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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【26】三東ルシアという女優に今も感じる私…。

1982年4月13日、池袋北口にっかつで、封切り3本立て「女教師生徒の眼の前で」「生録盗聴ビデオ」「ドキュメントポルノ・屋台売春」を見にいく。

この一週間前には、「みゆき座」で、キャサリン・ヘップバーン、ヘンリー・フォンダ主演の「黄昏」を見にいく。40年前は二人ともまだ生きていたということだ。そして、大事なのが次の日、上板東映で「赤い娼婦・突き刺す(中村幻児監督)」「ビニール本の女・密写全裸(福岡芳穂監督)」「狂った情事・おしゃぶり(礒村一路監督)」「襲られた女(高橋伴明監督)」の4本立てを見ている。この前年のピンク映画の最高峰の4本を一度に見たということである。

この1982年には、高橋伴明、中村幻児、両監督が一般映画デビューも果たしているわけで、その勢いをつけた作品を見た日であった。そして、「襲われた女」のラストの忍海よしこ、下元史郎、山路和弘の三角関係の描写の刹那さ、主題歌「うぬぼれワルツ(木の実ナナ)」には、今も殴られた感じのままであるし、「赤い娼婦・突き刺す」の盲目の売春婦、朝霧友香が謎のブツをあずけられ追いかけられ、恋に落ちる話。ここでも、主題歌「愛の蜃気楼(五輪真弓)」が印象的だった。そう、ラストの朝霧の顔が今も脳裏に刻まれたままだ。ある意味、私にピンク映画のあり方?いや、映画の自由さと有機的な体験を教えてくれた映画だった。ここは、ロマンポルノの話なので、今日はこのくらいに納めておく。

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そして、この日見たロマンポルノ

「女教師生徒の眼の前で」(上垣保朗監督)
この作品は、三東ルシアが初めてロマンポルノに出演した作品だ。私的には、突然の出演に驚いたものだ。三東ルシアと言ったらTOTOホーローバスCM「お魚になった私」である。初期からオナペット的な活躍。そして1975年には東映で「青い性」という主演作が公開される。それから、7年後に突然のロマンポルノだったのだ。元々、彼女の雰囲気が好きだったこともあり、早く見たくて、封切りに駆けつけたということだったと思う。まあ、彼女の裸身はそれなりに楽しめたというところ。女教師が生徒に犯されるような話だったが、当時の評価はそこそこ。でも、キャストを見ると、三東以外の女優はあまりパッとしていない感じなので、やはり三東で売るということだったのだろう。男優としては中根徹が助演している。三東は、これも含めて4本のロマンポルノに出ているが、その後もヌードの仕事は続けて、結構最近まで写真集とか出ていましたがね。70~80年代のハーフモデルとしては、ファンがそれなりに多かったという印象です。

「生録盗聴ビデオ」(菅野隆監督)
風間舞子主演の猥雑な話である。脚本は伴一彦。伴の書いたロマンポルノの印象はコメディというイメージがあり、こういうただ猥褻な話は珍しいと思う。風間舞子という女優はただ、猥褻というイメージで売っていたが、それは、いわゆる当時のエロ本に出てくるような感じだったからだ。エロ本が動くのがロマンポルノだったということも事実である。そして、ここで「ビデオ」というものが題名として使われている。まだまだ家庭用ビデオは大きかった時代。そして、ソフトは1万円を超えていた時代、時代を早く取り込んでいったのがロマンポルノだったのだ。だが、最終的にはそのビデオに駆逐されることになるわけで、時代の発展がいろんなカオスを引き起こすことがよくわかったりもする。監督の菅野隆は、SM作品などを多く撮っていたが、個人的には苦手な監督だった。だが、この作品の当時の評価はそんなに悪くない。ということは、伴一彦も脚本が良かったということなのかもしれない

「ドキュメントポルノ・屋台売春」(鴨田好史監督)
買取作品の中でも、この頃、鴨田好史監督の作品は、それなりに面白かった。主演、吉沢由紀、麻生うさぎ、織田倭歌という並びは、当時のピンクとしてはそれなりに豪華な感じはする。まあ、題名から、売春の出てくる映画らしいが、正直、全く内容を覚えていない。当時の評価は悪くないから、それなりにストーリーが明確だった作品だったのだろう。

この頃になると、エロス大作という括りのものも出てきて、ロマンポルノに有名な女優さんが多く出るようになっていく。そういう意味で、見る方ももう、恥ずかしさなど全くなくなっていた。だが、封切館でも禁煙の文字が光る中で、上映中にタバコを吸う人は多く、スクリーンには、独特のエフェクトがかかっているような状況で、特異な映画上映だったことは間違いない。

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