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「あの頃、文芸坐で」【86】怪獣映画は劇場で観ることで興奮するものである

久々に続きを書きます。この連作まだまだ半分も行っていないのです。つい最近は飯田橋ギンレイホールの閉館移転の話があり、はっきり言って、この文芸坐通いをしていた頃に存在していた名画座で今もあるのは早稲田松竹だけではないかと思ったりします。ちょっと前には高田馬場パール座があった西友も壊すというニュースがありましたし、流石に40年も経ち、映画館というものの価値観も存在感も変わったということなのでしょうね。

そんなことを考える秋ですが、まだ40年前の夏の話。1982年7月21日、文芸地下に3本立て「宇宙大怪獣ギララ」「大巨獣ガッパ」「空の大怪獣ラドン」を観に行く。その後も、この辺の映画はビデオで何度も見ているので内容はよく覚えているし、今だに子供の頃の怪獣映画は興奮する。まあ、今年も「シン・ウルトラマン」見て、それなりの興奮を覚えましたものね。

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まずはコラムから。「三面記事」というタイトルで、監督の存在感がなくなった話。確かにここにあるように、高橋伴明監督が関根恵子と結婚した時には、「やるじゃないか!」という思いがあった。そして、40年後、伴明監督は、今もなかなか骨太の映画を作ってはいるが、それを知っている人はなかなかいない。高橋恵子(関根恵子)は女優を続け、それなりのネームバリューがある。彼女が何故、高橋性なのか知らない人も多いだろう。とにかく最近は、映画のポスターに映画監督の名が大きく乗ることがないのだ。だから、監督で映画を観る人も少なくなっている。確かに、スター女優と映画監督が結婚することもないわけで(女優さんと結婚してる監督さんは結構いますがスターではない)。そして、女優さんも男優さんと付き合う場合が多いようで、監督さんは蚊帳の外感が強い。最近は女性監督さんも多いわけで、彼女たちが男優さんと付き合うということもあっていいと思うのですけどね。とにかく、映画監督とスターの位置関係が40年前以上に弱い気がしますよね。そこのところを改善しないと日本映画の質向上はない気もしますよね。まずは、映画の宣伝ポスターの監督の名前もう少し大きくしてもらえませんかね。それをすれば、監督で映画を観る人も少しは増えると思ったりもするのですが?

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そして、プログラム。文芸坐は、二日がわりの喜劇映画セレクションの後、「スタートレック」「レイダース失われたアーク」の二本立て。そして、スーパーSF世界特撮映画大全と続く。完全に夏休み番組ですね。そして文芸地下はスーパーS F日本映画特撮映画大全の後に、MY愛DOLLと題して、アイドル映画。これも、夏休み番組ですね。そう、当時はアイドル映画が客を入れていた時代だから、日本映画はお子様ランチ感が強く、私のような邦画マニアは、まあ特異な存在で、洋画を見ることが映画ファンみたいな時代でしたね。それを考えると、今の洋画マーケットの弱さは信じられないですよね。

そして、オールナイトは、増村保造。これは行っているのでまた後日。ル・ピリエも夏は映画ばかりですな。

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そうそう、この文芸坐に行った日の3日前には、これも今は亡き「テアトル池袋」に「スクープ悪意の不在」シドニー・ポラック監督ポール・ニューマン主演「ネイバーズ」ジョン・G・アビルドセン監督ジョン・べルーシ主演
というのをいうのを見にいっている。入場料は400円だったみたいです。しかし、内容はほとんど覚えていない。本当に、洋画は本気で見ていなかったのがよくわかる。

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そして、この日観た映画3本について
「宇宙大怪獣ギララ」(二本松嘉瑞監督)
テレビのウルトラシリーズがもたらした、第一次怪獣ブームに乗って、ゴジラの東宝、ガメラの大映だけでなく、松竹までも怪獣映画を作ったという代物。私は、この日初めてこの映画を観る。だいたい、初っ端からずっこけるのは、主題歌が倍賞千恵子の爽やか系の歌で始まること。そして、倍賞とか、松竹由来の俳優が出ているわけではない。和崎俊也、原田糸子という若手二人に、何故か岡田英次。特撮が凄いという映画でもない。そして、なんか怪獣の造形もなんでこんなのになったのか?という一本だが、松竹が作った怪獣として、今も語り継がれるのだ。そういう意味で、怪獣映画というのは日本映画の中で特異な存在ではあるのですよね

「大巨獣ガッパ」(野口晴康監督)
これも、ギララと同じく、日活が唯一作った怪獣映画。ギララが1967年の3月25日封切りで、ガッパが4 月22日封切り。ほぼ、同時に怪獣映画を作ろうということになったのだろう。日本人は流れに乗るビジネスが好きだ。ただ、ギララに比べ、内容も特撮もこちらの方がよくできている。南の島からガッパの子供を連れて帰り見せ物にしようとしたところ、親が子供を助けに来る話である。流れ的には「モスラ」に似ている。ガッパと仲良くなる山本陽子が印象的。そして、ガッパの造形は封切り当時から私は結構気に入っていて、このプラモデルを買ってもらい、作った思い出がある。ちゃんとモーターで二足歩行した。しかし、松竹も日活も怪獣映画はこれだけ、金がかかる割には儲からなかった儲からなかったということでしょうな。

「空の大怪獣 ラドン」(本田猪四郎監督)
上の2本より11年前に作られた傑作。私は、テレビで何回か観ていたが、劇場で観るのはこの時が初めて。ラドンの造形も大好きである。そして、ラドンが飛んで強風が起こり、福岡の街が壊れるシーンも。最後に阿蘇山に朽ちてくラドンの姿も印象的。何度見ても、素晴らしい映画であり、このテイストを今のCG合成に求めるのは不可能なわけで、本当に遺産的な映画だと思う。そういえば、4Kリマスターで今年「午前十時の映画祭」で上映されますよね。ぜひ、見に行きたいと思っています。

以上、怪獣映画について書くのは、やはり嬉しいですな。そして、怪獣映画は劇場で観るのが一番興奮するということを、この日のことを思い出しながら再確認したりしました。


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