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Lorettaの考察とつぶやき

2023年2月16日発売、同日実況開始🎮
主人公ロレッタが夫の浮気と借金を知り、恐るべき計画をプレイヤーが手助けするというサイコスリラーホラーである。プレイヤーの選択肢によってエンドが変わるマルチエンド方式で、脚本を書くようにゲームを作り出していく。
NewGameを始めるにあたって「光敏感性発作」についての警告がなされる。てんかん発作の症状がある方は留意されたい。

また、ゲームは「カラー」か「ノワール(モノクロ)」かを選択できるようになっている。これは前述の光敏感性発作について配慮した設定であるが、このロレッタの時代背景が1940年代であるため、没入感を想定してなされたものとも推察できる。お好きな雰囲気をチョイスして頂きたい。なお、我が推しらんぶる氏はカラーを選択した。

【なんでフランス語やねん?の謎】

初めて遊ぶ人向け→カラー
物語を最後まで遊んだ人向け(一度クリアした人向け)目に見えるヒントが消える場合がある。パズルを解くとき難しくなる→ノワールモード
何度かカラーで物語を巡回して尚、迫真のアメリカ映画よろしく真相に迫りたい場合にノワールモードに進むのが賢明である。ここで本作が「モノクロ」という表現をせず、「ノワール」とフランス語表記としたのは、所謂「暗黒小説」「フィルムノワール」という映画の一分野として表現したためと思われる。某ウィキによると、人間の悪意や差別、暴力などを描き出す分野で、闇社会を題材に取ったあるいは犯罪者の視点から書かれたものが多いのが特徴である。

【時代背景を知るとさらに物騒】

1947年といえば第二次世界大戦後、米国はマーシャルプランを実行し、欧州諸国の復興を支援していた。所謂「冷戦」に突入していく世界情勢だ。望まずとも戦争によって引き裂かれた家族はこのとき世界各地に溢れていた。我が国も皆さまご存知の通りである。
また、ロレッタのファッションのように、女性のスカートも膝丈になったのもこの頃から。終戦を迎え、女性の社会進出が進み、より動きやすく仕事がしやすい格好になった。ゲームの中盤ではロレッタが自動車を運転する場面があるが、当時は女性が運転することはとても珍しいことであった。

主人公ロレッタ•ルー•ハリス(38歳)もそうした世界情勢のさなかに生まれた。南部の小さな街に生まれ、16歳で出奔。失業中の鳥類学者でごく普通の専業主婦。夫の親の遺産である農場に数ヶ月前引っ越してきたばかり。物語はここから始まる。

【消えた夫の謎】

私立探偵フランク•チャンバースが夫の借金について話をする為訪ねて来た。家の中に入ると、時計、斧、毒など用途がわからないアイテムの選択が出来る。チャンバースと話していると、出版社から小説の原稿の催促の電話がかかってくる。ここで夫ウォルターは小説家であるとこがわかる。
話は逸れるが、「奥さん」のセリフが多くて耳が役得である。(?)

セクハラ親父チャンバースが井戸を調べようとする

2週間前、ロレッタは既に夫ウォルターを殺し、井戸に遺棄していたようだ。ここから、どうして夫を殺害するに至ったのかが語られる。

【ロレッタの時系列】

ではここでロレッタの人生を大まかに振り返ってみよう。
1929年 ウォルターとロレッタが出会う ウォルターの方が少し年上。
     新聞社の特派員であった。
1930年 ロレッタの母親が死亡 死因はわからない
1931年 ウォルターとロレッタ結婚
1933年 ロレッタ妊娠 子宮外妊娠により流産
1945年 再び妊娠(12年ぶり)医者から高齢出産と言われる。(現代医学では35歳以上)
1946年 第一子男児出産 命名ジョニーハリス

夫ウォルターのタマネギ好き赤毛ビッチことマーガレットと不倫&ギャンブルで生活が傾く。お金がなくなったロレッタは銀行に融資を頼む。その際、夫ウォルターに3万ドル(当時の日本円にしておよそ1億5千万円)もの生命保険金がかけられていることを知る。

