認知療法行動医療を学ぶ

認知療法と行動医療を合わせた効果的な心理療法

認知療法行動医療とは

行動医療…人間の「行動」に着目して、問題を解決していく療法
認知療法…人間の「認知」に着目して、問題を解決していく療法
認知療法行動医療…「行動」と「認知」の療法に働きかけるので、医療効果が非常に高い

デメリットとしては、医療意欲が低く、知的レベルが低い人には導入が難しい場合もある

①出来事

②思考(認知)
認知的療法視点

③感情
ダブルで効果が得られる為変化が現れやすい!

④行動
行動療法的視点

認知療法行動医療の起源

認知療法行動医療は、1980年代から正解的に広がった行動医療を軸とした心理療法である。
行動医療とは、人間の行動の原理、原則をもとに、その行動(問題行動)の変化を期待していく心理療法である。わかりやすく言うと、行動を変化させる事で思考パターンを変容させ、ネガティブな感情を変化させていくもので、不安階層表・リラクゼーション法など、クライエントの抱える問題に有効的なアプローチを数多く発展させてきた。
この有効的な手法に、認知的内容の変更を加えた認知行動療法は、認知と行動にはたらきかけて、感情・生理反応に効果をもたらす療法である。
現在多くのカウンセラーが利用しており、医療現場でもよく用いられている。

認知行動療法の基本モデル

会議で緊張が高まりうまく話せないことで悩むクライエントの場合
・環境要因
全社員が参加する会議で自分の意見を発言するよう求められた

・個人的要因
行動…何も言えなくなる
認知…だめなやつだと思われる
気分・感情…不安・焦り
身体反応…汗が出る、手が震える

認知行動療法とは?

状況・他者との関係で生じる外的要素(環境要因)と、クライエントの認知・行動・感情・身体作用という個人的な内面要素(個人的要因)の両面を見ながら、その相互作用を見ていく視点が非常に重要

認知行動療法の基本モデル

認知行動療法には、基本モデルがある。その基本モデルとは「認知」や「行動」に着目する前に、そのクライエントがどういう環境下いるのかを考え、その上そのクライエントの認知・行動・気分(感情)・身体的な反応を見ていくことを図解化したもの
この図解を用いて、クライエントの認知過程や環境状況を明確にしていく。クライエント自身に書き出してもらい、客観的に自己を理解してもらう事がある。
そして、自然発生的に生じてくる感情をコントロールする事は難しいけれど、「認知」と「行動」については、自分自身で選択する事ができるという心理教育を行っていく。
基本モデルは、認知行動療法を行っていく時に、クライエントを理解していく柱となるとても重要なもの。

Point

認知行動療法は、治療効果が高く、多くのカウンセラーが利用している心理療法。基本モデルをしっかり暗記し、実施できる力を身に着けていく。

認知行動療法の原則・スキル・客観的な視点

認知行動療法の土台

認知行動療法の原則
①基本モデル重視
②問題解決思考
③心理教育重視
基本原則は、認知行動療法を実施する時に常に意識しておかなければならないこと。しっかりと暗記し、実践に落とし込んでいく。

認知行動療法のスキルとは
①セッションの構造化
「構造化」とは、セッションで取り扱う材料を明確化にし、段階を順序立てていくこと。認知行動療法は、一つのセクションの構造化だけでなく、一人のクライエントのカウンセリング開始から終結までの流れも、構造化して捉えていく。

②心理教育
心理教育とは、認知行動療法やクライエントの抱える問題についてクライエントの理解を深めるために行う教育。

③認知再構成法
ネガティブな感情・気分を引き起こす認知を再構成する力(認知療法で学んだスキル)。

スキルは、認知行動療法を実施する前に、習得しておかなければならないもの。

認知行動療法の原則・スキル

認知行動療法を進めていく時、カウンセラーが常に頭に入れておかなければならない重要な原則は、①基本モデルに沿って、クライエントの体験を理解していく事②「今」の問題に焦点を当てる問題解決志向であること③心理教育を重視し、クライエントが自分自身で自分の問題を解決する力をつけること。
認知療法と似ており、カウンセラーとクライエントはチームを形成し、信頼関係を築きながら、実証的な見地から共同作業を行います。そしてカウンセラーに必要なスキルとは、①カウンセリングを進める過程を立てるセッションを構造化する力②心理教育を行う力③認知再構成法を実施する力である。スキルは、認知行動療法を実施する前に、習得して置かなければならないものである。

