見出し画像

初めの連れ去り 17

まただ…     また店から器ごと盗んできた…

本当に妻の神経を疑ってしまう…

親としての自覚があるのだろうか? 本来なら子供の手本となり社会の常識を教える立場の人間が、今後このような存在で良いのだろうか…

その光景を見た僕は何も言葉が出てこなかった。

バス停に到着し、妻と長男を見送るため駐車場に車を入れようとしたら、「は?この状況で帰れると思う?普通常識的に考えて、こんな状態のまま帰らせれるん?すごい性格悪いよな?」と妻が言い出した…

最悪の展開だ…

「話し合う?仲直りする?」色々と提案してみたが妻からの返答はなかった。

その後も、時間だけが過ぎていき、最終のバスの時間がきた「もうこのバス乗らないと最終便になるよ…」と伝えても返答はなく、結局最終のバスは出発した。

ふと朝の妻が言っていた「財布を忘れてきた…」という言葉を思い出し、もしや?と思い、「財布がないからバスに乗れなかった?」と妻に問いかけてみた。

「財布くらい持ってるわ!アホちゃうか!」と言われた…

今日1日、散々支払わせておいて「アホ」とは何なんだろうか…

結局、妻の実家まで高速道路を使い送っていく事になり、往復の所要時間を考えると6時間を超える運転となった。

妻を送る道中も、機嫌が悪く一言も喋ることもなく妻はずっと眠っていた。

実家に到着し、起こした時にも何も言わず無言で長男を車から降ろすと家に入って行った。

ただただ疲れた1日となり、楽しかったことも忘れてしまっていた。

僕が自宅に到着する頃には、空が少し明るくなりかけていて、結局寝れないまま長女の幼稚園の支度をし、長女を幼稚園に送った後、そのまま仕事に向かった。

ここから2日ほど妻からの電話はなく、電話をかけてもでることはなかった。

正直、気が楽だったが… 3日後には怒りの電話がかかってきた…

「オマエふざけんなよ!悪いと思ってるなら電話出るまでかけてこいや!ほんまそういうとこ治らへんよな?常識考えろよ!オマエが謝り方わからへんなら、今度行く旅行代金全額負担するっていうなら許すことも考えるわ!」

全くもって妻の言う事に理解が出来なかった。

僕が、あっけに取られ言葉を失っていると「自分で決められへんのやったら、私が決めたるわ!許してやるから今度の旅行は全額払ってな!」

正直、吐き気に襲われた、そもそも旅行に行くと言っていないし、勝手に行く気になり、全額負担をさせる目的で、前回の面会時も、この事を実行するためタイミングを伺っていたんでは?と思ってしまった。

その後は、妻と話すことなく長女に電話を変わった。

そして、長女が妻と電話をしている間、家事を済ませていると電話を終了した長女が携帯を私の元へ持ってきて「ママと旅行行かないとダメ?」と聞かれ、長女に旅行の話をしていたんだなと把握したが、どうやら長女も行きたくないみたいだった。

前回の面会交流で、あれだけの事をしたんだから当然だろうと思っていたが、長女の話をよく聞いていると、長女は僕が悲しい思いをするんじゃないかと思い、自分が「行きたく無い」と言えば行かなくて済むんだと思っていたらしい。

長女の本心を、聞くと「長男と僕の3人で行けるなら行きたいけど、ママがくると楽しくないから行きたくない」と言っていた。

それから数日は、電話をする度に旅行の話ばかりで長女もウンザリしていた様子だった。

そして、ある日のこと妻からのLINEで「予約した旅行の振込期日が今日やから、指定口座に振り込んでてや!」とメッセージが届いた。

夕方まで悩んだが、怒る姿も想像できたし、ポジティブに考えて家族旅行に行く良い機会だと思い込み楽しめば良いという考えになり、結局旅行代金は支払った…

それから、旅行に行くまでの半月の間は、妻の機嫌がよくストレスも感じなかった。

半月ほど経過した旅行前日、妻と長男は再びバスでコチラまで来て、自宅で1泊してから旅行に行く事となった、近所の人に「あれ?奥さん戻ってきたん?」と声をかけられましたが「ちょっと色々ありまして、今日だけです」と答えた。

翌日は、朝から旅行に出発した。

なんだかんだで、長女も長男と会えたことで旅行先に着くまでの車内でも楽しんでいた、妻の機嫌も良かったので僕も妻とは普通に会話を交わしていた。

1日目は、旅行先の近辺にある遊園地でナイターまで堪能する予定で、夜には花火も上がる予定で、花火を観覧車から見て帰るという子供との約束だった。

この日は、妻も1日十機嫌が良くて、このまま永遠に今の状況が続けば良いなと思える日だった。

その後は、宿泊先でも楽しい家族での時間を過ごし、子供達も笑顔で過ごせていた。

2日目は、宿泊先のホテルで朝食を済ませて、午前中は、いちご狩りに行く予定を立てていて、子供達も初めてのいちご狩りを、とても楽しんでいた。

続く…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?