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初めの連れ去り 19

前日のテレビ電話で急に妻から怒鳴られたことを、翌日になっても長女は気にしていた影響で、いつもより少し元気がなく口数も少なくなっていた。
何とか普段の明るい長女に戻ってもらおうと、僕は色々と何気ない話をしながら二人で朝食を食べた、そして幼稚園の準備をし家を出る頃には、ようやくいつもように明るく元気な長女の姿に戻っていた。
僕も、そんな長女の姿を見て、ほっと胸をなでおろし笑顔で長女を幼稚園へと送って行き「またね」と笑顔で長女を見送った。
そして、仕事を終わらせて長女を幼稚園まで迎えに行き、園の先生と話をして帰ろうとした時だった、妻から着信があった。
「もう幼稚園からの帰りやんな?今から電話できるよな?」と低い声で問いかけてきた。
なぜ、この時の僕たちの行動を妻が知っていたのか後から真相を知って驚いた。(妻は以前、幼稚園で連絡先を交換していたママ友たちと別居後も連絡を取り合っていて、園の行事ごとなどを聞いたり長女の写真をママ友たち数名に撮影してもらい送ってもらっていたらしい)

べつに妻へ嘘をつくことでもないので、「今から帰宅するから、買い物を済ませて家に到着したら、またこちらから連絡するね?」と妻へ伝え電話を切った。
妻は、まだ何か言っていたみたいだったが、妻からの着信に気付いた長女がとても不安そうにしていたので、とっさに機転をきかせたツモリだった。

買い物へ向かう車内でも、長女は「ママと今日も電話するの?」「もし電話したくないって言ったらパパ困っちゃう?」「パパが悲しくなるんだったら我慢するけど…」と言っていて気を使わせてしまっているんだなと胸が苦しくなった。

その後、長女とスーパーで買い物を済ませた後、幼稚園で遊び疲れたのか長女は車内で僕と会話をしながら眠ってしまった。
家に到着し、先に買い物をしてきた荷物を車から降ろし、車と家の往復を何度かしていると、長女は目が覚めたのか「パパごめんねお手伝いしようとしてたのに…」と残念そうにしていた。
そして、家に入りスーパーで買い物をした食材を冷蔵庫に入れたり、洗濯を済ませたり、掃除機をかけたりと毎日のルーティンをテキパキとしていた頃に、再び妻から電話がかかってきた。
電話に出ると、こちら側が話す前に妻の怒鳴り声が聞こえてきたので、僕は一気に気が重くなった…
「家に着いたら連絡するって言うてたのに何でスグに電話をかけてこないんや!オマエは嘘つきか!」と言う内容だった…
たしかに家に到着したら電話するとは言ったが「長女も寝ていて起きたばかりだったし、先に家事を済ませてから、ゆっくり電話をかけたかった」と伝えたが、妻の罵声はとまらなかった。
そんな状態で、長女とテレビ電話をさせるのも気が引けたので、妻の気持ちが落ち着いてからと思い、5分後にこちらから電話すると伝え電話を切った。
すると長女は、そんな雰囲気を感じ取ったのか「パパ困っちゃうしママと電話してもイイよ」と言ってくれた。
なんだか長女に気を使わせてしまっている事に心の底から申し訳なくなった…

その後、こちらから妻へ電話をかけた、最初は長女と長男、そして長女と妻の順番でテレビ電話をしていたので、その間に夕飯の支度を済ませた。
僕も家の事が落ち着いてきたので、長男と少し話そうと思い長男に話しかけた瞬間「お前は会話に入ってこんでええねん!」と急に電話を切られた。
本当に勝手な性格だと感じながら心底ガッカリした。

そして、長女と夕食を食べたあとお風呂に入り長女を寝かしつけようとした頃に再び妻から電話が鳴った。
「寝る前に何で電話かけてこないねん!お前が会話に入ってくるから電話切ってもぉたやんけ!」と妻は自分勝手な発言をまた繰り返していた。
午後9時も過ぎていたため長女を寝かしつけた事を伝えると妻は「起こして」「お前のせいで話が全然てきんかった」と自分勝手な発言をしていたが、妻と電話をしていると長女が怖がり寝付けなくなるため妻には悪いが、今度はこちらから勝手に電話を切った。
きっと明日も怒りの電話がかかってくるんだろうと思っていたが、子供のためを思うとしかたがなかった。

そんな日常が数日続き、次の面会の日が近づいてきた。


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