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「あの頃、文芸坐で」【54】関本郁夫監督オールナイト。B級映画にオールナイト上映はよく似合う。

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文芸坐.001

この間書いたロマンポルノの特集を2回見に行った、その間の7/18に原宿ラフォーレに「モーニングムーンは粗雑に」という映画を見に行っている。サザンオールスターズの歌が使われていることで期待して見に行ったわけだが、映画そのものが粗雑で、後でビデオで見ても、再度ひどい映画だと思った最悪の映画だった。ただ、この映画のテーマソングが「栞のテーマ」なのである。栞役は今は亡き、范文雀。歌は、今でもよくうたわれるのに、本当に映画はもったいないことをしたと思うわけである。

そして、7月25 日のオールナイトは関本郁夫監督特集。いわゆる東映のスケバン映画をこの日、初めて映画館で見る。まだ当時はそんなにエゲツナサを感じるものでもなかったが、今観ると、映倫に持っていった段階で跳ねられそうな映画ばかりである。(そういうことはないだろうが、今ではこういう映画を作れる人はいないだろうということである)

まずはコラム。イメージ喚起が、街頭に散布されるチラシの物量であるというお話。最近は、スマフォのおかげで、チラシというものが減ったとともに、読むことも減ったような気がする。そんな中、映画のチラシは健在である。最近は、新聞を読む人も少ないから、その広告で映画を観ようと決める人は少ないだろう。どちらかというとSNSの情報で観る映画を探すことが多くなっているのかもしれない。だが、映画のチラシは存在する。まだ、効果はあるのだろうか?一昔前のように映画チラシマニアもいないような気がするのだが、結構、私的には謎である。

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プログラムは、文芸坐は変わらず、文芸地下は「土佐一本釣り」と「ヒポクラテスたち」の二本立て。結構、無理な組み合わせだが、これも観に行ってるので後日。オールナイトは曽根中生監督特集の後に高林陽一&武智鉄二特集。なかなかB級路線を走っている内容。武智鉄二はこの当時、愛染恭子で「白日夢」をリメイク。本番映画として客を呼ぶ事になる。

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そして、この日の関本郁夫監督特集5本立て

「女番長・タイマン勝負」

実質、最初に公開されたデビュー作である。東映スケバン映画は、基本、鈴木則文監督の世界なのだが、関本版のそれの方が、品があるような気がする。それは、その後、全てのスケバン映画を観てから思ったことだ。先にも書いたように、私が映画館でスケバン映画を観たのはこの日が初めて。池玲子のそれを観たことに感動した。東映ポルノ路線はにっかつのそれより、とにかく迫力で裸を見せる感じ。この映画は、スケバングループの復讐劇で、それは東映任侠映画のパロディなのだが、この異次元世界は今に至っても異次元である。関本監督は、この映画でデビューすることで、このシリーズを唯一違う形にできた監督なのかもしれないと今更思う。

「女番長・玉突き遊び」

関本監督作品で撮影に先に入ったのはこの映画だという。だから、こちらもデビュー作品だ。主演が叶優子という、池玲子、杉本美樹以外で作られた珍しいスケバン映画だ。とはいえ、話は同じようなスケバン抗争劇。ということで詳細はほとんど覚えていない。覚えているのは、上半身裸で、叶が水を浴びるシーンがあったと思うのだが、綺麗なシーンで覚えている。鈴木監督のスケバン映画には、そういう綺麗なシーンはない。それは、「トラック野郎」をみてもよくわかる。とことん挑発的に迫るスケバン映画とは少し違うものを関本監督は作っていた。彼が作った二本のスケバン映画のうち、私はこちらの方が好きだった。

「好色元禄㊙︎物語」

ウルトラセブンのアンヌ隊員として、それなりに老後に忙しい、ひし美ゆり子さんの主演のポルノ映画。これが公開されたのは私が高校生の時、その頃、彼女が東映ポルノで脱いでいることを知って、高校生の話の種になっていた。そう、あのアンヌが、この映画では、自分の欲のために身体を武器に男を手玉にとっていく話だ。彼女はテレビではプレイガールなどもやっていたが、そういう時代の中で女優をやっていたということなのである。今が劇場映画の世界がそういう時代ではなくなったということだ。とはいえ、この作品は田中陽造脚本ということもあり、そこそこ楽しめる作品だった。

「処女監禁」

東映の安価なポルノ映画である。主演は三崎奈美。彼に惚れた男が、覗きから始まり、彼女を監禁して飼うという映画。撮影場所は東映大泉撮影所周辺。当時、私は近くに住んでいて、ほぼどこで撮影されたかがわかる作品。そういう映画も珍しい。つまり、1977年ごろの大泉学園駅周辺。今は全く変わってしまった風景が見ることができる。ラスト、服をはだけた三崎奈美が駅をバックに歩いてくるシーンで終わると思ったが、こんなシーンを撮るなら、教えて欲しかったと思った。前に三崎奈美の話は書いたが、この映画の三崎奈美もセクシーである。それなりに品はあるが、当時のエロ本のモデルにみられるような場末感もここでは見ることができる。映画は陳腐なものだが、三崎奈美ファンには貴重な一本。

「天使の欲望」

この映画については、以前も書いたので多くを書かないが、関本郁夫作品の中では、一番好きな作品かもしれない。結城しのぶという一線級の女優を迎えて、こういうポルノ的な題材を撮って、作品として成立しているのは、関本郁夫監督の技量であったと思う。

関本監督は、ロマンポルノも撮っているし、大林宣彦作品の脚本や、後年は「極道の妻たち」のシリーズも撮っている。ある意味、器用さを発揮しているのだが、彼自身の監督哲学的なものは、ここに書いた初期作品の方に感じることは確かだ。なかなか、最近では見ることの出来ない作品ばかりだが、私にはとても懐かしい作品たちだ。



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