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悩ましい”値決め”について

中小企業の社長であれば、値決めの問題は常に頭を悩ます問題だったりします。今回は数年前から家電業界で起きている変革をご紹介しながら、値決めについて書きたいと思います。

中小企業に於ける値決めの実態

 いつからか、商品の作り手であるメーカーが値決めの決定権を失う市場構造に変わってしまいました。私も新しい事業を始めたとき、新製品を出そうとしたときに値決めは常に悩ましい問題でした。なぜ、苦労して製品を開発している我々メーカーが、こんなにも流通業に値切られてしまうのか。。。何度となく考えたことでした。

確かに流通を担う商社は、顧客を持っている。商社に扱ってもらわない事には、商品も市場に出回らない。自社の利益を削って商社にマージンを払ってでも、商品を売らなければならない。何度、経験したことか。。。

メーカーではなく、製造下請け企業の場合、発注元であるメーカーから毎年のようにコストダウンという要請の下、値切られるのが当たり前の世界になっています。

これが、中小企業の実態の一部ですよね。

稀に強力な商品力を持つ会社が存在し、直販でも自社の希望価格で勝負できる企業も一定数は存在します。でも、かなり稀ですよね。

どうしたら良いんだろう。。。いつも、悩んでいました。


値決めの考え方

 業種にも因ると思いますが、皆さんは通常、どのように価格設定をされていますか?

製造業でよくあるのは、原価積み上げ方式です。建設業でも同じですね。
原価を積み上げていって、利益をx%載せて提示価格を決めていくような感じです。

取引相手がいることなので、こっちの言値で簡単に受け入れてくれるものではないですよね。ただ、相手には通用しないという思考バイアスがかかっているが故に、値決めのやり方を変えられない呪縛に陥っている事も考えられます。

例え話で経営者の方へお話するのですが、ご自身の所得・給料を決める時にご家庭の原価に相当する費用を積み上げて決める人ってあんまりいないと思うんですよね。サラリーマンでも同じです。人事の人に対して、自分のパフォーマンス≒発揮する価値をベースに〇〇〇万円をくださいと交渉すると思います。

BtoBでも、自社の製品・サービスに対して売り手である自分たちが価値を感じているのであれば、価値に基づいて値決めを行い、交渉してみるのもアリかと思います。意外と受け入れてくれたりする場合もあるので、ダメもとで交渉する価値はあると思います。但し、経済的な価値を証明できるような理論武装は必要になってきますが、トライすべきと思います。


家電業界の動き(パナソニックの事例)

 3年くらい前からPanasonicが始めた新しい戦略をご存知でしょうか?

量販店に行きますと、売価指定商品という値札が付いている商品があるのはご存知でしょうか?これは、3年ほど前からPanasonicが始めた方式で、量販店に在庫を抱えるのではなくメーカーが在庫を抱える代わりに売価をメーカーが指定するというやり方です。

この方式に変えたところ、Panasonicでは利益率が大幅に改善した事と、製品サイクルが長くなり新製品をじっくり開発する時間を稼げるようになったそうです。この成功を横目で見ていた他メーカーも追随しはじめ、同様の価格戦略が横展開されているようです。

消費者にとっては店頭での価格交渉が出来なくなったので、安く買えないという面はありますが、一方ではどこで購入しても同じ価格なので価格交渉や安価な販売店を検索する時間が不要となります。困るのは、量販店ですよね。これまで価格勝負で競争していた業界ですので、差別化となる値引きという武器が使えなくなり、量販店同士の差別化が難しくなり、さらには買い物客が店頭で品物を確かめネットで買ってしまうという現象が起きており、困っているようです。

詳しくは、こちらの記事をご覧ください。https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/031100436/


まとめ

 ダメもとで価格交渉できないかトライしてみる。価格設定では、自社製品・サービスが顧客へ提供する価値にフォーカスして経済的な価値を考え直し、価値に基づいた値決めを行ってみる。中小企業であるならば、これは社長自ら先頭に立ってやるべきです。社長が出来ないことを社員にやらせようとしても無理です。まず、社長が突破口、先行事例を創り出し、部下に手本を見せる。そして部下もその様子を見て勇気づけられ、価格交渉に挑めるようになるはずです。

 我々コンサル業のような業種は、価格設定の根拠なんて説明できないようなビジネスです。自社のコンサルタントが提供する価値を考え、価格設定を行っていくしかありません。私の場合、他社の価格を引き合いに出されて交渉されるような案件では、自ら降りることもあります。自社の価値を理解し受け入れてくれるお客様を選別して取引を行っていくという方針です。

簡単な話ではありませんが、中小企業ではずっと原価積み上げにより価格設定が染みついている企業がたくさんあります。現代は、ネットの世界のように物理的な形が存在ものが高額の値段で取引されるような時代になっています。

この時代変化を理解した上で、一気には難しいかもしれませんが、積極的に価格交渉に挑んでみてください。メーカー側も適正な利益を得られなければ、結果としては持続可能な価値提供、取引はできない。市場に参加するプレーヤーが、適正な利益を得ながら持続可能なビジネスへと変えていくべきではないでしょうか?


以上、ランナーズ関根でした。
ブログアーカイブ:https://www.runs.co.jp/blog

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