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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【16】いどあきお、伴一彦、脚本家たちの習作の場でもあったスクリーン「ズームアップ暴行白書」「密猟妻奥のうずき」「肉体保険ベッドでサイン」

ロマンポルノは、基本、スター女優で回すプログラムピクチャーであったが、その内容や質を追ううちに、監督を意識するようになり、脚本家を追うようになるものだった。そういう見方をしていて思うのは、脚本がしっかりできたものは面白いというのが、映画としての基本だということだ。監督の世界観が強く、脚本を本当のたたき台にしかしない場合もあるが、それにしても、監督が脚本をどう直すか?ということに尽きる。

この当時、80年代初頭のロマンポルノをみていて、「いどあきお」という脚本家の名前には惹かれるものがあった。私が最も好きなロマンポルノ作品「㊙︎色情めす市場」や「実録阿部定」「ピンクサロン好色五人女」など、数々の傑作を残した脚本家だ。一般映画の作品がなかったのが残念だが、日本映画で、彼しか描けない世界があった。

この日、1981年11月8日、高田馬場東映パラス。テアトル東京の最期を看取って、約一週間で、次に見たのが、ロマンポルノというのも、落差が激しいが、そんな映画の見方をしていたということである。この日は、前記した、いどあきお脚本の「ズームアップ暴行白書」と「密猟妻奥のうずき」、そして伴一彦脚本の「肉体保険ベッドでサイン」を観たが、当時の評価は標準のロマンポルノ評価のようにあまり芳しくなかった。まあ、脚本がそこそこにできていても監督の腕がイマイチでしっかり映画にできなかったということだろう。

「ズームアップ 暴行白書」(藤井克彦監督)

風祭ゆき主演のレイプもの。監督は当時もベテランの藤井克彦。話はラジオのパーソナリティーの風祭が、夫の怨恨の復讐のためにレイプされる話。あらすじを見直して映画を思い出した。ラジオに「怨み節」がリクエストされてきて、それに続いて暴走族にレイプされる風祭。復讐を指示する女役が平瀬りえ。この人は、にっかつの新人女優コンテストで優勝した人で、これがデビュー。身体はグラマラスだったが、少しきつめの容貌は主役向きではなかった。「怨み節」をフューチャーするところは、いどあきおの脚本らしかったが、それだけだったようだ。

「密猟妻 奥のうずき」(菅野隆監督)

主演、風間舞子の変態映画である。この時は新鋭の菅野監督もSMや猟奇ものが多かったと記憶する。トイレに書かれた性器の落書きを見て自慰行為をするという風間舞子の話である。そして、その落書きのモデルを探すという、いどあきお脚本らしい粘質系な流れだったようだ。そう、このあらすじを読んで、性器の落書きという部分は記憶していた。一緒に変態的な性欲に落ちていく女の役が中川みず穂で、これがデビュー作だ。当時のアイドル路線にはいなかったが、アイドル性のある顔立ちの女優さんだった。名古屋出身で、熱田区に住んでいて、隣の区が中川区と瑞穂区だったので、この芸名がついたという話は、舞台挨拶で繰り返し聞かされた覚えがある。作品としては、設定はなかなか面白いのだが、私自身が風間舞子という人の演技に馴染めなかったため、評価も低かったのだと思われる。

「肉体保険 ベッドでサイン」(白井伸明監督)

こちらは、今もご活躍中の伴一彦脚本によるコメディポルノ。三崎奈美と夏麗子というグラマーな2人が主演ということで、それは楽しめた印象がある。保険勧誘員を身体を張って行う話だが、当時、実際こういうこともあるのかねとも思いながら見ていたが、保険の仕事やってる人でなかなかそんな色っぽい人にであったことはないので、本当にベッドでサインした人がいたら経験談を聴いてみたいものだと思ったりもする。まあ、景気の良い時代の話だなとは思いますけどね。こういう軽いコメディは白井伸明だとか白鳥信一だとか、ベテランの特に質を求めない監督のところにあてがわれることが多く、まあ、面白くはないのが常だったが、当時の伴脚本もなかなか見ていて辛い感じではあった。でも、その習作の末に今があるわけで、才能はあったのでしょうね。

ということで、今回は脚本からみたロマンポルノを振り返ってみたが、結局のところ、監督も脚本も上手くハマった時に傑作になるわけで、とにかく当時のロマンポルノは映画館に通って実際に対峙して取捨選択をしていく映画群だったということですね。

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