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名作映画を見直す【2】「禁じられた遊び」

1952年公開のフランス映画。ルネ・クレマン監督作品。これも、テレビで見たことしかないと思う。ラストの主人公が泣きながら人混みの中を走っていく遠景シーンは印象的に焼きついている。この映画でワンシーン選べと言われたらここしかない。そして、主題曲「愛のロマンス」は、もはや「禁じられた遊び」という曲名で覚えられているが、本来この映画ができる以前からギターの練習曲として引き継がれてきた曲だという。

そう、曲を聴いて「禁じられた遊び」と答える人は多いが、この映画を見ている人は、特に若い人の中にはなかなかいないと思う。モノクロのスタンダードの古臭い映画である。そして、一般的には反戦映画と語る人も多いが、どちらかというと、子供に対し神様を冒涜してはいけないという趣旨の方が大きいように思われる。

映画は、子供と動物を出しておけば、ヒットする的な話は今でもよくするが、これはその典型的なモノでもあるのだろう。当時、主人公を演じるブリジット・フォッセーは5歳だったという。他の田舎の黒い人々とは一線をかくした美しい金髪の少女。映画の中での彼女は、街の垢抜けた娘という匂いをプンプンさせている。そして、最初の親が空襲で撃たれるシーンでは、親よりも犬の方に心を寄せるのは、まだまだ無垢だという設定なのだろう。彼女の存在と主題曲でこの映画は1時間半を見せる映画である。

そう、子沢山の村の一家。そして、隣の家と仲が悪いというよくある設定。ある意味、紋切り的な田舎暮らしの中に、街の娘が放り込まれ、少し年上の男の子と仲良くなる。犬のお墓を作り、木の枝で十字架を作る。この家に来るまで十字架の存在を彼女が知らなかったというのはこの話の大事なところである。彼女は、十字架が神だと言われ、それを美しいと感じたのだろう。そして、ふたりの十字架を盗んでの「葬式ごっこ」が始まる。

その内容自体も、描き方も、今見れば至って凡庸である。ただ、水車小屋に作られる、二人が作った動物達の墓地は、ある意味、美しい。映画自体がカラーであったら、また違う演出もあったシーンのような気がする。

二人がお墓をつくり、十字架を掲げることに特に意味はないだろう。これは、子供がよく作る秘密基地である。そう考えれば、自分の子供時代とシンクロできる。「禁じられた遊び」とは子供達だけがわかる世界なのである。ここに描かれる葬式ごっこは、子供達の無垢の残虐性みたいなものも描きたかったのだろうと思う。だからこそ、ゴキブリを殺すことに怒る少女という矛盾したシーンが生きている感じである。

反戦映画という面では、最初のドイツの空襲シーンはなかなかよくできている。第二次世界大戦のフランスも、日本と似たような場所だったこともよくわかる。ドイツの戦闘機はなかなか憎たらしい感じで描かれている。ドイツといえば、この前観た「ジョジョ・ラビット」の主人公は、この映画の舞台の5年後に10歳だから、この映画の主人公と同じ歳だ!戦争の中の少年少女という題材は、まだネタがありそうなところである。

ブリジット・フォセーは、この映画で世界の心を掴んだ名子役である。歳を考えると、彼女も戦争をしらない子供である。そう、この映画もそんな古い映画でもないのだ。彼女が、「ラ・ブーム」でソフィー・マルソーの母親を演じたのを見たときは、「こんなに大人に」と驚いたが、大人になっても美しい人だった。今も女優として現役なのだろうか?Wikipediaにも近年の仕事は書いていない。

アカデミー賞の名誉賞も獲っている作品であり、映画史上に残る一本ではあるのだが、子役によるところが大きく、そういう意味ではギターの旋律だけが印象に残る一本だ。

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