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"オタメシカノジョ" 第1話

自分の気持ちに正直になるのは難しい。


___嘘をつくのはもっと難しい。


美空:はい!卵焼き!あーん♡


◯◯:う...うん...


美空:ふふ...美味しー?


◯◯:...うん!とっても美味しい!


美空:えへへ...早起きしてよかったー♡


次の日の大学の屋上。僕は"彼女の手作り弁当"を頂いている。もちろん"彼女"の手から。


◯◯:(...これが...彼女...!!)


___浮ついた気持ちを収めることなど、不可能だった。


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第1話
"カリソメ"
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今日も耳障りなアラームの音で目覚める。

◯◯:...


何だかよく分からない夢を見たせいで寝覚めが悪い。


◯◯:(...何だよ..."オタメシカノジョ"って...)


我ながらおめでたい夢を見たものだ。

溜息と共にベッドから降りて支度をしていると、階段を登ってくる音。

扉を壊す程の勢いで姉が部屋に入ってきた。


◯◯:...何事?

美月:...ね...ねぇ!玄関に...あ...あんたの"彼女"だって子が来てるんだけど...!?


◯◯:...!?


急いで階段を降りると玄関には一ノ瀬さんの姿が。


美空:おはよっ♡来ちゃった♡


...どうやら昨日の事は夢ではないらしい。


走馬灯の様に昨日の出来事が頭を巡る。そうだ。あの後僕の家まで彼女が送ってくれたんだった。


___あまりに現実離れした出来事だったせいで夢だと思っていたらしい。我ながら情けない。


◯◯:お...おはよう...


美空:待ってるけん一緒に行こ?


◯◯う...うん!すぐ支度する!


急いで部屋に戻り、支度をして部屋を出た。途中で呆然とした表情の姉とすれ違う。


美月:あんた...いつの間に彼女なんか出来たの...?しかもあんなむちゃくちゃ可愛い子...


◯◯:ま...まぁね...行ってきます。


美空:お姉様!朝からお騒がせしてすみません。また改めてご挨拶に参りますね?


美月:あ...はい...行ってらっしゃい、2人とも...


まだ現実を受け入れられない様子の姉を玄関に残し、僕らは家を出た。


美空:...ごめんね?びっくりさせるつもりはなかったんやけど...


◯◯:う...ううん!全然!嬉しいよ...一ノ瀬さ...あ、いや...その...美空。


気恥しさで彼女の顔を見ることが出来ない。


美空:えへへ...良かった。これから毎日来るからね?それにしてもお姉様超美人やね!びっくりしちゃった!


そう言うと彼女は僕の腕に手を絡めてくる。急に彼女の良い香りが鼻腔を満たし、脳がフリーズする。


◯◯:...えっ...えっ!?


美空:...何で?恋人ならこのくらい普通やない?


◯◯:そっ...そうだね...はは...


美空:もうー変な◯◯!えへへ♡


満面の笑みでこちらを伺う美空。これは...想像以上にやばいかも知れない。

◯◯:(...ダメだ。少し落ち着こう。聞かなきゃいけないこともある)


産まれて初めて"彼女と登校"というものを経験した僕は、ぎこちない足取りで美空と共に講義を受ける。少し周りの目が気になったが、それもだんだんと優越感へと変わっていくから不思議だ。


お昼。いつもなら食堂で食べるのだが、今日は屋上へ向かった。昨日まで1人で寝転んでいたベンチに2人で腰かける。


美空:ホントにここが好きなんやね。


◯◯:...何となく...ね。


周りの目が気になってここに来たとは言えなかった。


美空:そうそう!見て!お弁当作ってきたけん、一緒に食べよ?


◯◯:...!!!お弁当...!!


彼女が鞄から取り出した可愛らしいお弁当箱の中には、絵に書いたような手づくりのお弁当。


美空:頑張って作ったけん、食べて?はい、食べさせてあげる♡あーん♡


◯◯:...!?あ...あの...


