ショートショート【想いを追う】


駆ける足音の止まる先が自分の横では無いことを無意識に理解し振り返らなくなったのはいつからだろう。この景色からビルを引いても密集する家を間引きしても上を通る道路を落としても忙しく動く人々を吸い込んでもふるさとにはならない。いくつかの知った声を撒き、緑の香水をふっても、だ。君がいなければ、僕の心の安らぐ場所は…
ただ、電車が過ぎたすぐ後のホームで、マフラーに顔を埋めてハッピーエンドを聴いていると、いつかの懐かしいあの場所に戻れた気がした。

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