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"オタメシカノジョ" ~Prologue~

"オタメシカノジョ"

"私と君のルール"

1.  "オタメシカノジョ"期間中はお互い"本当の恋人"として接すること。

2.  "オタメシカノジョ"については他言無用である。

3. "オタメシカノジョ"に期限はなく、"君の方から申し出る"ことで終了とする。

4.▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇。

私は以上の事に同意し、"オタメシカノジョ"を利用することを承諾しました。

署名        山下◯◯

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人生とは不公平である__なんて呟いてみて思う。"当たり前だ"と。


そもそも平等であるはずがないんだ。同じ人間なんて誰一人いないこの世界は__


◯◯:っ!...朝か...。


アラームの耳障りな音が、気怠い一日の始まりを告げる。


気乗りはしないが身体を起こし、部屋を出て1階へ降りると、キッチンに姉の後ろ姿。


美月:...お、今日は早いじゃん。おはよ。


◯◯:...ん。今日からちょっと早く出ようと思ってさ。


美月:...ふーん。まぁいいけど。朝ごはん食べる?


◯◯:...今日はいいや。ありがとう。


支度を済ませ、家を出る。時刻は7時前。これなら大丈夫な筈だ。


??:ちょっと!何で置いてくの!?


背後から聞こえる怒声。今日も振り切れなかったようだ。


◯◯:...用事があってね。


??:嘘ばっか!どうせ屋上でダラダラするんでしょ?


凄まじい怒気と共に現れたのは井上 和。隣の家に住む同級生。所謂"幼馴染"というやつだ。


◯◯:...和こそ僕と一緒に行かなくたって良いじゃん。..."先輩"と行けば?


和:あのね...先輩の家は反対方向だし、朝練あるからアンタなんかよりずっと早く道場着いてるの!それに...美月姉にアンタのこと頼まれてんだから。


◯◯:...もうこの歳になって寝坊なんかしないよ。


和:...そういう事じゃなくて...もう!なんでわかんないかなぁ...


いつも通り痴話喧嘩しながら歩いていると、あっという間に大学に到着する。正門の前に見たくない顔。


和:...あっ!!せんぱーい!


先輩:...和、おはよう。◯◯君も。


◯◯:...おはようございます。


にこやかに微笑む彼は神村先輩。弓道部の主将でエース。そして、和の恋人でもある。


神村:...今日は2人とも随分早かったね。


和:えへ、先輩に早く会いたくて...


言いながら先輩の腕に飛びつく和の横を無言で通り過ぎ、正門をくぐる。


神村:あっ...◯◯くん...そういえば途中入部の件...


◯◯:...前も言った通りお断りします。僕には無理ですから。


振り返らず言い捨ててその場を去る。今は一刻も早くこの場を離れたかった。


背後から聞こえる声を置き去りにして向かったのは大学の屋上。普段なら誰も人が来ることはない場所。


誰も来ないのに置いてあるベンチに寝転び、空を見ることなく目を閉じる。


◯◯:...


____愛する人が幸せならばそれでいい。






___それって逃げただけだろ。


告白する勇気のなかった自分から。


自分以外の誰かに好意を寄せる君から。


この世界は平等じゃない。


自分より優れた人間、魅力的な人間などいくらでもいる。

でもやっぱり思うんだ。


和が幸せならそれでいい。


___隣にいるのは僕じゃなくてもいいって。


◯◯:...つまんない人生だな。弱い。


??:...そうなの?


◯◯:っっっ!?!?


心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。


目を開くと、誰かが僕の顔を覗き込んでいる。女の子だ。

◯◯:だっ...誰っ!?


??:ぷっ...あっはははははっ!!面白い顔ー!


女の子はのたうち回りながらひとしきり笑った後、僕の方に向き直った。


??:私、一ノ瀬美空!君は?


◯◯:...僕は...山下。山下◯◯。


美空:◯◯くん!よろしくね?ところで何でこんなところに寝っ転がってたん?


◯◯:...それは...まぁ...何となく。


起き上がり、改めて彼女の方を見る。正直言ってかなり可愛い。和とはまた違うタイプだけど。


美空:...わかった!失恋したんやろ?そういう時ってこういうとこ来るの定番やもんね!


◯◯:.........


美空:あっ...もしかして図星やった?冗談のつもりやったけん...


◯◯:いや...いいんだ。むしろ笑ってくれ...


きっとヤケクソになっていたんだろう。急に現れた一ノ瀬美空と名乗った彼女に気付けば僕は和との身の上話をしていた。


美空:...ふーん...そっかぁ...でも何か...変やない?それ。


◯◯:...え?


美空:...だって...◯◯くんさっきからその"ナギちゃん"のことばっかり。自分の幸せは?ホントにナギちゃんが幸せなら◯◯くんも幸せなん?


◯◯:...わかってはいるんだよ。でも現実はそう上手くいくもんじゃないんだ...恋愛経験も少ない僕には無理だったんだよ。


ライバルは部活のエースで成績も優秀。オマケにイケメン。僕に勝ち目は無い。


美空:...んー...あっ!そうだ!!


彼女は何かを思い付いたように自分のカバンから紙とペンを取り出し、何か熱心に書き始めた。


美空:これ!見て!


◯◯:んん...?オタメシ...カノジョ?


紙には大きな丸文字で"オタメシカノジョ"と書かれていた。その下には"私と君のルール"とあり、いくつかの項目が箇条書きになっている。


◯◯:...どういうこと?


美空:経験が少ないなら...練習すればいいんよ!私で!


◯◯:...はい?


美空:いいから!ちゃんと読んで?


◯◯:えーっと..."1.  "オタメシカノジョ"期間中はお互い"本当の恋人"として接すること...?


美空:そう!私と恋人ごっこして、女心をお勉強して...ナギちゃんにアタックするの!どう?名案やない?


◯◯:...いや...でも一ノ瀬さんはそれでいいの?


美空:もちろん!これは冗談やないよ?だってこのままじゃ納得いかんもん!


真剣な顔の彼女の目には強い意志を感じる。


美空:心配しなくても大丈夫!ここ読んで?


◯◯:えっと... 3. "オタメシカノジョ"に期限はなく、"君の方から申し出る"ことで終了とする...


美空:やめたくなったらいつでもやめられるけん、ね?悪い話じゃないと思うよ?


確かにその通りではある。何度も言うが目の前の彼女は控えめに言ってかなり可愛い。こんな子と"ごっこ"でも恋人になれるなんて...

◯◯:...わかった。やってみる。一ノ瀬さんは本当に後悔しないんだね?後さ、この最後のやつは何?


項目の最後、4番目のルールが、黒く塗りつぶされている。


美空:あっ...それはね...必要ないけん消したやつ...気にしないで?...そしたらここにサインして?


◯◯:...何かここだけ本格的だな...はい。


消された4つ目のルールが少し気になったが、言われるがままにサインした。


美空:じゃあこれで私は◯◯の彼女になりました。私のことも美空って呼んでね?よろしく!


満面の笑みで腕に抱きつかれ、思考が停止する。
女の子の髪のいい香りと、破壊的とまで言える上目遣い...


◯◯:う...うん...よろしくね...その...美空...


美空:えへ...照れとるん?可愛いー♡


今思えば正常な判断など何一つ出来ていなかったが、沈んでいた僕の心は一気に空まで舞い上がったかの様。



こうして僕と彼女の不思議な関係"オタメシカノジョ"が始まった____


______________be continued.


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