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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年6月の記事一覧

「神は見返りを求める」現代のデタラメな社会の中に神は存在するのか?と鋭く背中を突き刺す傑作!

昨年の「空白」で私を異次元に引き込んだ吉田圭輔監督。その新作が今かかっていると昨日気付いて観に行く。だいたい、主演が、ムロツヨシと岸井ゆきのって、気になって仕方なかったのだ。結論からいうと、またまた傑作だった。昨日観た「ベイビー・ブローカー」なんかに比べても、社会風刺のパワーが格段に強烈だった。そう、そう、今の日本、こういう裏切り、悪口、罵り合いみたいのことが、リアルでも、ここにあるようにネットでも溢れかえっている。そんな、世の中の空気感を見事に映像で繋いで、観客に「帰るとき

「ベイビー・ブローカー」子供は未来のための宝物的なテーマ性はわかるが、あまりにも坦々過ぎて…。

昨今は、河瀨直美監督に対する風当たりが強いが、カンヌに愛されてる的なものでは、是枝裕和監督も同じだろう。この映画もカンヌで最優秀男優賞とエキュメニカル審査員賞の二冠を獲ったということである。作る映画のテーマ性もあるが、国際映画祭で皆が注目を集め、わかりやすい映画というところでは、彼がそれなりに賞を獲るのはわかる。演出的にも、河瀨監督の作品に対したら、空気感は好きである。独特の映像をつなぐ力は確かにある。だが、エンタメ性みたいなものに関してはいつももの足りなさを感じる。この映画

「恋は光」爽やかに撮り上げられた、恋愛哲学劇!

先週、封切りの映画だが、今週はもう1日に1回の上映。客は入らなかったのだろう。でも、今日、平日の昼間だったが、5分の入り。私もそうだが、ネットでそれなりの評価が出ているのを見てのことだろう。昨日書いた「ハケンアニメ!」の話もそうだが、興行側が宣伝しない分、SNSなどで流れる観客の生の声が実に重要な時代であると思った。 コミック原作の映画化だが、小林啓一監督の手腕はなかなか堅実。そして主人公たち4人神尾楓珠、西野七瀬、平祐奈、馬場ふみか、のそれぞれに個性的なコントラストも相ま

「メタモルフォーゼの縁側」これが、あるべき姿のPLAN75だろうと!思ったわけですよ!

鶴谷香央理、原作の漫画を岡田惠和が脚色、狩山俊輔が監督した作品。「阪急電車」以来の芦田愛菜、宮本信子の共演。あの映画の公開が2011年のようなので、11年後の二人。まあ、芦田がセーラー服が似合う年頃になったということであると納得する。観る上でいろんな要素があったが、安定の岡田惠和脚本だということが大きかった。そして、彼独特の柔らかくも、結構、見えにくい心の奥底に入っていくような作劇が、この話にうまくマッチしているなと感じた。 何日か前に「PLAN75」という、ある意味、リア

「峠 最後のサムライ」司馬遼太郎の原作を、こういう雰囲気で撮られる映画もこれが最後ではないかと思ったりした

私が河井継之助という名前を知ったのは、NHK大河ドラマ「花神」の中でだった。その時の役者は高橋英樹。ガトリング砲という武器を引っ提げて、長岡藩を日本のスイスにしようとした男というのが、すごく印象的だった。結果的には、長岡藩は、戦争後、いろいろ苦難を抱えたようで、河井自身はこの映画にあるように、最後まで侍でいたかったというのを通して死んでいったのだろうが、周囲には大きな迷惑な人と思っていた人も少なくないようだ。そういう意味で、いわゆる偉人という括りで語られる人物ではない気が私に

「PLAN75」結構、重い問題定義を、柔らかく、名女優の漂わせる空気感をうまく使いながらまとめられた佳作

早川千絵監督、初長編作品。実質的なデビュー作と言っていい。そして、カンヌのカメラドール特別表彰という栄誉も掴み、劇場のお客様の入りもそこそこだった。 高齢者、75歳以上の日本人が死を選べるという法案が国会を通ったというニュースから始まる。生命とは何か?そして、高齢社会を取り巻くさまざまな問題に、事務的にしか対応できない政治のあり方、そして、そんな命の問題にまで、まとわりつく利権。さまざまな怒りを映像の中に秘めながら、ゆったりした映像としてまとめられた一編。正直言って、ずーっ

「はい、泳げません」中年男のトラウマ脱出の話なのだが、色々、最後の爽快感みたいなものが足りない感じ。

月9のドラマで、その存在が生かされていないと私が書き続けている、綾瀬はるかですが、ここでも、もう一つ役として残念な感じでした。主役の長谷川博己のトラウマを三人の女たちがなんとかしようとする話なのですが、女性が三人いるために、その塩梅が悪い。綾瀬はるかは、水泳を教える人なので重要なのですが、その彼女が長谷川のプライベートに突っ込んでいくには、ちょっと無理がある感じが最後にしました。そして、彼女自身が、交通事故のトラウマで、街を普通に歩けないという人なわけで、彼女自身のトラウマも

「きさらぎ駅」人生そのものが異空間エレベーターのような気がしてくるホラー映画

大体、ホラー映画というものに関しては、ほとんど興味がなく、そういうもので好きな映画もないと言っていいだろう。強いて言えば、「エクソシスト」や「キャリー」などは、好きだったりもするが、あまり進んでそれを見にいく人ではない。 ネットで評価を見ると、結構しっかりした映画と書いてあったのと、他にみたいものがなかったこともあり、観に行った。結果的に言えば、なかなか丁寧な作りの映画という感想。そして、「きさらぎ駅」って、人生の中でやばいところに来てしまったみたいなこと?逃げ出す時には、

「トップガン マーヴェリック」大画面で体感する戦闘機の震えに高揚感を感じさせる、正義の映画。

前作が公開されたのが1986年。それから36年経っての続編。前作は1968年の話として、冷戦化の海軍の話であり、敵はミグとして、明確に描かれていた。そして、冷戦も終わり、今回のミッションは秘密裏に作られた核施設の壊滅。国は明確にされていないが、いうことを聞かない第三国というところなのだろう。そして、敵のパイロットが黒づくめなのは、アメリカだけが正義だと言いたいわけだろう。海軍の協力なしにはできない映画だから、ある意味広報映画のテイストはある。見終わった後には、なんか、昔懐かし