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「あの頃、文芸坐で」【70】外国映画史上ベストワン作品を見た日「天井桟敷の人々」「ネオ・ファンタジア」

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文芸坐.001

1982年3月16日、文芸坐で「天井桟敷の人々」と「ネオファンタジア」の二本立てを見る。この前日には新宿ビレッジ2でロバート・デニーロ主演の「告白」を観る。ロバート・デ・ニーロとロバート・デュバル主演のサスペンスだが、内容は全く記憶にない。この頃、映画を話す人が多くなっていたので、洋画も観なければと色々見ているのだが、あまりピンときた作品は少なかった。それでも、この日はキネ旬で外国映画史上ベストワンに選ばれた作品を見ることができるのでそれなりに楽しみだったと思う。

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まずは、プログラムから。コラムは「書く事と語る事」。当時、映画を語る事というのは、映画ファンにとってはとても大事な事だったと思う。ある意味、文章として雑誌に残るようなものは、プロのものであり、映画ファンの呟くようなことが多くのその他のファンに開示されるようなことはなかったのだから。だから、自分の文章が、「キネマ旬報」や「シナリオ」などに出たときは嬉しかった。そう、そのくらい、映画雑誌というものも必要だったということだろう。語ることに話を戻せば、それにより喧嘩もよく起こっていたというのが現実。「たかが映画」に何をムキになっていたのかよくわからん。そして、最近はインターネット上では私を含め多くの人が映画を見た後の勝手な感想を綴ってる。そして、こうも映画の見方というものに方向性の違いがあるのかと思ったりもする。映画というものは、公開されれば、みんなが勝手に解釈していいものだ。だから、「あなたの見方は違いますよ」なんてものはない。そして、その違いを楽しめるようになった私であったりするのだ。

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そしてプログラム。文芸坐青春画集PART1とした、エッチな思春期映画特集の後は「ジェラシー」と「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の二本立て。文芸地下は角川二本立ての後「色情女狩り」と「ガキ帝国」の井筒和幸監督二本立て。タイトルに「監督協会新人奨励賞受賞記念」とある。まだ、井筒監督が新人だった頃です。そして、彼の映画の中でやはり私が一番好きなのは「ガキ帝国」です。オールナイトは、羽仁進特集の後、長谷部安春特集。この当時、日活アクションが掛かるときはなるだけ行くようにしていたので、ここも出かけているので、その話は後日。ル・ピリエの演目に、薔薇座の公演がある。今は亡き野沢那智の劇団だ。その名前を見て懐かしさが込み上げてきた。

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そして、この日観た作品。まず「ネオ・ファンタジア」。イタリアのアニメである。ディズニーのファンタジアと同様に音楽のイメージアニメである。あまり内容は覚えていないが、ポスターにもなった猫の絵のイメージは印象的だった。そして、当時、アニメに関してはそれほど真面目に観ていなかったことは確かだ。

そして「天井桟敷の人々」キネ旬が洋画史上ベストワンなどという肩書きをつけたことで、どんなに面白い映画なのか?と思ったが、結果的には少し眠たい恋愛劇という印象だったことは覚えている。何がすごいって、この映画公開が1945年。戦時中に作られていて、終わって公開されたということ。まあ、その時代に見たらすごい映画だったというのはわかる気がする。フランスも日本より数段余裕があったことはよくわかる。ただ、白黒の恋愛劇は登場人物の区別だけでも大変だった。そして、映画全体的に人が多いので頭の中がよくまとまらなかったというところ。そして、あまり見返してみる気にもならない一編だ。映画ってやはりその時代に見るものだということも感じた一本。それは、このデジタル時代に、私が黒澤明が少し古臭く見えてきたのと似たようなところがあったりする。もちろん、古典として映画の基礎がそこにあるのは事実だし、その時代を考えれば、すごいダイナミックにも感じられるのだが、映画というものが、作り方自体もかなり変わってきているわけで、そういう中で史上ベストテンなどというのもあまり意味がないということなのだと思う。

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