100日間生きたワニ 肯定派感想(ネタバレあり)
はじめに
はじめまして。るっきーと申します。
このたびタイトルの通り、同映画を良いものだとして、PRしたくてこの記事を書きます。私自身はただの一視聴者としてこの作品を「良いもの」だと感じ、
・見ていないのにネタにしている
・見たがただただつまらなかった
とするSNSのコメントを心苦しく感じ、書き出すことにした次第です。はじめからある程度のネタバレを盛り込みつつ書きますので、ネタバレなく本編を見たい方はこの先は御遠慮ください。
映画「100日間生きたワニ」という作品
簡潔に述べると「エンタメとしてはつまらないが、作品としての魅力はある」という感じです。
肯定派である自分も、一般につまらないところがあるのは認めざるを得ない部分があります。映画作品として
・派手な演出がない
・派手な音楽もない
・展開にメリハリがない
のは事実です。「つまらない映画」とするのに十分すぎる根拠たりえるでしょう。では「作品としての魅力」とは?まずはタイトルにあります。
100日間生きたワニ
何故タイトルを変えたのか?これは発表された時から誰もが疑問だったことかと思います。
私もです。
「いやー。ねぇわ。原作へのリスペクトがないわ」くらいに思っていました。ですがここに作品としての魅力が込められていました。
原作のタイトルは「100日後に死ぬワニ」
これは言わずもがな、100日後に死ぬとは夢にも思っていないワニくんの100日間を描いた作品です。なんてことない日常をただ100日間過ごし、その後に突如として死んでしまう。恋や人生に悩みつつも、少しマヌケで明るく生きるワニくんにいつしか見守っていたフォロワーも彼の「生」を望むようになり、しかしタイトルのとおりに100日後にワニくんは死んでしまいます。
映画のタイトルは「100日間生きたワニ」
原作と同じく、彼の死の前100日間を切り抜いたのがこの作品です。しかし、映画はワニくんが死ぬまでは前半部分にあたります。なんと後半からはワニくんの死から100日後のストーリーが始まります。
あらすじとしては、ワニくんの死から100日後、ネズミくん、モグラくん、イヌさん、先輩ワニさんたちはワニくんの死後なんとなく気まずくなり、疎遠になっていました。そんな中、一人の移住者「カエルくん」が街にやってきます。彼は場違いなほど底抜けに明るく、ワニくんの友達と知り合いになっていきますが、全く馴染めません。ある時、バイクの修理のため、ネズミくんのバイク屋にカエルくんがやってきます。しかし、バイクに悪いところはありません。ピカピカにメンテナンスされたバイクを前に、唐突に泣き出すカエルくん。彼も、事故で友達を亡くし、気持ちを切り替えるために移住してきたのです。友達のことを乗り越えられず、前に進めないと泣くカエルくん。ネズミくんは彼を自分と重ね、励ますためにツーリングに誘います。まだ落ち込むカエルくんに、ネズミくんはかつて自分がケガで苦しんでいた時にワニくんに励ましてもらったときのことを思い出し、カエルくんを元気づけます。この一件からネズミくんも前を向くことに決め、ワニくんの友達と連絡を取りあい、また一緒に遊ぶようになるところでこの作品は終わります。
そう、100日間生きたワニとは、「ワニくんが死んだ」ことと「ワニくんが生きた証」を描く作品なのです。ゆえにこの作品はエンタメではなく、「命を描く文学作品」と言えます。となると映画である必然性も、「作品に没入するため」であるのです。
冒頭に書いた「つまらない部分」も、原作のとおり何の変哲もない日常を描くと必然であり、映画だからとそこになんらかの派手さも付け加えなかったのは原作に対するリスペクトであり、この作品に欠かせない要素であるのです。
カエルくんの存在
彼についても触れておきたいと思います。
彼は登場直後、ワニくんの死を乗り切れず沈む友達にとって、かなりの「うざいキャラ」です。カエルくんが馴染めない一番の理由であるのですが、そのうざいキャラは彼自身の性格ではありながら、新しい街で新しい友達を作って、亡くなった友人の死を乗り越えようとするカエルくんの頑張りだったはずです。現に、どこも悪くないはずのバイクにカエルくんが乗れなかったのは、友人の死の原因がバイクだったからです。乗り越えようと頑張ったのに乗り越えられず、涙が抑えられなくなったカエルくんの姿を見て、彼をうざがっていたネズミくんは自分の今の姿と照らし合わせ、カエルくんを励まそうと行動を始めたのだと思います。ワニくんの死を乗り越え、前に進むためのファクターがカエルくんというキャラだったのです。
まとめ
感情のままに書いたので要点をまとめます。
・100日間生きたワニ は、「死」を乗り越え、残された友達が前を向き生きていくまでを描いた作品。
・ネズミくんはじめ、友達の中でのワニくんの存在の大きさを改めて感じる作品。
・不器用にガムシャラに友人の死を乗り越えようと頑張る姿に励まされ、前向きに生きる様を描いた作品。
こういった部分が、「100日間生きたワニ」の作品の魅力であると思います。これは作風的に、絵的に、どうしても原作にリスペクトを置くと映画館でもないと真正面から向き合うことは難しいことを思うと、映画であるのは割と正解だったのではと思います。家で見てたらこんなに集中して見なかったと思います。
1時間 1900円。安いか高いか。
映画体験としては高く感じるのも無理からぬことかと思いますが、私は見て後悔はしませんでした。映画として面白いか否かで問われれば若干悩みますが、良作か駄作かと問われれば、私は迷いなく「良作」と答えます。
長文乱文失礼しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。