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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【17】大塚に鈴本キネマという映画館があった日。「愛獣 襲る!」「愛欲生活 夜よ、濡らして」「未亡人の寝室」

1981年11月15日、この頃、毎週のようにロマンポルノを観ている。映画ファンの人以外はこの生活を知っていた人はあまりいない。しかし、大学で真面目に勉強していなかったことは確かだ。ロマンポルノをみて、専門だった機械工学に役に立つことは全くなかった。

そして、この日は、大塚にあった鈴本キネマに初めて行く。上は外国映画の名画座としては有名だった「大塚名画座」。その地下にある邦画専門の名画座で、ここも一ヶ月に一回くらいロマンポルノを上映していた。今の人たちには、一般映画と成人映画が混在するようなプログラムがかけられるような映画館があったことがよく理解できないであろう。邦画はそういうひとくくりのマーケットだったのだ。そして、そういう映画館はロマンポルノを観るにはあまり後ろめたさを感じなかったことも確かだ。そして、至って綺麗な小屋であった。

この日は、多分「愛獣 襲る!」がもう一度観たかったのだ。

「愛獣 襲る!」(黒沢直輔監督)

この当時、そのくらいこの映画が好きだったことはよく覚えているが、意外に詳細な内容はそれほど覚えていない。泉じゅんがアウトローをやる魅力と、黒沢直輔監督の色彩感覚と面白い構図が好きだったのだ。そう、泉じゅんのここでの眼はすごく印象的だった。そして、黒沢監督に対しては、鈴木清順的な色彩にこだわる感じが好きでしばらくの間追っかけていた。

「愛欲生活 夜よ、濡らして」(西村昭五郎監督)

このタイトル、ロマンポルノらしい良いタイトルだと思う。ただ、ロマンポルノでタイトルに見合った作品というのはほとんどない気がする。脚本はこの間の項で書いた、いどあきお。話は、風祭ゆきがレイプされた末に売春婦をやっているという話。ヒモの男と将来、店を開くことを夢見るが、結局、ダメ男はダメ男であり、風祭にも将来はなくなる話。自滅的人生を描かせたら、いどあきおはすごいものを書きそうなのだが、西村昭五郎監督作品の品質を超えるものではなかったようだ。当時の評価はすこぶる低い。風祭ゆき主演作品には、それなりに期待していたこともあったということもあるのだろう。

「未亡人の寝室」(斎藤信幸監督)

志麻いずみ主演作品。志麻いずみは、この当時、結構、主演作が多いのだが、私の周りの若い映画ファンの中では評判は悪かった。いわゆる、おばさんの雰囲気、今でいえば熟女というイメージだったからだろう。だが、こういう雰囲気の女優がロマンポルノ番組に常に一人くらいいたのは、男の趣味趣向としてそういうものを求める人がいるからだ。そう、世の中は自分の好みが絶対だと思ったら大間違いなのだ。そういう部分も、ロマンポルノで知ったのかもしれない。映画の話としては、旅館の女将の志麻の周辺で男が死んでいたりして、そこに泊まりに来た作家が朽ちるまでの話。志麻の役所としては、不可思議な謎の女的なものが多く、緊迫も演じたからそれなりのイメージは焼き付いているが、この歳になっても好みではない。そして、斎藤信幸監督作品だが、当時の評価は、この日観た3本の中では最低だった。

ということで、このような3本に、約3時間半の青春の貴重な時間を捧げていた日々、スマフォをいじる時間は必要なかったからその代わりといえば、そうなのだが、よく飽きずに通っていたなと思う次第である。


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