会議で緊張が高まり、うまく話せないことで悩むクライエントの場合

①状況
全社員が参加する会議で、自分の意見を発言するよう求められた。

②認知
だめなやつだと思われる。

③気分・感情
不安・焦り

④身体反応
手が震える・汗が出る

⑤行動
何も言えなくなる

⑥対処(コーピング)
「早く誰か助けてくれ」と願う
「いつか議題は変わる」と思い耐える
またこんな思いをしないようにカウンセラーの所にいく

⑦心の癒やし・救い
・奥さん
・カウンセラー
・読書
・休日の趣味(映画鑑賞)

クライエントの状況・認知・資源を書き出す

認知行動療法を用いるときに有効なのが、クライエントの問題となる思考が生じる状況を、客観的に把握できるようにすべて書き出す事である。書き出す内容は、クライエントの①状況②認知③気分・感情④身体反応⑤行動⑥対処(コーピング)⑦心の癒やし・救い。実際に書き出すことにより、クライエントが自分の体験と状況を総合的・客観的に理解するのにとても役立つ。クライエントが思考の悪循環に囚われすぎないように、クライエントの心の癒やし、救い(助けと感じられる存在・行動・物)と対処(コーピング)も書き出していくため、カウンセラーがクライエントをより深く理解するのにも役立つ。

Point

認知行動療法の原則・スキルは、常に頭に入れておかなければならない事である。書き出す作業は実践でよく使う手法なので、書き出してもらい内容は暗記してもらう。


行動療法と認知療法の合せ技

認知行動療法の特徴

【認知療法と同じもの】
・構造化されたカウンセリング運営
・心理教育重視
・カウンセリングの進め方
・問題解決志向の強さ
・ホームワーク重視
・認知技法を用いる事

【認知療法と違うもの】
・心理教育の内容
・行動技法の使用

認知行動療法でよく使う行動技法

・リラクゼーション法
・活動記録法
・不安階層法

認知行動療法で用いられる行動技法

認知行動療法の流れは認知療法と同じで、導入(気分のチェック・ホームワークの確認・前回の振り返りなど)→アジェンダの設定→各アジェンダの話し合い→まとめ(今回のまとめ・今回のフィードバック・ホームワークの設定など)という構造。
認知医療との違いは、心理教育の内容(認知だけではなく行動も変容可能なことなど)と、心理教育アプローチとして、認知療法で学んだ認知技法に加え行動技法を用いる事である。有名な行動療法としては、不安緊張状態を和らげるのに効果的なリラクゼーション法、自分の生活スタイルを客観視し、行動課題を導き出す活動記録を作成することもある。そして、クライエント不安を段階わけして、イメージによって引き起こされた不安を除去していく不安階層表の作成がある。

リラクゼーション表の概要

リラクゼーション法のメリット
①精神的エネルギーの補給
クライエントに問題へ向き合うパワーを与える
②不安感の軽減
クライエントの心理的苦痛を和らげる
③生理的活動の正常化
不眠を解消し、血圧を下げたり、頭痛を軽くする効果が得られる

呼吸法の準備
①目を閉じる→②肩の力を抜く→③呼吸法の説明→④実践

呼吸法の説明
①ストローを吸うように口を尖らせて5秒~10秒、下腹部を凹ませるように意識しながら細く長く息を吐く。
②下腹部を膨らます感じで、鼻からゆっくり息を吸い込む。
③2秒くらい息を止める。(この手順を3分程度続ける)

呼吸法の注意点
・無理はしない
・呼吸器関係疾患がある場合には、医師に相談してから実施

リラクゼーション法

リラクゼーション法としては、クライエントの不安や緊張を弱める事がきる手法の1つ。リラクゼーション法は①精神的エネルギーの補給②不快感の軽減③生理的活動の正常化の効果をクライエントに与える。
認知行動療法で活用するリラクゼーション法はいくつかあるが、中でもよく利用されるのが「呼吸法」である。場所を選ばず簡単に行うことができ、日常生活場面でも活用しやすいため、認知行動療法ではホームワークとして設定されることもある。
人間はストレスを感じたり緊張を感じると、呼吸が浅くなる。呼吸が浅くなると、新鮮な空気を十分取り入れる事ができないので息苦しさを感じる。このような身体反応と緊張を緩和させるのに、呼吸法は非常に有効だ。

Point

認知行動療法で用いる行動技法は、ホームワークとして設定されることも多い。認知療法で学んだことに加え、行動技法も使いこなせるようにする事。

認知行動療法の心理教育

認知行動療法の心理教育ポイント

心理教育を実施する時のカウンセラーの姿勢
①クライエントの理解度の確認
②クライエントに身近な題材を盛り込む
③威圧的にならないように
④わかりやすくはっきりと話す
⑤信頼関係を意識しながら

