見出し画像

「その女、ジルバ(第7話)」それぞれの過去の確認、未来へのブリッジ

明らかに、最終章に向かうブリッジ会である。このドラマは、それぞれの人生の苦難に向かいながらも、笑顔で生きていくことの素晴らしさみたいなものを描きたいのだろう。そんな、全体のテーマが見え隠れする回であった。

まずは、ジャック&ローズを大晦日に訪ねてくる男(竹財輝之助)が、ジルバの過去について知りたいというところから始まる。そこで、その話の語りをするのは、お節料理を届けにきた中尾ミエ。そういえば、ジルバの話をパーティーでしたのも中尾だった。彼女の役回りはそこにあるようだ。

彼女は、戦後のブラジルで、日経の人々が「勝ち組」「負け組」に分断された話を始める。調べると、これは本当の話だ。時代に翻弄される人々の生き方というのが、このドラマが描きたいことの一つなのだろう。そして、ジルバが日本へたどり着くまでに肉親をなくす話を再度つなげる。

つまり、この店は、そういう過去を持った女が作って育てた店なのである。その空気感に、池脇がひかれていったということなのだろう。

話は、そこから雪の会津に。この間、訪ねてきた弟が開いたというお店に。こういう、話のつなぎは原作通りなのだろうと思うが、なかなか軽快に走る脚本。

そこに住んでいる、両親は昔ながらの紋切り型の田舎の人間。そして、弟が、10年前にここに逃げてきた、震災の話につながる。この部分が今の私たちにシンクロされることで、ブラジルのジルバの話もまた重く感じられる。こういう話の繋げ方は重要である。

池脇が会社を辞めて、バーで夜の仕事だけにしたいというと、母親は荒れる。男親が落ち着いているのは、そういう場を男は理解している面があるからだろう。そして、父と娘が酒を酌み交わすシーンは暖かい。こういう芝居も池脇は間をもってこなせるのが良い。

ドラマは、先週から年末年始。その時期に当て込んで、ドラマもリセットさせる。それはとても日本的な空気感だ。今年の正月がそんな感じでもなかったので、なおさら、沁みる感じがした。

そして、年始の会社、江口のりこが恋に落ちて、ニヤニヤしている。こういう機嫌が180度変わる芝居ができる江口は、やはり凄い女優さんですよね。そして、彼女が施設育ちだという話が、ぽろっと明かされる。この回の最初の話からここに繋がっていくということなのだろう。そして、予告を見ると、その恋の話の顛末が来週語られるらしい。

ラスト、池脇は、草笛光子に店に勤めたいと明かす。「あと30年覚悟をもてるか?」と草笛は聴く。そう、一昔前ならそれは凄く大きな決断の言葉だったかもしれないが、今はそれを「仕方ない」と受け入れざるおえない社会情勢でもある。このドラマを見ていて、池脇の行動を反対する人は少数派であろう。それでは、いけないと思うのだが…。

まさに、現在、みんなでコロナを乗り越えよう的な情報が流れるが、実際は人々が分断されているというのが本当のところだろう。そんなことも考えさせるこのドラマには凄みを感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?