ユニコーン ドライブしようよライブレポ② in名古屋センチュリーホール(21.9.4)~人生初ライブ、初ユニコーン~

ライブレポ①ではお気楽に曲の感想や出来事を書いたが、ここでは私の人生初ライブ、初生ユニコーンの感動を真面目に書こうと思う。

開場時刻になり、さっそくホールに入る。スーテジ上は照明が落とされており、セットはあまりよく見えない。天井からぶら下がる「Drive You Crazy」の文字と、時折点滅する機材の光が私を高揚させた。

人生初ライブ・初ユニコーンの私と、再結成後初参戦の母、隣の席どうしで互いに気持ちが昂ってくる。開演時間が迫るにつれ、ジワジワと実感が湧いてきて、私は母の腕を強く掴んだ。

ブーーッ

開演を知らせるブザーが鳴り、声を出せずとも観客が色めき立つのがわかった。

流れてくる音楽、そのボリュームがどんどん上がる。まばゆい紫色の光が開場全体を照らす。観客は皆立ち上がる。私も、母も。

手拍子の数が増える。照明の点滅が激しくなる。まだはっきりとは見えないステージ上を歩く、5人の影。

一層激しくなるドラムの音が、パーンと弾け、何も聴こえなくなった気がした。私は、泣いていた。

1曲目、ZG。
まばゆい紫色の光が照らすステージ上、ハンドマイクを持った川西さんの姿が目に飛び込んでくる。

感動と興奮のあまり、一曲を通してあまりなにも覚えていない。涙で視界はぐちゃぐちゃだ。
ただ私は、あの光景を生涯忘れることはないだろう。まばゆい光の中、センターでマイクを握る川西さんの姿。それぞれのポジションで演奏するメンバーの姿。
忘れることはない。忘れられない。

ライブ全体を通して、スマホの画面や映像では到底伝わりきらない、ユニコーンというバンドの底力とスキル、各メンバーの魅力が存分に伝わってきた。

特にそれを体感したのが、川西さんのドラム。

1曲目、ZGで民生さんのドラムを聴き、2曲目のWAO!で川西さんにドラムが交代したとき、そのあまりの差に驚いた。

もちろん民生さんもお上手だ。しかし、川西さんが圧倒的すぎる。

スネアを1音叩いただけ。ただそれだけなのに、どうしてこうも説得力があるのか。

以前から、「ユニコーンのドラマーは川西さんしかいない、民生さんも川西さんのドラムを欲してた」という話は聞いていたし、スマホの画面越しでも川西さんのドラムのパワーは伝わってきていた。

しかし実際に生でその音を聴き、振動を直に鼓膜で捉えると、その言っている意味が、「本当に」理解できた気がした。

まるで、襟首を掴まれ、身体全体を引っ張り上げられるような。こっちの意思など関係なく、力ずくで無理やり引き寄せ、その嵐の渦の中に放り投げてしまう。
そんな、ダイナミックで圧倒的なパワーを持つ、唯一無二のドラム。

川西さんは、音楽に詳しい評論家などに「ドラムが走り気味」などと書かれたり言われたりすることが多く、ご本人も自覚なさっているようだった。もちろん他のメンバーもそれをわかっている。

しかし、そういうことではないのだと思い知らされた。そして民生さんが求めているのも、そういう精度や、リズムキープや、精巧な技術ではないということも。

民生さんは「ライブ」を求めている。その場の空気の全てをかっさらい、他の誰も入る隙間がないほど、世界を自分のものにし魅了する。

リズムキープをするだけでいいのなら、機械を使ってしまえばいい。民生さんが求めるのは、生で聴くからこその破壊力、グルーヴ。何もかも捩じ伏せる圧倒的なパワー。

その核となるドラムが叩けるのは、恐らくこの世で川西さんただ一人だ。
そして民生さんの規格外の大迫力ボーカルを支え、共鳴することができるのも、川西さんただ一人。

変な話、民生さんが歌うと、その迫力に楽器が負けてしまうことがしばしある。それこそ、ドラムが「ただリズムキープをしているだけ」の状態になることが。
しかし、川西さんのドラムのときだけ、ドラムも「共に演奏している」状態になる。民生さんに負けず、かといって邪魔するわけでもない、共に響き合い、共鳴し、ひとつの音楽を創り上げる状態。

ユニコーンというとどうしても民生さんが注目されがちだが、ユニコーンの素晴らしい音楽の土台には、この人がいないといけないんだと、生で聴いて改めて感じさせられた。

そして手島さん。
シンプルに、ギターが上手い。
わかってはいたが、生で聴いてその上手さにかなりの衝撃を受けた。

曲中にたびたび来るギターソロ。
阿部さんも民生さんもギターソロがあり、お二人とも個性が出て素敵だった。

が、手島さん、上手すぎる。
全く濁りのない、澄んだ音質。
ライトハンドなどのテクニックももちろん素晴らしいが、私は普通に弾いている時の音の良さに非常に魅力を感じた。

