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「あの頃、文芸坐で」【9】気分どん底の中で観た「ピンクサロン 好色五人女」

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1979年3月。そう、私は2度目の大学受験に臨み、再度、玉砕した。よって、これは、受験を終えて、どん底の中の時の話。多分、人生の中で1、2を争う、鬱状態と言ってもよかっただろう。その中で観たのは、「ピンクサロン 好色五人女」(田中登監督)。記録を見ると、二本立てのこちらだけを観ている。そして、すごく感動した記憶があるのだ。

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まず、表コラム。森田芳光監督作品「ライブ・イン・茅ヶ崎」のお話。このあと、森田監督は一気に日本映画のメジャーな監督として上り詰め、ふっといなくなってしまった。映画会社が監督を育てなくなった時代に、インディーズから突如として現れた天才。私は「ライブ〜」に関してはかなり後で観ているので、ここに書いてあるような興奮はなかったが、当時としては、こういう映画が新しかったというものである。今の若い方々が観ても、ピンとこないでしょうね。森田監督という存在も、もう遠くになってしまった感じもしますね。時は流れます。

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プログラムは文芸坐の方は、その時代に帰れる感じの二本立てが並ぶ。最後の週の「ビリティス」と「パトリシアの夏」。ヨーロッパ思春期ものの二本立て。特に「ビリティス」は当時、美しいヌード写真の天才だったデビッド・ハミルトン監督作品。こういう映画が受け入れられた時代であります。

文芸地下は、黒澤作品を挟んで、学園映画傑作選。「青葉繁れる」はその後の秋吉久美子特集でも、上映されている。井上ひさし原作を岡本喜八が監督した作品。井上が若尾文子がモデルだというヒロインを秋吉久美子が演じる。今はあまり上映の機会がないが、なかなか面白い映画である。秋吉久美子特集にかかっている映画は、もう一度映画館で観てみたいものが多い。特集タイトルの「結婚するって本当ですか」というのは、最初の結婚報道があった時だからだろう。それと、郷ひろみ主演映画が二本あるが、秋吉は郷ひろみの相手役としてあてがわれた事実はもう忘れている方も多いのでは?再度、この二人で映画を作るのも面白そうな気もするが…。

そして、オールナイトは「日本映画監督大事典」が始まっている。アイウエオ順に日本の映画監督特集をするという馬鹿げた計画である。今井正監督の紹介もあるが、すごい名作を残しているのに、最近はあまり評価されない一人ですね。次の次の今村昌平の方が、いろいろと話題性が多いのは、今井正という監督が正攻法な監督だからでしょうか?でも、そこが大事だとも思う今日この頃。池広一夫監督は作品をみてわかるように、大映のプログラムピクチャーの多くを撮っている方、この辺りは役者主導で監督の名前は影が薄い感じはしますな。雷蔵ファンにはたまらないプログラムですが…。

そして、この頃は文芸地下で落語会もやっていた。こういうのシネコンでもできますよね。ぜひ、やっていただきたい。エンタメをうまく再度盛り上げるためにも、観客数が少なく、なんでもできる劇場としてシネコンは再考されるべきだと考えます。

また、第5回フィルムフェスティバルの投票用紙がありました。ここに書かれた女優さんたちが当時、人気だったということですね。洋画の方は、「スクリーン」などの投票結果とリンクしている感じ。テイタム・オニールの名があるのは時代を感じさせる。今、どうなされているのでしょうか?邦画の方もよくわかるメンツですが、竹田かほりが入っているのが、当時らしいのかな?甲斐よしひろ夫人ですね。ほぼ同時期に活躍した森下愛子(吉田拓郎夫人)がいないのが、ちょっと不思議な気もするが、少し、時期が後なのかな?

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そして「ピンクサロン 好色五人女」のお話。正直、詳細なストーリーはよく覚えていないが、田中登作品ということで観に行った。そして、前回、お話しした二本とは違い、女性のバイタリティみたいなパワーを強く感じたのは覚えている。そして、琵琶湖近くのピンクサロンで働く女たちが、破滅していく感じの印象。「愛のコリーダ」の松田瑛子、宮井えりな、山内美也子、青山恭子ら、女優たちが役にうまく溶け合い、とても観終わった後に心地よかった気が…。どちらにしても、最初に書いた通り、人生お先真っ暗状態だったので、うらぶれた女たちの姿にシンクロしていたのだろう。今となっては、人生に必要だった大学受験失敗時期の話だが、他人にはなかなかできない状況は今の生き方に役立っていることは確かである。多分、大学本体よりも、その過程が役に立ったりするのだ。

そして、次にこの映画館に来るのは夏であった…。


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