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「前田建設ファンタジー営業部」。もの造り活劇という可能性。

この映画の話を聞くまでは、この前田建設のサイトを私は知らなかった。まあ、物造りの現場を離れて10年近く経っているので仕方がない話かもしれない。それで、この映画を見て、「もの造りは本当に面白いよな」と思ったわけである。そういう意味では、私にとって映画ももの造り産業だ。幾多の困難を乗り越えて物は生まれるのだ。

脚本はヨーロッパ企画の上田誠。そういうこともあって、少し演劇的ではある。(と思ったら、先に演劇で書かれているのね)だが、ものを実際には作らないもの造り映画なわけで、そういう意味では、この演劇的なセリフの畳み掛けは結構有効に働いている。そして、役者たちに、特に高額を払わねばいけない人もいないため、脚本が前に出ているのは良い。そして、この少し地味めなメンツはもの造りの現場のリアルさも出している。岸井ゆきのみたいな雰囲気の女性エンジニアは確かにいる。

最初の方は、しゃべくり攻撃で映画らしくないが、そのセリフの投げ合いがこの映画を活劇にしているのである。そう、最初の仕掛けが、地味目な話を格闘技的なノリに押し上げている。だから、掘削の現場やダムの現場が出てくると、その勢いに任せて見入ってしまうのは、私がもの造り好きということもあるだろうが、まんまと罠にハマった感じである。

そして、題材がマジンガーZの格納庫であり、アニメを見ながら問題が多々起こるのは、若い人たちにもの造りの面白さを教えるにはすごい有効だ。そういう意味では、この原作になるウェブサイトは、本当にとても新しいコンテンツビジネスであり、こういう仕掛けの中から新しい技術が生まれる時代でもあるだろう。何せ、CADの中でヴァーチャルにものが作れ、解析までできてしまう時代なのだから。

とはいえ、横移動問題が出たところで、超合金Zを使うことで解決してしまうのは笑ってしまったが…。

最初は乗り気でなかったり、営業部なので技術もよく知らなかったものたちが、もの造りに目覚めたようにのめり込んでいく様がとても良い。ものつくりとは、変なアドレナリンと、圧倒的な集中力の中で、自分の予想だにしない世界に行き着き、そして金にもならんのに結果の満足感でコンプリートする世界である。そんな世界の空気感はよく出ている映画だと思った。

そして、この原作のサイトも、この映画も、前田建設の大きな宣伝になっている。これからの宣伝のあり方もここに感じた映画だ。そして、日本的な自分のところだけの宣伝ではなく、土木建設業界の楽しさがわかる映画になっているのは素晴らしいと思う。

最後に設計ができたものを映像として見せる試みは映画だからできる技。不景気な中で、まだまだ、多くのブルーオーシャンビジネスが存在すると観るものに印象付けてのエンディングは心地よかった。

とはいえ、こんなのは映画じゃないとか、これはコントだ、とかいう人々は多いと思う。でも、私は面白かったから、雑の部分は許せてしまった。

今日は海の向こうでは韓国映画がアカデミー作品賞を獲ったことで大騒ぎである。映画の内容云々はさておき、快挙に対しては称賛を贈りたい。ただ、もっと夢のある映画で獲って欲しかった気はする。

そんなことを感じた後で、この夢の映画である。そして、この映画の監督、英勉の次回公開作は「映像研には手を出すな!」だそうであるが、妄想世界の連続はこの映画の題材に似ているので、ちょっと期待はできると思った。

もの造りは本当に楽しいよね!

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