「あの頃、文芸坐で」【15】石井隆の世界、初体験「女高生　天使のはらわた」

1980年6月といえば、今からちょうど40年前である。自分では、昨日のように感じる。そして、40年という時間が経っても、未来にいるという感じでもない。大きく変わったのは、携帯電話とインターネットの存在か？世の中、総じて貧乏臭くなっている。と言いながら、ここでは「女高生　天使のはらわた」（曽根中生監督）、「天使の欲望」（関本郁雄監督）を観ている。共に貧乏くさい世界の話である。

＊　　　　　＊　　　　　＊

コラムは「映画をダシに何かを書く」というお話。私も似たようなところがある。だが、ほとんどの場合、その話は通じない。喩えに出す映画がマイナーすぎるからだろう。だいたい、今日の「天使のはらわた」の話にしたって、通じる人はほんの少しである。わかってる。だからこそ、誰も書き留めないからこそここに書く。そして、それを検索する一部の人が楽しめればいいと思っている。インターネットへの書き込みは、自分の記憶を永遠の世界に埋め込むことではないか？そういう意味では、当時の書き捨ててきたようなこういう雑文よりは救いがある。でも、筆者の方は今更、40年前の文章をここに貼られてるとは思わないですよね。（無断でごめんなさい）。

＊　　　　　＊　　　　　＊

文芸坐は「第三の男」なんていうのがかかっていますね。そして、60年代のスティーブ・マックィーンの二本。そう、最近はこういう渋い映画が映画館でかかりにくい時代であり、そういう意味ではいい時代だったなあと今更思うところがあります。

文芸地下はミステリーフェアPART2。最後が「野生の証明」と「多羅尾伴内」というのは、無理やりな感じもします。この多羅尾伴内って小林旭のですよ！そして、また「桃尻娘」をやっていますが、お客さん、入ったのでしょうな！今もう一度、映画館で観たい気はしますね。

オールナイト「日本監督大事典」は小平裕監督、特に優れた作品作れるイメージはありませんでしたが、こう並べられると、プログラムピクチャーの時代には貴重な監督だったという感じですね。小林恒夫監督は、「少年探偵団」や「月光仮面」をかけるあたりは渋い！この中では「点と線」が一番よくかかる映画なのでしょうね。私的には「二・二六事件　脱出」が好きです。

＊　　　　　＊　　　　　＊

で、この時観た映画だが、プログラムにあるように、前記２本の他に今村昌平監督の16mm「凍りついた炎」というのを観ているのだが、全く内容が思い出せない。フィルム残ってるものなのですかね？

「天使の欲望」から！東北から出てきた看護婦姉妹（結城しのぶ、有明祥子）が、なんか汚いおじさんと関係する話であり、刃物が出てきて血が飛ぶ映画なのは覚えている。そして、日活が作っていたポルノとは違う触感を持っていた。脚本が中島丈博ということもあり、なんか東北の地域的な空気も入れつつ、粘っこい映画だった気はする。関本郁雄監督は、この作品を撮ってる頃は「処女監禁」「大奥浮世風呂」とか、低予算のポルノを撮っているが、２.３年後には大林宣彦監督の「姉妹坂」や「彼のオートバイ彼女の島」の脚本なども担当している。才能がある人だが、B級感が漂う作品しか残せていないのは当時の映画制作の状況があってのことだろう。その中ではこの映画印象深いのだが、結城しのぶの裸体だけが記憶にある感じである。情けない！

「女高生　天使のはらわた」は日活がロマンポルノとして石井隆の原作を使った最初の映画。雨のシーンは多いが、暴走族の仲間のレイプの話だったという印象で、その後に撮られた「天使のはらわた　赤い教室」以降の主人公、名美主体の映画とはちょっと違うテイストの作品だ。名美役は新人の大谷麻知子、そしてもう一人、川島めぐという新人が主役ということで、印象が薄いのもある。ただ、監督曽根中生は、この当時は作品を作れる人だったから、（「嗚呼！花の応援団」を撮っていた少し後だ）ロマンポルノとしては、印象深い作品になっていたという印象。ただ、これも見直していないので、その記憶を確認し直すことができない。

二本とも、文芸坐でかかるだけの客を入れられる作品だったということなのだが、もう、私自身が自分の記憶で半分映画を作ってしまってる部分があり、あまり詳しいことが書けないのは勘弁の程！

思春期に見たポルノ映画（今はそんなものもないが）は、内容よりも女性の裸体ばかりが印象に残っている恥ずかしさがある。そして、二本ともレイプシーンが強烈に撮られている映画である。そういう映画が公然と作れないような現在に、その存在をお知らせするのも難しいとも思った。普通の名画座で普通にこういう映画がかかっていた時代があったということも知っていて欲しい。70~80年代にしか存在できなかった話である。

今朝、Twitterでダルビッシュ有氏が、「性欲はIQを落とす」という呟きをしていたが、性欲旺盛な時期に観た女性の裸体は男の価値観をいろいろに作っていくのは事実だと思う。