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「あの頃、文芸坐で」【23】フランキー堺&市村俊之共演作の面白さ「牛乳屋フランキー」他、或いは「果しなき欲望」「人類学入門」今村昌平の凄み

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このプログラムで、「小沢昭一A級B級C級傑作映画大会」の中から3日の「童貞先生行状記」「あゝ軍艦旗」「牛乳屋フランキー」と4日の「果てしなき欲望」「人類学入門」の2プログラムを連チャンで観ている。この頃から、映画鑑賞回数が増えてくるのだが、2本立て連チャンが平気だったのは、若かった故である。ただし、今ほど一本一本の映画をしっかりと多角的には観ていなかった気がする。あくまでも、経験としての映画鑑賞だった。でも、それが今に役立っているのは確かである。

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まずはコラム。横山博人監督「純」のナイトロードショー成功の話。この当時、ナイトロードショーというのはまだそんなになかった気がする。今に比べれば、小さな映画を作るのも観せるのも大変だった時代である。そういう意味で、文芸坐は本当にいろんなことをやっていた気はする。そして、文化発信に対する意気込みが空気感が今とはかなり違っていた感じがする。そのおかげで今の私の映画脳ができたということだ。

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文芸坐は「陽のあたらない名画祭」の後、S .マックウィーン特集ということで「大脱走」「荒野の七人」の二本立てから、ベルトリッチ二本立て。プログラム見ているだけで、映画を観ているような気になる作品群。

文芸地下は「愛と感動と映画的良心と」という題名のついた「あゝ野麦峠」「遥かなる山の呼び声」の二本立て。当時、こういう映画にはあまり食指が走りませんでしたね。今もですが。それほど、愛と感動を得るために映画館に通っていたわけではないのですよね。映画というものの構造の面白さに惹かれているというのが私の本質です。

オールナイトの「日本監督大事典」には斉藤武市監督の登場。渡り鳥シリーズで日活アクションに名前を残す名匠?ですね。オールナイトで観る映画は、娯楽作に限りますが、渡り鳥シリーズをまとめて観ると完全に話が混ざりましたね。

そして、「陽のあたらない名画祭」のプログラム。なかなか観たい映画が多いですね。今、シネコンでジブリ作品が公開されていますが、各シネコンで一年に一度くらい、リクエスト企画でみんなが観たい映画が映画館で観られる映画祭できないですかね?ビデオで見たのを映画館で見たいと思う事もあるし、結構、客集まると思うんですけどね…。

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そして、小沢昭一特集で観た映画の話。最初に観たのは、フランキー堺主演の三本立て。彼が亡くなったのが1996年。もうそれから四半世紀が過ぎようとしている。ということは、今の若い人はフランキー堺という役者がいたことさえ知らない人も多いだろう。私も、東宝で社長シリーズなどに出ていたり、テレビドラマでの彼は知っていたが、日活での主演映画を観たのはこの日が初めてだった。感想は「フランキー堺という役者はこんなに面白く軽快な役者だったのか!」というものだった。

特に「牛乳屋フランキー」(中平康監督)は、今観ても絶対に面白い、スラップスティックでパロディも埋め込みながらの快作である。中平監督はデビュー作「狂った果実」を公開してから約半年後に、この映画を公開している。ゴダールにも影響を与えたと言われるシャープな太陽族映画の監督が、こういうコメディを撮るという大胆さ。そして面白い!これを観れば中平康監督の天才性が理解できる一本である。

田舎から出てきたフランキーが牛乳屋に住み込みで、販売競争に組み込まれていく話だ。一本でも多く牛乳を運ぶ技や、他メーカーとのお得意様争奪戦をキーに、豪華ゲスト配置しながら、ドタバタ劇をスピーディーに繰り広げる作品。この後、3度は観ているが、観るたびに発見がある映画である。

そして、同時に見た「あゝ軍艦旗」はフランキーとブーちゃんこと市村俊之が軍隊で起こすドタバタ劇。軍隊を知っている人が演じた軍隊劇ということでは興味深いし、これも面白いです。「童貞先生行状記」もフランキーが先生で市村が同僚だったと思うが、楽しい映画だったと記憶する。フランキーと市村のコンビは、今はあまり語られないが、一見の価値のあるコンビで、今のお笑いの比でない時代を超えて笑えるものをこの時に感じた気がする。

そして、もう一プログラム「果しなき欲望」と「人類学入門」共に今村昌平監督作品。「果しなき欲望」は戦時中に隠したモルヒネを自分たちの手に収めようと、穴を掘る映画。「大脱走」と同じような映画ともいえる。今村の初期作品として、私は一番好きかもしれない。当時の日本映画の個性のぶつかり合いも楽しめる。先にも書いた、当時出演本数を争っていたと言われる、小沢昭一と西村晃が両方出ている。今村作品を何を見たらいいか?と聞かれたら私はこれを推する。

もう一本の「人類学入門」は野坂昭如原作「エロ事師たち」の映画化である。小沢昭一の数少ない主演作でもある。8mmでブルーフィルムと言われたポルノを撮影し、上映会をやって歩く話である。やっていることは今観たら、バカバカしいし、AVでなんでも観れる時代に馬鹿馬鹿しいと思う若者もいるだろうが、人が色情をビジネスをしてきた歴史の一旦を観られる貴重なフィルムである。舞台の床屋も印象的で、今村昌平らしい一本と言える。

そう、この5本は小沢昭一特集として観たものだ。ネットにある映画データベースで小沢昭一出演作品を検索すると188本が出てくる。実際は、ノークレジットのものもあるだろうから、200本以上の映画で彼は好きなように演技してきたと思われる。今一度、彼の芸能活動を見直される日はくるのだろうか?まあ、来なくても、いまだに古いフィルムで彼は演技している。彼はまだまだ生きていくのだろうと思う。映画というコンテンツの素晴らしさは作品として永遠?に残り、語り継がれることだと思ったりする。


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