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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【29】根岸吉太郎、最後のロマンポルノ「キャバレー日記」を観る

1982年6月26日、池袋北口にっかつに、「キャバレー日記」「白薔薇学園 そして全員犯された」「セックスドキュメント 器具販売人」の封切り3本立てを観に行く。前年、「遠雷」で一般映画に進出した根岸吉太郎監督の「狂った果実」以来のロマンポルノ。「狂った果実」は私にとって、とても大事な記憶の映画であり、その監督の久しぶりのロマンポルノということで封切りに行ったと思う。かなりのワクワク感でスクリーンに向かった日だったと覚えている。

「キャバレー日記」(根岸吉太郎監督)
竹井みどり主演、ネットで調べると、もう芸能界からは遠ざかっているようだが、映画初出演は「血を吸う薔薇」山本迪夫監督のドラキュラ映画である。その後、テレビドラマには数々出ていたかと思うが、これがロマンポルノ初主演。キャリアのある女優が主役として挑んだのも、根岸監督が有名になっていたからだとは思う。話は、恋愛禁止のキャバレー内の男女のもつれの話。男の方の主役が、伊藤克信であるのもあり、ある意味、コメディタッチも入れながらの水商売の女の刹那い物語。ロマンポルノには、ここに描かれるような軍隊方式のようなキャバレーやピンサロがよく出てくるが、今見ると、遥か昔の夜の社交場という眺めである。キャバクラとか、ラウンジとか、名前を変えドレス姿もこの当時のキャバレーに比べると今は随分異なる世界である。ロマンポルノが終わった時には、まだ、キャバクラという言葉があったかなかったかという状況だったと思う。だから、ロマンポルノにキャバクラの話はない。(昨今のロマンポルノ再生的な企画で、キャバクラの話を作ってもらいたかったりはする。)この映画自体は、役者も揃い、演出も一番冴えてた頃の根岸監督ということで、よくできた映画だった。そして、ロマンポルノでないと作り得ない作品でもあったと思う。これを最後に、根岸監督はメジャーな映画作りを本格化する。つまり、これは根岸監督の残した最後のロマンポルノである。書いているうちに、また観たくなってきました。根岸監督、最近は大学のお仕事だけで、映画は撮っておられないようですが、是非、アカデミー賞狙うような映画とっていただきたいと思っています。

「白薔薇学園 そして全員犯された」(小原宏裕監督)
この映画、題名だけでよく覚えている。このタイトルは「そして誰もいなくなった」から来ると思うのだが、ロマンポルノのタイトルとしては、一二を争う傑作だと思っている。だって、白薔薇学園は女子校だろうし、それが全員犯されるってどういう状況ですよ!ロマンポルノの客層を考えたら、こんなに興味深く、観ずにはいられない題名はない。本当に映画は、タイトル重要!その辺のところ、最近の映画は本当にダメである!で、内容であるが、脚本は伴一彦。つまり、コメディポルノの分野に入る。そして、学校の話だが、バスジャックの話である。だから、「全員犯された」と言っても、数は結構少ない。そして、実際の映画では、全員犯されない。つまり、タイトルは嘘である。この辺りで、この映画、周囲では文句を言う人が多かった。だいたい、バスジャックの途中で、ブスは降ろされるとか、今考えたら、絶対に作れない映画でしょうね。これだけで、今、読んでるだけの人は見たくなるかもしれません。主役は三崎奈美。それだけで、私は十分楽しめたと思うのですが、この時の三崎奈美は、ショートヘアーのモジャモジャ頭で、今ひとつ。まあ、見事なボディはそのままでしたが…。そして、問題起こす生徒は太田あやこ。この女優さんは問題児の女子高生というイメージしかない気もしますな。どちらにしても、この頃の伴一彦の作品に、そんなに傑作を求めてもしょうがなく(今は大先生ですけどね)。内容はともかく、色々印象深いところは多く、よく覚えている作品です。

「セックスドキュメント 器具販売人」(平川弘喜監督)
全く覚えていないが、ネット内に残るあらすじを見ると、夫婦が家を買うために、保険屋とアダルトグッズ販売で一生懸命働く話らしい。主演は亜希いずみだが、タイトルにある器具販売人は下元史朗。当時の私の評価も最悪になってるから、まあ、つまらないピンク映画ということだったのだろう。

なんか、結構な量の文章を綴ったが、これだけ綴れるのは、印象深いプログラムだったからだ。ある意味、これだけ、人の記憶に残すような作品なら大したものなのだ。映画とか、女性の裸とか、本当に全く覚えていないものと、すごい記憶があるもの(大概は自己脚色があったりするが)の二極ですな、と本当に歳を追うごとに思ったりしています。

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