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読書02.当たり前を疑うと新しい景色が待っている(ゼロからトースターを作ってみた結果/トーマス・トウェイツ)

今僕は、東海道新幹線に乗りながらJINSのブルーライトカットグラスをかけ、iPhoneを使ってこのノートを書いている。喉が渇いたら駅の自販機で買ったポカリスエットを飲むし、肌寒ければUNIQLOで買ったシャツを羽織る。

当たり前に見えるこの光景だが、実はとんでもない文明の進歩によってもたらされたワンシーンである。

例えば、東海道新幹線は本来歩いて6日かかる品川〜岡山間をたったの3時間で運んでくれる。
とてつもなくでかい鉄の塊が、延々と伸びる鉄のレールの上を超高速で走る。さらにその鉄の塊の中にはトイレもあれば、コンセントも備わっている。即ち水も電気も通っている。そして運転席はコンピュータで制御されている。明らかにクレイジーな乗り物である。

それに比べてトースターは家電であるがゆえに、やたらと身近なものに感じられるが、その実、とんでもない文明の利器のひとつである。

本書は、「トースターを1から作る」という無謀で馬鹿げた挑戦に挑むひとりの美大生の物語だ。
でも、もはや、トースターができたのか、1から作るうえでルールをどこまで守ったのか、なんでトースターなのか、なんでこんなことしなくちゃいけないのか、
そんなことは全部どうでもいい話だ。

大事なのは、「トースターを1から作る」という経験を経て、「これまで当たり前に思えていたことの見る目が変わったこと」である。


たとえ1,000円くらいで投げ売りされているトースターでも、その中には鉄・銅・ニッケル・プラスチックなど、およそ素人にはどう加工すればいいのかわからない素材が使われている。
逆にいうと、そんなに複雑なものなのに、たったの1,000円で売られていることには、「割が合わない」とも感じる。(筆者も同じことを言っていた)
世の中は常に好奇心があり、研究があり、発見があり、努力があり、その結果僕達が今生きる世界の豊かさは形作られている。とんでもない数のそれらが、今の僕達の当たり前を作っている。

今目に見えているものの起源に迫ることで、とてつもない人類のロマンに思いを馳せることができるのだ。
そして、それは今目に見えているものの要素・素材を分解してみることで、たどり着けるものだ。

でも果たして、日頃からそんなことを考えている人はどれくらいいるだろうか?
たぶん、そんなにいない。て言うか、考えてる人の方がちょっと怖い。

だからこそ、たまに当たり前を疑うと、新しい景色が待っている。
本書はひとりの馬鹿げた挑戦の足跡を辿りながら、新しい景色を見る第一歩を踏み出させてくれる一冊である。


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