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「その女、ジルバ(第8話)」幸せの波が向かってくる時の逃げたい気持ち、受け止める覚悟。

なかなか毎回、濃い内容である、が、それほど新しい題材がドラマの中で示されるわけではない。でも、一人一人が幸せと孤独の中でもがいている感じがとても適格に描かれていることがこのドラマが秀逸なところである。そして、その後ろに演者の人生も見えてくるところだ。

今回は池脇が、オールド・ジャック&ローズの専属になる話と江口のりこの妊娠から結婚式に至る話。そして、そんな幸せの中で草笛光子が倒れるという、ラストに向かう展開が描かれた。

施設で育って、幸せというものに乏しかった江口が、恋に落ち、勢いで妊娠、幸せの風が一気に吹いている感じは、人生に何度かあるかないかの出来事だろう。まれにしかないような出来事に怖くなるという経験は誰にでもあること。でも、それを受け止める勇気というのも人間には必要なのかもしれない。それを運命と呼ぶ時もあるが、人の心の惹かれあいともつれ合いは、いまだに科学では解明できないところだが、「恋」や「愛」を非科学と呼ぶ人はいない。でも、AIに置き換えられないものでもある。だから、ドラマはそれを描く。そして、ラストの結婚式に結実する。とてもいい式であった。しかし、その締めがブルーハーツだというのは、江口のりこのイメージか?

しかし、池脇が会社を辞めることに関して、観ている方はなんの違和感も感じないのは、現代がそういう時代だからだろうか?そう、会社で一定のサラリーをもらって暮らす方が、不安定に感じることがある時代なのだ。でも、自分の足や頭を使って生きる勇気のある人はまだほんの一部。でも、そんな心持ちでは、幸せの波が吹いてきてもそれに吹かれることもできない時代なのかもしれない。

そう、そんな日常の自分が池脇らの出演者にシンクロしてくることで、このドラマは生き生きとしているのだ。そして、今は亡きジルバママや草笛演じるくじらママを通じて、人生の楽しみ方、そして閉め方も訴えようとしているのかもしれない。

今回のラストを見ていて思った。人生など、まつり事を超えることで先に進む。そういう意味では、さまざまな、まつり事ができない今は人々にとってはとても苦しい停滞期間だと思う。そして、人員削減が世界のテーマになっている現状の中で、このドラマはとてもタイムリーだ。

草笛が倒れ、多分、過去の話がどんどん池脇に話される感じになっていくのだろう。みんな過去より未来を思いながら生きることが大事なのが人間だと私は思っている。しかし、人間という生き物は死んだら全てがリセットされる。だから、リセットされることを怖がってはいけない。ただ、死ぬ前に大事なことを伝承していくことは重要なことだ。世界の多くの人々がそんなことに気づくこのパンデミックなら、それは未来から見ればとても興味深いこの時代ではある。

早く、今回のドラマにあるような結婚式ができるように祈る毎日である。


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