どこまでもクリアで、誤魔化しのない、鮮やかでくっきりとした音色。
それでいて音に柔らかな丸みがあり、ヴィンテージの深みと熟練の色気が滲み出るような、そんな演奏。

普段はメンバーみんなを尊敬し、「俺なんか…」と低姿勢だが、とんでもない。
川西さん同様、ユニコーンの土台を担うのは手島さんしかいない。

民生さん、阿部さん、EBIさんももちろん素晴らしかったが、今回の初ライブではこのお二人の演奏の素晴らしさに心を持っていかれた。


人生初ライブ、初ユニコーン。
私はもっと泣いたりわめいたり、ライブ後に「いやだ、まだ聴きたい!帰りたくない!」となると思っていた。

しかし実際は、自分でも驚くほど冷静で(一曲目を除き)、騒いだり泣いたりすることはなかった。

アンコールが終わり、最後までステージに残っていた川西さんが袖に捌ける。規制退場のアナウンスが場内に響き渡り、人々はそれぞれライブの感想など話をしながら会場をあとにする。

そんな中、私と母は、互いに一言も話さなかった。ただ黙って照明の落ちたステージをしばらく見つめ、立ち上がり、ホールの外へ出た。

そこから建物の外に出るまで、私と母は何も話さなかった。
駐車場へ向かう間、やっと私が口を開く。

「いやー、良かったね。」

母も返す。

「良かったね。想像以上に良かった。」

それだけで充分だった。

私はもともと、映画や小説に感化されやすく、例えば悲しい映画を観たあとだと、3日ぐらいはその悲しい気持ちを引きずってしまう性格である。それは逆も然り、楽しいとその場を離れたくなくなり、かえってしんどい思いをしがちでもある。

今回もそうなると思っていた。
「帰りたくない、もっと聴きたい」と、苦しい思いをすると思っていた。

しかし、ライブを見終わり、車に戻ったときに感じたのは、

「ライブ良かったなぁ。楽しかったなぁ。
よし、家に帰ろう。」

だった。

驚くほどスッキリと気持ちが切り替わり、「じゃあ、帰ろう」と思えた。

なぜそう思えたのか。




きっと私は、お腹いっぱい、満足したのだと思う。



素晴らしい音楽、楽しい空間、メンバーの皆さんの笑顔とファンへの優しさ、その全てをたらふく食べ尽くして、

「もうお腹いっぱい!楽しい!幸せ!!」

と心から大満足したのだと思う。

今まで私にはそんな経験がなかった。
いつも、「もっと観たい、もっと聴きたい」とばかり思っていた。

そう思わせるのは、案外簡単なのではないかと思う。

「もっと観たい、聴きたい」という欲を掻き立てること、それは裏を返せば「まだ満足していない」ということ。

もちろんそういう思いを抱かせることが悪いことだとは思わない。むしろ、さらに夢中にさせるという点において、新たなファンを取得する手段だとすら思っている。

しかし、「もっと観たい、聴きたい」と思わせることと、「もう大満足!さあ、帰って寝よう!」と思わせること、どちらの方が難しく、そしてクオリティが求められることなのか。
私には、後者の方がハードルが高いように思える。

ユニコーンはそれを、平然とやってのけた。
なんの未練も心残りもなく、
「楽しかったー!また来たいね!よし、帰ろう!」
と観客に思わせた。

実際に、どの観客もライブが終わるとサッとモードが切り替わり、晴れやかな顔をして帰路につく。
誰一人としてその場に留まり、メソメソと不完全燃焼の者はいなかった。

簡単なように見えて、誰にでもできることではない。
そこに、ユニコーンというバンドの真の底力を見たような気がした。


私の人生初ライブ、こんな状況下ゆえ、ライブの様子も少なからずいつもと違うところがあったと思う。

しかし私はこのライブに来たこと、初ライブにユニコーンを選んだことに1ミリの後悔もない。

人生初のライブを、こんなにスッキリと晴れやかな気持ちで締めくくってくれたユニコーンに感謝の気持ちしかない。

そして同時に、ユニコーンというバンドがいかに唯一無二の存在か、特別で素晴らしいバンドかがよくわかった。

そしてこのライブを通して確信したこと。


私は一生、ユニコーンのファンで居続けるだろう。きっと。いや絶対に。

ユニコーンに出会えてよかった。好きになれてよかった。音楽を聴けてよかった。
それが全て。



ライブレポ②、相変わらず長文になってしまったが、人生初のライブの記録としてここに残しておく。


ありがとう、ユニコーン。心から愛しています。

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