美空:...どうしたん?もしかして卵焼き好きやなかった?

卵焼きを僕の口の前に差し出しながら残念そうにする彼女。


◯◯:いっ...いやいやいや!大好きだよ!い...いただきます...


恐る恐る彼女の持つ箸から食べる。むむ...?これは...


◯◯:...うん...美味しい!


美空:ホント!?嬉しい!早起きしてよかったー!!♡ほら、タコさんウインナーもあるけん食べて?

差し出されるままに食べ続け、気付けばお弁当は空になっていた。


美空:はい、おしまい!いっぱい食べてくれてありがと♡


◯◯:こちらこそありがとうね。美味しかったよ。


美空:...えへへ。嬉しい。


◯◯:...そういえばさ。聞きたかったんだけど。


頬を赤らめる彼女を見て、ふと思い出した疑問を投げかける。


美空:なぁに?何でも聞いて?


◯◯:...美空はさ...どうして僕と"こんな事"してくれようと思ったの?なかなか出来る事じゃないと思うんだけど。


彼女は昨日"納得がいかない"と言っていた。しかしそれだけでその日会ったばかりの見ず知らずの男にここまで出来るものなのか?


彼女は少し間を置いて、僕の頬に優しく触れた。


美空:...ただの...興味本位やけん...気にせんとって?


吸い込まれそうなほど綺麗な瞳に鼓動が早くなる。しかし...


◯◯:...興味本位...か。


美空:別に悪い意味じゃないんよ?フラれて落ち込んでる◯◯を慰めたかった...みたいな?

◯◯:そっか...ありがとうね。


美空:とっ...とにかくこれは私が勝手に始めたことやけん、◯◯は気にせんでいいよ?なんなら本気になってくれても...なぁんてね♡


ウインクしながら僕の唇に人差し指で触れる彼女。


心臓が跳ね上がる。


◯◯:...っ!?もう...からかわないでくれよ...


美空:あっはは!ごめんごめん...すぐ本気にしちゃうのも可愛い♡


美空はひとしきり笑った後、急に真剣な目をしてこちらを見た。


美空:...でもね、◯◯に幸せになって欲しいのはホントやけん、信じて欲しいな。私の事、"本当の彼女"やと思って接していいからね?"ナギちゃん"と結ばれる為に、"私で練習"、わかった?


◯◯:う、うん...


◯◯:(..."練習"...ってことはやっぱり"これ"は恋人ごっこでしかないんだね...)


改めて実感させられる仮初の関係。僕は追求するのを諦め、僕の肩に預けられた美空の頭をそっと撫でた。


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___自分でも活発な性格だと分かっていた。幼い頃から男勝りだと周りに言われ、特に挨拶の声が元気だとよく褒められていた。


しかし、その時ばかりは何故か声が出なかった。


彼が...女の子と腕を組んで歩いていたのだ__


隣の家に住む彼を起こし、一緒に登校する。小学校くらいからの私の毎朝の日課だ。


彼とは特別仲が良かった訳じゃないけど、小さい頃から一緒にいる安心感は感じていたし、これからもずっとこうするんだろうなぁと、漠然と感じていた。


だから高校も大学も同じ所を選んだ。


__別に彼のこと好きな訳じゃない。現に大学に入って私には恋人が出来た。先輩のことは大好き。一緒にいられて幸せ。


それでも毎朝の日課をやめようとは思わなかった。今日までは。


和:(...あの子は誰?まさかアイツ彼女なんかいたの!?)

様々な思いが頭の中を駆け巡る。


考えたこともなかった。彼が他の女の子と仲良くするなんて。


彼は昔から独りが好きで、特定の誰かと一緒にいるなんてことなかった。私以外には。


和:(...まぁでも...これで良かった...のかもね)


胸に残る正体不明のモヤモヤを吐き出し、私はいつもより少し遠回りで登校した___


___________be continued.

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