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「あの頃、文芸坐で」【61】内藤誠監督オールナイト、山内えみこという女優に感じた日

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この連作、久しぶりであります。1981年10月2日に「ええじゃないか」を観てから、11月28日のこの日まで、約2ヶ月くらい文芸坐に近づかなかったことになる。その間、ロマンポルノはよく観ていた。あとは、先に書いたテアトル東京の最期に付き合ったりもしていた。それ以外では、今の池袋HUMAXシネマズのところにあった、池袋東宝で市川崑監督の「幸福」と城戸真亜子主演の「アモーレの鐘」を観ていたり、丸の内東映で本間優二主演「とりたての輝き」と萬田久子の主演作「夏の別れ」、有楽シネマで根岸吉太郎監督の初の一般映画「遠雷」、今はなき池袋松竹で熊井啓監督「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」を観たりしている。全てロードショーで観ているのは、奨学金が入るようになり、少し金回りがよくなっていたことによると思う。大学も行っていたから、結構な体力があったのと、とにかく新作が観たかったのだろう。そして、この頃から文芸坐のオールナイトに多く通うようになってくる。この日は内藤誠監督特集。山内えみこ主演の二作「番格ロック」と「ネオンくらげ」が観たかったのだろうと記憶する。

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まずは、コラムからみていくと、「雪の音」という映画には関係ない話。これを読んで感じたのは、「今年は東京、まともに雪が降らなかったな」ということくらいですね。

それでは、プログラムを見ていきます。まずは文芸坐「北欧映画祭」というイベント。これだけの映画祭ができる体力みたいなものがあった映画館ってすごいと思いますよね。それなりに客も呼べたのだろうし、しかし「男はレイプされない」とか「私のママは髪を切られた」とか「貴族にされた酔っ払い」とか、現代の直訳なのだろうけど、みたくなるタイトルですよね。その後は「クリスタル殺人事件」と「殺しのドレス」のサスペンス二本立て。そういえば、「ナイル殺人事件」の新作って公開延期されたまま忘れられていますよね。そして、カーテンコール企画。こういうのは、今のシネコンでもやってほしいですよね。年末に見損なった映画をみられるような企画。本当にお願いします。

そして、文芸地下は、ATG特集の後に、戦争映画、その後にロマンポルノで、年末はゴジラと、節操がないというか、めちゃくちゃなプログラムですが、映画の面白さが詰まっている感じがいいですね。

オールナイト「日本映画監督大事典」はこの日の内藤誠監督の後は、中平康監督、中村登監督と、知る人ぞ知る監督のラインナップ。今見ても、贅沢なラインナップを前売り700円で見られたんですよ。私の今の映画の記憶は、この値段だったおかげですね。

ル・ピリエでは、なつかしの戦前名画祭とか、「哀愁」と「ひまわり」の二本立て上映とか、なかなか良いですな。

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では、この日の内藤誠監督オールナイトに関して。とにかくも、今、映画館で見る可能性がなかなか低いフィルム5本でしたね。

「番格ロック」

内藤誠監督作品といえば、この映画だろう。池玲子、杉本美樹の後継者として主演の山内えみこは期待されて、このスケバン映画に出演したのだと思うが、スケバンものはこれ一本だけ、作品としても、デビュー作「ネオンくらげ」を含め4本しかなかったようだ。この映画では、たまらない存在感を示している。赤羽と池袋のスケバンの抗争と、それを利用しようとする暴力団の男への復讐劇である。今とは全く違う姿の赤羽駅周辺の姿を見ることができる映画である。そういう意味でも重要なのだが、この映画の重要な点はもう一つ。キャロルが出ていて、彼らのライブ風景を見ることができることにある。そう、そのおかげで矢沢永吉氏が著作権問題で色々言ってきて、一時、発売の予告まで出たビデオもそのまま出ておらず、お蔵状態の一本。まあ、それを文芸坐の大画面で見ることができたこの日は記憶に残っている。そう、キャロルとは関係ないテーマソングも格好いいのですよね。ATGで公開されたキャロルの映画もお蔵入りのままだが、ジョニー大倉氏も鬼籍な訳だし、そろそろなんとかしてくれませんかね、矢沢永吉様!

「ネオンくらげ」

その、山内えみこのデビュー作がこの作品。田舎から出てきた娘が、チンピラに遊ばれながら、最終的には故郷の恋人のところに戻る話。山内えみこを上手く使おうとするチンピラの役が荒木一郎。それだけでも、この映画は雰囲気があったような感じがした。そして、無垢な感じの山内の眼が印象的だった。いわゆる東映ポルノの一編と言っていいのだが、山内えみこという女優で印象に残っている一本。

「不良番長 送り狼」

内藤誠監督デビュー作。内藤監督はこのシリーズ5本を監督している。このシリーズは野田幸男監督のイメージが強いが、この作品でデビューして、認められたということだろう。私は不良番長を最初に見たのがこの作品だった。あら筋を見ると、梅宮率いるカポネ団がデートクラブを初めて、老舗で赤線で儲けていた暴力団と抗争になる話。このシリーズ、私は全部観ているのだが話が混ざってよくわからんが、デートクラブの映画があったのは記憶している。とにかくも、役者も揃っているし、今じゃ作れないアクション映画ではある。梅宮辰夫的なプレイボーイキャラというのも、今はいないものな。いや、その前に反社の映画が作れないのだ。そう考えると、この辺の映画群はそういうエンタメがあったという貴重な歴史の承認だったりする。

「ポルノの帝王」

これも、梅宮辰夫の帝王シリーズの一本。帝王シリーズといえば「シンボルロック」が耳に流れてくる。しかし、ストレートなタイトルが客を呼んだのであろう。この映画、デカチンが腫れ上がってしまったところから始まる。医学研究所、ポルノショップなどで梅宮が稼いだ後、ヤクザが田舎娘を集めて外国に売り飛ばそうとするところで、最後の対決という映画だったようだ。これが作られた70年代初頭、今から半世紀前は、女を外国に売り飛ばす的な話の映画がまだまだ多かったのですよ。今はなかなか理解されないだろうが、梅宮辰夫という人は、プレイボーイキャラでそんな東映映画を支えていた。話はくだらないのだが、今観てもパワーは感じられるはずです。

「十代・恵子の場合」

これは、当時の内藤監督最新作だったと思う。いわゆる学生の不良抑制のための公のパンフレットをヒントに作られた話だったと思う。普通の生活をしていた高校生役の森下愛子が、不良仲間に引き込まれ、身体を奪われ、シャブ中毒にまでされる話。当時の森下愛子の姿を見るには良い一本だが、不良の男の役は三浦洋一、最後に彼女を助ける男が風間杜夫という配役はなんなのでしょうか?まあ、時代は感じますね。久しぶりに観てみたい一本だったりする。当時の森下愛子は篠山紀信の激写などもあり、若者の性欲を奮起させるアイドル女優の位置であった。当時、激写で裸になる女の子たちは「綺麗な自分を残しておきたい」と言っていたが、今考えれば、AVなどではなく確かに綺麗なヌードが残っているのは貴重ではある。しかし、この頃、森下愛子が後に吉田拓郎の嫁になるなど、誰も予想することはなかったと思う。

こういうB級映画と言われるような作品での5本立てオールナイトは、眠気もあんまり感じなかった記憶がある。そんな中で、さらに映画を観ることが面白くなっていった時期でもありますね。梅宮辰夫は観るエナジードリンクのような俳優だったのですよ!


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