ショートショート【次の碧まで】

彼と私が別れる交差点

街灯の淡く儚い光で彼の横顔が少し見える

またすぐ会えると分かっていてもいつもここで離れるのを惜しんでしまう

歩行者信号が青を示したのを見て私は「次まで」と話を続ける
私が今日見た夢を彼は「変なの〜」と笑った


また青になった
もう少しだけ一緒にいたいと思った
繋いでいる手をぎゅっと握り直した

「次で最後ね」

そう言われるのを分かっていたかのように彼は優しく「はいはい」と言った
手を繋いだまま、「明日は何をしようか」「久しぶりにオムライスを作ってよ」「買い物してから家行くね」なんて話した


いつもと変わらない今日が終わる
彼の瞳に小さな青い光が映った
2人の手の間に冷たい風がすり抜けた



家までの道中で彼は命を落とした

飲酒運転のトラックに轢かれて


一日中一緒にいて話も尽きて
3回目の青信号で「もういいか」って思った

この「もういいか」が結果的に一生の
私と彼の間の全ての「もういいか」になってしまった



4回信号待ちをする程好きだったら

あと1回分好きじゃなかったら



時々私は青の歩行者信号で足を止める
信号待ち1回分の小さいようで大きな愛

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