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初めの連れ去り 16

そして、妻の妄想を延々と聞いていると、やっと妻の実家に到着した。

長女と一緒に、妻と長男を見送ると、すぐに僕たちも自宅に帰る帰路についた。

妻の自宅を出発してすぐに妻から携帯電話が鳴った。

何か車内に忘れ物でもしたのかな?

そう思い、車を寄せて電話にでた。

「さっき言ってた旅行の事やけど!もう予約しといたよ!それと家まで時間かかるやろうから、その間〇〇(長女)が退屈してるやろうから話させて」と一方的に話をしていた。

僕は「いつも、車内で〇〇(長女)とは話しながら帰ってるし、しばらくしたら寝るから大丈夫やで」と妻に話すと、急に怒鳴りだし「それはオマエの考えであって、お前の意見とか聞いてないねん!こっちも忙しいのに〇〇(長女)が退屈したら可哀そうやと思って気を使ってやっとんねん!早よ電話○○とかわれや!」と言い出したので長女に電話を手渡し、僕は運転を再開した。

10分ほどして長女が「眠たいから電話切って寝たい」と言っていたが、きっと妻に断られたのだろう・・・

困った顔をしながら目をこすりながら会話を続けていた。

そんな長女の様子を見ていると、可哀そうに思えて仕方がなかったので、横から黙って電話を切るボタンを押すと同時に携帯電話の電源をおとした。

きっと妻は今頃激怒しているんだろう・・・

長男に危害が及んでなければ良いんだが…と心配になった。

そして、長女は「そんなことしたらママにまた怒られちゃうよ…」と不安そうにしていたが「大丈夫!充電がなくなったから、明日ママにはパパから言っておくから!大丈夫だよ、眠たいやろ?家に着くまで寝てていいよ」と長女に言うと、長女は「うん!わかったよ!パパありがとう」と言い1分もたたない間に寝てしまった。

本当に眠たくて限界まで我慢していたんだろう…

妻は僕たちにとって、これ以上関わってはいけない存在なのかもしれないと、この時考えさせられた。

審判が終われば、きっと長男も僕たちの所に返ってきて、その時には母親は一緒には生活できなくなるが、きっと、その方が子供達にとっても良い環境になるだろうと、この時は子供が帰ってくると信じきっていた。

そして、数時間色々なことを考えながら車の運転をしていると自宅に到着した。

深く眠っていた長女を車から抱え寝室まで移動した後、家に荷物を運んでいると、長女を起こさないように気を付けていたつもりだったが、長女が起きて泣いていた。

「ママみたいに〇〇(長女)をおいたまま、お出かけしちゃったのかと思った」と不安そうに泣いている長女を抱きしめた。

妻は、別居中に子供たちが眠りに付くと、たびたび子供を放置して深夜に遊びに行き朝方になると帰ってきていたと長女から聞いていた事を思い出した。

そのあと、長女が目が覚めてしまって眠れないと言うので、時間が遅かったが長女と一緒に入浴し、この日は、そのまま就寝した。

そして、翌日予想通り、早朝から妻の激怒のクレーム電話がかかってきた。

僕の携帯は、朝5時に自動的に電源が入る様に設定していたため、午前5時01分から妻の名前が表示された着信履歴で埋め尽くされていた。

朝から気が重くなる出来事に、疲れ果てていた。

そんな弱音など吐いている余裕などもなく、朝6時には、長女を起こし朝食の準備をしながら、長女の着替えなどを済ませ、慌ただしく幼稚園の用意などをしていると、そんな朝の出来事なども忘れてしまっていた。

その日の夜、長女と妻が電話をしている時に長女を説得?したのか、妻との電話を終えた後、長女が「こんど、○○ちゃん(長男)も一緒に旅行に行くんでしょ?」と言っていた。

この頃から、だんだんと妻の身勝手さにストレスさえ感じる様になってきていた。

それからも、毎日のように長女と妻は連絡をしていたが、長女の電話の目的は長男と話せたり、妻と話しをしていても長男の声が聴けるという目的しかなかったみたいだった。

そして、数日が過ぎ次の面会交流の時がきた。

今回も、妻からの提案した場所での面会となったが、長女が妻と電話した際に、こちらの近くにある動物園に行きたいと言っていたので、長女のリクエストだという事で、こちら側に高速バスを利用して長男と来る形の面会交流となった。

実際、今回の面会交流は、長女のリクエストのおかげで、僕の負担が軽くなったと内心喜んでいた。

面会当日は、妻たちを乗せたバスが到着するバス停まで迎えにいく形となったが、双方の弁護士には、当日は動物園で現地集合すると伝えていた。

この日、妻は「今日は早起きして来たんだぞ!」と強調して言っていたが、それを僕は毎回してきているんだよ?と喉まで言葉が出てきていたが、ぐっとこらえた。

動物園に着くと、「財布を忘れたから今回はお金を出して欲しい!困った時はお互い様やんな?」と妻はバレバレの嘘を平気で言っていた…

結果、双方の弁護士から出された現地解散の約束は今回も守られないまま、夕方頃には「夕飯は塩ラーメンが食べたいから、調べておいたよ!」と平然と言っていた…

子供たちの前では、仲の良い所を演技でもいいから見せていたかったため、妻の横行にも我慢し、この日も妻の機嫌を損なわないよう従うことにした。

そして、妻たちの帰りのバスの時刻の事もあったため、早目に動物園を出て夕飯を食べに行くことにした。

子供達も動物園を堪能していたみたいで、たくさん見た動物のことを楽しそうに話していた。

その後は、妻のリクエストだった塩ラーメンを食べ終わった頃、信じられない出来事があった。

子供より先に食べ終わった僕が、まだ食べ終わっていない子供の食事を手伝っていたときの事、スマホをいじってなかなか食べない妻に長女が「ママなんで携帯ずっといじって食べてないの?」と言った長女の発言で、食べていたラーメンの器を長女に向けて、ひっくり返したのだ…

僕は、慌てて長女をかばうと、大声で長女を怒鳴りつけ店を出て行ってしまった…

驚いた長女は泣いてしまい、長男もつられて泣いてしまった。

何とか子供を落ち着かせて、残っていた食事を食べさせていると、再び店内に戻った妻は「いつまでトロトロ食ってんねん!早よ出てこいや!こっちは待っとんねん!」と怒鳴り出した。

そんな妻を見て、子供達は驚いて震えていたため、2人を抱きかかえてレジへと向かい慌てて清算を済ませた。

店を出て車に子供を乗せて待っていると、妻はしばらくしてから車にやってきた。

機嫌が悪くなった妻を車に乗せ、帰りのバス停へと向うことにした。

車内では、みんな無言で重い空気が流れていた。

バス停に到着する少し前のこと、カバンから妻はビニールに入った器を取り出した。

さっきのラーメン店のご飯を入れていた器だった…

続く…

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