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名作映画を見直す【16】真昼の決闘

フレッド・ジンネマン監督。1952年作品。ゲイリークーパー、グレイス・ケリー主演。有名な西部劇である。話はシンプルだ。クーパー演じる保安官がグレイス・ケリーと結婚したその日、以前、彼が逮捕した男が出所し、街に復讐に戻ってくるという。男の仲間3人は駅で待って、決闘に備える。クーパーは一度は妻と街を去ろうとするが、男としてそれができない。そして助っ人を集めようとするが、集まらず、4対1の真昼の決闘が始まる。という話である。

決闘シーンは最後の15分くらい。だから、どちらかというと、街の人のクーパーに対しての暖かくない視線を描いている感じでもある。無謀な正義は意味がない。ある意味、クーパーは街の厄介者だから早く出て行ってくれという意見が多いのだ。そして、描かれる人間に関しての情報が少ないので、あまり濃厚な人間ドラマではない。

そう、主演のゲイリー・クーパーの演技に尽きる映画である。だからなのか、アカデミー賞主演男優賞受賞作ではある。そんな主演のクーパーの心の変化みたいなものが主題なのだが、どうも、彼の過去の回想もないし、結婚するする妻のグレイス・ケリーとの馴れ初めなどもない。彼がけして街の人々から愛されていないのはわかるが、その人格描写もどうも読み取れない。

そして、決闘相手のイアン・マクドナルド演じるミラーという悪人?もどういう男なのか、セリフの中でしか出てこないので、映画を観ている者としては実態が掴めないのは、最後の決闘に行くまでフラストレーションが溜まるのである。ドラマとしての構成がシンプルだが、それゆえに不親切極まりない。多分、昨今の複雑な映画に慣れている自分には物足りないの一言に尽きる。

見せ場は、最後の決闘シーン。街の人々は家の中に引きこもり、4対1の決闘が始まるが、真昼の決闘を演出するような、風や砂埃や、雨など自然の演出がない。つまり、黒澤明が好むような、場をエキサイティングにする感じのワクワク、ドキドキがあまりにもたりないのだ。まあ、静かな決闘といいたいのかもしれないが、これだと、観終わった後味が弱いということである。こういう西部劇演出はやはり、ジョン・フォード監督がうまいということだ。

決闘も、街を走りながら、クーパーが2人を倒し、あと二人でまごついているところを、妻が一人を倒すが、ミラーに捕まり、「撃つと女の命はないぞ」みたいな、よくあるシーンが続いてくる。ミラーが逃げ出そうとするグレイス・ケリーにスキをみせ、クーパーが見事に退治するという、古典的な決闘シーンが繰り広げられる。決闘の間も、ランプぼ火が燃え出したりするのだが、街が燃えるようなことはない。そういう緊迫感やダイナミズムはわざと避けるように演出はあまり盛り上がらない。

スターの主演で、いろいろと注文もあったのかもしれない。調べると、この時ゲイリー・クーパー51歳。当時のその歳は十分に老人だろうし、ここでの姿はもう枯れた彼であるから、アクションができなかったということもあるのでしょうかね。(クーパーは60歳まで役者を続けている)それに対しグレイス・ケリー23歳。二回り以上の歳の差でも、意外に違和感がないのは、若いとも言えるのだが…。

とにかくも、西部劇の古典として残っている一本であるが、あくまでもスター映画の域で作られた作品であり、エンターテインメントとしては、今で考えればテレビサイズの作品である。題名「High Noon」は格好いい題名ですけどね。


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