緊急手術は辛いよ
手術には大きく2種類ある。
予定手術と緊急手術だ。
予定手術とは、術前の検査を行い(外来または入院)、手術の日取りを前もって決めて臨む手術のことであり、外科医のメイン業務である。
一方、緊急手術とは予定外の手術を指す。
なぜ緊急手術が必要なのかというと、「待てない状態」があるからだ。
例えば消化管穿孔といった、胃や腸に穴が開いてしまった場合、腹膜炎という状態になってしまいすぐに手術を行わないと命に関わる。
そんな訳で緊急手術というものも我々外科医にとっての重要な業務の一つである。
そして、これが中々に辛い。
なぜなら緊急手術とは、手術の必要性の判断、各部署への対応のお願い、術前説明、手術、術後説明、術後管理、これらの業務が突然襲いかかってくることを意味するからだ。
緊急手術と予定手術とでは大きく異なる2つのポイントがある。
まず初期対応時点で迅速な判断が求められる点だ。
手術が本当に必要なのか、保存的治療で対応できるのか、手術をするにしても今すぐ必要なのか、明日まで待てるのか、などを短時間で判断しなくてはならない。
外科医として駆け出しの頃は特に負担の大きい部分だろう。
次に人集めをしなくてはならない点だ。
助手の外科医、麻酔科、手術室のナースに声を掛けなくてはならない。
献身的なスタッフに囲まれた職場であれば何の苦も感じないだろうが、逆の場合は悲惨だ。
方々に頭を下げ、嫌な顔をされながら「手術をさせて下さい」と頼み込まなくてはならないこともある。
外科医も好き好んで緊急手術を選択しているわけではない。
やらなくて済むのであれば極力緊急手術は避けたいというのが普通の外科医の感覚だろう(一部の例外はあるであろうが)。
患者さんの救命のため必要であるから、夜中であろうが休日であろうが手術を選択するのだ。
身の回りに緊急手術をしようとしている外科医がいたら、せめて嫌な顔はせず普通の態度で接してあげて欲しい。
今日も日本中の病院で緊急手術が行われており、判断に頭を悩ませ、患者さんのために動き回っている外科医がいるだろう。
周囲のスタッフなしでは実行できないのが手術だ。
苦渋の決断を下した外科医の周りに少しでも、緊急手術を行いやすい穏やかな雰囲気があればいいなと願わざるを得ない。