心理教育は、上手くいけばクライエントの治療意欲を高める効果もある。
心理教育を実施する時のカウンセラーの姿勢を頭に入れておく事。

心理教育場面でのカウンセラーの語りかけ
重要キーワード

  • 「認知」は、自然に任せる事もできるし、自分で考え出すこともできるもの

  • 「行動」も認知と同様、成行きに任せたり、自分で新たに考え変容させる事ができるもの

  • つまり、人間の認知・行動は、自然に出てきてしまうものだが、あなた自身で様々な選択できるものである

  • 認知行動療法とは、選択可能な「認知」と「行動」のパターンを少し変える事によって、クライエントの悪循環が改善され、結果的にネガティブな感情・気分・身体反応が緩和していく心理療法

Point

クライエントに理解してもらいやすいように、クライエントの理解度を探りながら実施すると、スムーズに誤解なく進める事ができる。

リラクゼーション法の導入

リラクゼーション法の導入過程

①心理教育の実施
緊張という生理現象の意味やデメリットを正確に伝え、モチベーションを上げ、目的を明確にする。

②現在の緊張のモニタリング
クライエントに自己観察してもらい、「現在どうなのか」を明確にしていく。

③リラクゼーション法の導入
呼吸法・筋弛緩法・背伸びなどのストレッチ

リラクゼーション法のいち付は「実験」的な取り組み
失敗する可能性があることはクライエントに伝えておくと良い

筋弛緩法とは、筋肉を弛緩させる事で、不安や緊張を和らげる手法である。
筋肉を緊張させ、次に一気に力を抜いて、その部分がリラックスした事を感じていく。
①手(利き手から)→②腕→③顔→④頸→⑤肩→⑥胸→⑦腹→⑧背→⑨脚→⑩全身 と徐々にリラクゼーションの幅を広げ、全身のリラクゼーションが終わったあとは、目を開けたまま静かにその姿勢で過ごす。

筋弛緩法を進める時のポイント
筋弛緩法は、練習が必要な技法である。セッション内で、筋弛緩法の練習を取りれ、焦らずクライエントのペースを見ながら進めていく。

リラクゼーション法をホームワークにする時のポイント

・セッション内で呼吸法を十分練習する
・緊張や不安を感じる場面で、リラクセーション法を実施してみるように促す
・実施した結果どうなったかを次回のセッションで報告してもらう

Point

リラクセーション法は、認知行動療法でよく使う技法の一つ。まずは導入過程を覚える事。そして、リラクセーションの効果は、導入部分でしっかりと伝える事。

活動記録表の作成

活動記録表の実施方法

活動記録表

段階的行動課題

1週間ほとんど仕事に追われている。就寝時間も遅いので、仕事の進めかた、取り組み方自体を変える必要がある。今のやり方では、体が持たないことがよくわかったので、仕事量・質を落とさずに、効率よく動く方法を「時短関連書斎を読んで学ぶ。=行動課題

活動記録表のメリット

  • クライエント自身がライフスタイルを客観的に把握する

  • カウンセラーのクライエント理解を深める

  • 取り組むべき行動課題を考える時の資料になる

クライエントに無理のない行動課題を一緒に考えながら、行動課題を次のホームワークとして設定していくことで、ライフスタイル改善の具体的な取り組みをスムーズに進められる。

Pint

認知行動療法は、行動技法をホームワークとして用意ることも多く、活動記録表はライフスタイルを改善したほうが良いクライエントによく用いる行動技法である。

認知行動療法の終わり方

①カウンセリングの間隔を空けていく
②終結に対する「不安」があればアジェンダで取り扱う
③終結後の心得を伝える
→認知行動療法カウンセリング終了

終結過程で実施すること

  • アジェンダの設定・ホームワークの設定などをクライエントに任せる

  • これまでのセッションの振り返り

  • 以前と今の違い・変化についての聴き取り

  • 自分の努力で問題解決ができたことを理解してもらう

  • カウンセリング終結後のセルフマネージメントの実行を強化

カウンセリング終了後のフォローアップについて

認知療法と同じく、カウンセリング終了後のクライエントの状態をチェックし、良い状態を維持したり、さらに良い状態にするための計画を立てる「予防」のカウンセリングを実施。通常約3ヶ月~12ヶ月というタイミングでお行う。
実際にはカウンセリングに来てもらうのではなく、手紙や電話でやりとりをしていくケースもある。

Point

認知行動療法の心得をしっかりと確認して、クライエントが自信を持って終結できるように関わっていく事。

よければサポートお願いいたします!