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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【25】アイドル路線の混迷とSM路線の役者不足と…。「桃尻同級生まちぶせ」「奴隷契約書」

1982年3月20日、高田馬場東映パラスで「桃尻同級生まちぶせ」「奴隷契約書」「女の穴場・三度目の絶頂」の3本立てを見る。しかし、この頃は私も春休みであることもあったのだろうが、3日に一度くらい2本立て3本立てを観ている。ネットもない時代ではあるが、よくこれだけ映像を吸収しようとしていたものだったと感心する。テレビもそれなりに観ていたとは思うのだが、やはり、映画に魅せられていた日々だったのだろう。その中で、ロマンポルノは異次元への遭遇であり、かなり刺激にはなっていた。

「桃尻同級生 まちぶせ」(小原宏裕監督)

寺島まゆみ主演、共演は太田あやこということで、スキャンティーズの北原リエがいない形のアイドルポルノ。話としては三人組の話だから、多分スキャンティーズでの企画なのではないのか?と思う。北原の代わりに高原リカが入っている。

ということで、スキャンティーズという企画は三人揃った映画は一本切りとなり、結果的にはにっかつの目論見はずれに終わった。北原がロマンポルノ引退後に作家転身したときには、その存在がまた語られた気はするが…。

舞台は大阪心斎橋、それぞれに風俗バイトをしている三人組のコメディポルノだが、内容はあまり覚えていない。寺島の妹役に森村陽子。なかなか可愛い女優さんでした。そう、この時期は定期的に可愛いアイドル的な女優さんが投入されたロマンポルノである。そういう意味では、やはり寺島まゆみが、一つの色を変えたという感じはする。この映画、男優陣も、上野淳、砂塚秀夫、伊沢一郎と結構豪華。小原監督の作品なので、「桃尻娘」的なテイストだったような気はする。脚本が「ガキ帝国」の西岡琢也なので、もう一回見直して見たい気はする一本だ。

「奴隷契約書」(小沼勝監督)

松川ナミ、デビュー作。マゾヒストの女が奴隷として売られるという異次元なSMポルノ。にっかつのSM映画は、ピンク映画のそれとは違い、色鮮やかな縄が女優の身体にまとわりつく感じがエロチックだった。そして、小沼勝と藤井克彦のそれは、耽美的というテイストを守り続けていて、まあ、今ではこういう作品は撮られることもないし、撮れる人もいないだろうという作品群だったと言っても良い。そう、変態を描くにも美学があった。そして、ここでの主人公の名前も松川ナミ。麻吹淳子の後を継いでSM映画のスターとしてにっかつが放った女優だ。だが、谷ナオミや麻吹淳子のように豊満な体ではなく、どちらかといえばスレンダー。そういう意味ではSMファンに対してはどう映ったのであろうか?あくまでもSMといえば谷ナオミ以上の女優はロマンポルノには現れなかったというのが事実だが、作品的には最後まで作られ続けた。ある意味、こういう作品が異次元な変態の発散場所になっていたことも事実だろう。そう、松川ナミといえば、後年「縄と乳房」という傑作に出ていることは忘れてはならない。そして、森田芳光監督「メインテーマ」にも顔を出している。そういう女優さんです。

「女の穴場・三度目の絶頂」(渡辺護監督)

この映画、ピンク買取作品で内容は覚えていないが、安西エリが主演の映画である。ロマンポルノに出る前にテスト的に買取作品に出ることは多いが、ある程度のキャリアを積んでから買取に出ることは珍しい。まあ、にっかつもロマンポルノも試行錯誤が始まる予感がしてきたという感じだったのだろう。まだAVが動き出すには早い時期だが、ビニール本、裏本が商売になっていた時代である。


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