするが、最後には、彼がさよならホームランでチームを優勝に導くという、ハッピー・エンド。恋模様も結実して、明るい映画である。

陰鬱な日々が続く世界であるが、笑顔の多い映画を観ることは大切である。そして、あまり、頭を使わないライトな映画は心を簡単に優しくさせる。また、この多くの人の親しまれる主題歌は、本当に名曲だと感じさせる一作である。


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