ここで自らを「鳥類学者」と名乗っているが、全くの嘘でロレッタは勉強などしたこともない。ここから導き出される彼女の人格は、大嘘吐きで見栄っ張り。長年のウォルターからのストレスで鬱屈して更に捻じ曲がっており、倫理観に乏しい様が見て取れる。
余談だが、ビッチマーガレットの就いている「ウェイトレス」と言う職業は米国では最下層の、低賃金で誰にでも出来る職業とされている。店によるが、チップをもらわなければ生活できない。

おそらく銀行からの帰り道、ガス欠寸前のところでいつもは立ち寄らない奇妙なスタンドを訪れる。彼女はここで運がいいとこの店でガソリンを満タンに入れている。更に都合良く「毒物」の試供品をもらう。まるで彼女の殺意を見透かす様に。

家に帰ると、夫が小説を脱稿し、大手出版社との契約を控えている旨をロレッタに伝える。2人はお祝いにステーキを焼くのだが…

塩か胡椒か?よく分からないこのあたりの選択肢のもどかしさは、ロレッタの殺意の揺らぎを表現しているものと思われる。

ついに選択肢に「毒物」の文字が。

「毒物入ステーキ」を食べている2人の部屋の窓の外は嵐の様である。これから、ロレッタの予想だにしなかった事件が次々と降りかかってくる。サスペンスの幕開けに相応しい。夫殺しは単なる幕開けに過ぎなかった。

私たち、戻るの?→それはニューヨークに帰ると言う意味なのか?はたまた破綻している夫婦関係の修復という意味での「戻る」なのだろうか?皆さんはどっちに思いますか?次の選択肢の意図も加味すると意味合いが変わってくるかも。
今日、マーガレットとばったり会って…→宣戦布告にも、単なる雑談にも聞こえるが…女子の皆さんにはお分かりいただけるだろう。
ワインを飲む→無難な選択肢かも?

ト◯タ…?って思ったのは月本だけですかねw

遂にウォルターの様子がおかしくなり、次の場面では井戸に遺棄されている。

ここで少し前の彼らの息子ジョニーハリスの死因についてウォルターが言及しようとしている場面がある。

警察の報告書を読んだ、とある

後に判明するが、彼らの息子は風呂場で溺死している。痛ましい事故だが、報告書に何が書いてあったのか、ウォルターのこの含みのある言い方はロレッタが関わっていると思わせるには十分である。
ミステリーやサスペンス小説をお好みの方ならお気付きだろうが、「殺人はクセになる」と言うことである。語弊があるかもしれないが、ロレッタの場合は「1人過失で殺してしまっても2人目故意で殺すのも同じこと」である方が近いかもしれない。
ロレッタは故意か重過失かで奇跡的に生まれた最愛の息子を亡くしているのである。殺人者となるべくしてなる環境とはこうして本人の知らぬうちに整っているのかも知れない。

この後、ロレッタは夫殺しとそれを探る探偵を殺した罪を隠蔽しつつも、保険金を得るための原稿の捜索や、思いもよらない土地の境界や土壌の問題、ウォルターが関わっていた秘密組織への関与に巻き込まれていく。この辺りの展開はノワール映画っぽくてとてもドキドキハラハラした。
このゲーム、マルチエンディングではあるが、ロレッタが罪を免れてさっぱりハッピーになるエンドはないと月本は思う。冒頭に、彼女はもうこう言っている。

この物語は回想?あるいは…

陪審員とはアメリカの裁判において意見と裁量を決める立場のものである。過去を語る形式で始まるこのゲームの行き着く先は、ロレッタの裁判は免れないことを冒頭で示している。
そして、これは私の憶測の域を出ないが、

「それでもこれを読んでくれる人がいるなら」
この一文から、彼女はおそらく保険金の降りる条件であるウォルターの小説の後半を自ら書こうとしたのではないだろうか?
少なからずロレッタは「これを読んでくれる人」を想定して書いている。捏造しようとしたのか、あるいは彼女のこの数奇な半生を自戒と贖罪ををこめて書き記したのか、真相は分からない。

2023.11.3 

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