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「あの頃、文芸坐で」【69】野村孝監督オールナイト「夜霧のブルース」「拳銃は俺のパスポート」という二作品との出会い

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1982年3月13日、文芸坐オールナイト、野村孝監督の5本立て。と言っても、最後にかかった「ネオン警察 女は夜の匂い」は観ないでで帰ったらしい。何故かは全く覚えていない。まあ、映画自体も見た覚えがないので帰ったのだろう。昨日も書いたが、日活アクションを文芸坐の大画面で観ることはかなり嬉しい体験であった。今、名画座とかミニシアターとかいうところは、画面サイズが大きいとことがないが、当時の文芸坐の画面は低価格映画館にしたら大きかった。そう、映画を観た気にさせるスクリーンだったと言っていい。だから、その画面に裕次郎や旭が動く姿が大きく映し出されるのを観るのは、遅れてきた日活アクションファンから言ったら至福だった。

で、まずこの頃の私は、2日に新宿ミラノ座で「Uボート」をみた。閉所恐怖症の人は見られない映画で、それなりに満足。しかし、この頃映画を観た記憶は映画館とともにあるんですよね。これは、今のシネコンではないことですよね。そして、5日に上板東映に、ピンク映画の3本立て「悶えて濡れて(小水一男監督)」「制服処女のいたみ(渡辺護監督)」「日本の私刑(高橋伴明監督)」を見に行っている。美保純のデビュー作をもう一回見たかったのもあったのだろうが、伴明監督映画を見に行った気はする。とはいえ、内容はほとんど覚えていない。そして、この日に繋がります。

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まず、コラムは図書館利用の話。このコラムはインターネットが登場する以前のものだから、状況はかなり変わっていることだろうと思う。本というものを本当に愛してやまないという人も減ってきているのは事実だと思う。ビジュアルのコンテンツも含め、学習することは多岐に及び、本に触れなくてもそれなりの情報を掴める社会だ。だが、この当時の知識を求めて図書館に通うという感触は、特別な面白さはあったような気がする。色々便利になった今、自分が求める知識の答えにたどり着く速さは、それほど変わっていないような気もする。何故なら、ネット内で検索したいものにどれだけ早くリーチをかけられるかは、個々の語彙力が関係するからである。だから、このコラムを読んだときに時代の変化は感じても古臭さは感じなかった。

プログラム、文芸坐は、「初体験特集」の詳細が出ている。「青い体験」は公開時、私も思春期にありラウラ・アントネッリの美貌と身体にはただため息だった。私の思春期のSEXシンボルは、ラウラとクリスチーナ・リンドバーグだったと思う。あと、イスラエル映画の「グローング・アップ」も懐かしいですよね。もう一回見てみたい1本。そして、こういう映画は、イタリアかフランスが多い。今も作られているなら、輸入していただきたいものだ。今の時代のその世界を見てみたい気がする。

文芸地下は、宮崎駿特集の後は、角川映画二本立て。だが、映画館がつけたタイトルは「薬師丸ひろ子フェア」。少しずれているが、それでの動員を狙っていたんだろうね。オールナイトは、「橋浦方人/長谷川和彦」に続いて「羽仁進」当時は、左幸子と娘の未央さんと一緒によくテレビに出てましたよね。今の人は名前も知らないかもですね。こういうところに時の流れを感じます。

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そして、この日観た4本に関して

「夜霧のブルース」

この頃、まだ私は日活アクションが好きであったものの、その大枠を理解していなかった。そして、裕次郎の映画に関しても知らないものが多かった。この作品も、何の知識のないまま見た。突然、ヤクザの事務所に入ってきて文句を言う裕次郎。そして、映画の中で過去の経緯が絶妙な感じに語られる。やくざだった裕次郎が必死に気質になって、愛する女、浅丘ルリ子と新しい生活を始めようとしたが、ある事故によって彼女を死なせてしまう。事故を追って、ファーストシーンに行き着いたという話だ。裕次郎と浅丘の出会いの長崎の教会のシーンが印象的。いわゆる、ムードアクションと呼ばれる1本なのだが、私の好きな裕次郎映画の1本である。そう、この初回に観た時に心奪われた。まあ、テレビで観てなかったのがよかったのかもしれない。というか、この頃の浅丘ルリ子は本当に美しい。

「無頼無法の徒 さぶ」

山本周五郎原作の時代劇。題名にあるさぶとは主演の小林旭ではなく、それに嫉妬して彼の人生を滅茶苦茶にした男、長門裕之である。いわゆる、男の嫉妬の物語であり、私的にはあまり好きな話ではないのだが、今に至るまで、ドラマ化されたり、多くの人が知っている話だ。映画的には、少し退屈な感じがした。日活に時代劇は似合わないんですよね…。

「拳銃は俺のパスポート」

これは、ずーっと観たかった宍戸錠の一本。この日、初めて観て、宍戸錠の渋さ格好良さにただ酔う。脇の相棒のジェリー藤夫もとても印象的であった。そして、ヒロインは日活の女優でなく、小林千登勢が使われているところで、ちょっと違う色のアクション映画の完成と言えるのだろう。考えたら、この間、ジェリーさんが亡くなったことで、主役三人とも鬼籍になったわけでありますが、この映画は永遠に残って欲しいと思います。宍戸錠のハードボイルド映画の最骨頂と言っていいと思う。最後の一人で敵と戦う錠の姿に、ただただ圧倒される。こういう日本映画もあったんだぞ!といわれているような感じであった。日活アクションが好きなら、絶対に見なければいけない1本である。

「昭和やくざ系図・長崎の顔」

渡哲也主演作品。長崎を舞台にした任侠映画?この頃は、日活もニューアクションとの端境期で、不思議な映画が出来上がっていた。東映任侠映画の影響もあったのだろう。銃で撃ち合うより、ドスで切り合う世界に変わる。あまり、筋は覚えていないが、渡が刑務所から出てきて3代目を継ぐ話。どちらかといえば、古臭い感じの任侠映画だったらしい。私的には、内山田洋とクールファイブが「長崎は今日も雨だった」を歌っていたシーンは印象的に覚えている。

こう観ていくと、野村孝監督というのは、結構、傑作を残していることがわかる。晩年はテレビの2時間ドラマを結構演出していた記憶があるが、良い作品が残っていることで、今後も再評価されることもあるでしょうね。

この日、なんで5本目を観なかったかは、少し謎なのだが、誰かにあって外に出たのかもしれない?と少し思い出してきた…。



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